naokichiオムニバス

68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

床屋5~かゆいところはありませんかの不思議

床屋では身動きができない。
別に紐でくくりつけられている訳ではないが、すっぽりと布をかけられるので、手の自由がきかない。

笑いたくなるのも困るが、やってもらっている最中に、ほっぺたがかゆくなったりした時、掻けないのがまた困る。
これも誰でも何度かは経験していることだろう。

前々から不思議に思っているのだが、洗髪の際に、必ず「どこかかゆいところはありませんか」と聞きますよね。
あれだけ、頭のどこもかしこもくまなくまんべんなくゴシゴシとやってもらっていて、どこかがかゆいなどということがあるのだろうか。
本当に不思議でならない。
この店の人は、どのお客さんにもこれを聞いているのだろうが、100人のお客さんの内で、「うん、右の耳の上のあたり」とか答える人は何人くらいいるのか。知りたいものだ。

答えようのない質問、というのがあるが、私にとっては正にそれだ。
いつも「いえ、大丈夫です」と言ってごまかすが、内心、「その質問、しないでくんないかなあ」と思っている。

前に書いたPは洗髪が長くて丁寧なので好きなのだが、ここも必ずこの質問をする。
まず椅子に座った状態でシャンプーをかけまわされて、1回目のゴシゴシ。
前傾して流しに頭を突っ込み、お湯を流してもらう。
それからもう一度シャンプーをかけられて、2回目のゴシゴシ。
「かゆいところは」は、ここで毎回くる。
2回目のゴシゴシが始まると、ゴシゴシの気持ちよさを味わいつつも、一方で「そろそろ聞いてくるぞ」と身構える。
「聞かずに終わってくれればいいのにと半分思い、「でも聞かれるよな」と反面思う。
その時、小さくないこうした葛藤が私の頭の中にある。結構なストレスである。
そして、そこを見すましたように、「どこかかゆいところは」が今日も頭の上から降ってくるのである。
そして今日も「大丈夫です」と答えるのだ。

私は思う。こういう意味のないやりとりでなく、聞くなら、洗髪中を別にして、布をかぶせられて手が動かせない時に、時々、「どこかかゆいところはありませんか」と聞いてくれないものか。
タイミングよく聞いてくれれば、「左のほっぺた」とか「背中の左の方」とか言えるではないか。

この方がよっぽど客のニーズにこたえる話だと思うのだが・・・。