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68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

東京交響楽団 川崎定期演奏会第79回

2日(日)、ミューザ川崎で行われた東京交響楽団の演奏会を聴きに行った。

 

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●東京交響楽団 川崎定期演奏会第79回

日 時 2021年5月2日(日) 13:00開場 14:00開演

会 場 ミューザ川崎シンフォニーホール

指 揮 大植 英次

ヴァイオリン 木嶋 真優

管弦楽 東京交響楽団

曲 目 チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲ニ長調

    チャイコフスキー 交響曲第4番ヘ短調

 

この演奏会は、1月17日(日)に行われる予定だったが、演奏者に発熱者と新型コロナウイルス陽性者が出たということで、前日に中止された。

 

   東京交響楽団川崎定期演奏会中止
      https://naokichivla.hatenablog.com/entry/2021/01/16/172449

 

もともと、木嶋さんのヴァイオリンを聴いてみたいとの妻の希望で買い求めたチケットだった。大変残念だが、また別の機会があるだろうと話していたところ、楽団から手紙が届いた。5月2日に延期公演を開催すると書かれていた。チケットはそのまま有効とのことだった。

 

ここにきて、チケットを買ってあったいくつかの演奏会が中止になる中、この演奏会も再度の中止になるのではないかと案じていたが、神奈川県が緊急事態宣言の対象でないからだろう、そのような情報はないまま当日を迎えた。

 

ミューザ川崎には、2月にオーケストラ・モデルネ・東京の練習で2回来ているが、演奏会を聴くために来るのは5年ぶり、2016年4月のマウリツィオ・ポリーニのリサイタル以来だ。

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過去の出演アーティストのサインが飾られている中に、大植さんのサインもあった。

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我々の席は、2階LB5列26・27番。いい距離、いい角度でオケを見下ろせる大変良い席だった。下手側席ながら、見切れがなくオケ全体を見ることができた。

 

弦は12型。コントラバスはコンチェルトが4人、シンフォニーが5人だった。譜面台はプルトに1台。

椅子は管楽器も含めて間隔を少し空けている。弦楽器、打楽器奏者はマスク着用。

コロナとは関係ないが、男性の楽員はダークスーツに棒タイだった。ネクタイの色は自由らしく、ピッコロの方の赤いネクタイが目立って見えた。

 

ヴァイオリン・コンチェルト。

 

1楽章冒頭、ファーストヴァイオリンの弾き出しがとても柔らかな音で、引き込まれた。木嶋さんのソロの出だしは、しっとりとした音。先を急がない。以後もその基調で進められた。高音が凜としてとても清冽な音。さすがストラディヴァリと妻が感じ入っていた。

 

コンチェルトもシンフォニーも、大植さんは暗譜。

木嶋さんは指揮台の角に置いた白いハンカチを、演奏の合間に頻繁に手に取っていた。手汗が出るたちなのだろうか。

 

2楽章は聞きものだった。木嶋さんのソロとこの楽章の音楽はとても合っていた。

またこの楽章でのチャイコフスキー木管の使い方のすばらしさも感じた。

 

3楽章は鮮やかの一言。

 

全体にちょっと線の細さも感じたが、ヴァイオリン・コンチェルトの醍醐味を存分に味わうことができた。そういう演奏であり、曲もまたそういう曲だと思った。

 

シンフォニー。

 

1楽章主部の基本テンポは遅いが、その後、相当変化する。緩急の差は激しく聴いたことがないような溜めもあった。

2016年6月に、浦安オケでこのシンフォニーを演奏した。この楽章は合わせるのがとても難しく、半年の練習過程の最初の2ヶ月は、通常の倍くらい遅いテンポで、指揮者に「1、2、3」と拍を言ってもらいながら練習したのを思い出す。当然テンポの動きなどはなしだった。そんな練習から入ったアマチュアからすると、こんな演奏ができるプロオケってすごい、と言う他はない。

 

2楽章は速め。この楽章でも、チャイコフスキー木管の使い方のよさを改めて感じた。チャイコフスキーというと、金管が目立つイメージがあるが、実は木管もとても魅力的だと思う。

 

3楽章も速め。弦楽器奏者の弓は膝の上でなく床に置かれた。

 

3楽章の終わり、だんだん音が小さくなって行く中、打楽器やトロンボーンなどが4楽章の準備にかかるのが目に入った。2階席からだと特によく見える。アタッカ気味にやるのかなと思ったが、実際には4楽章の前には少し間が空いた。それであれば、3楽章が終わってから準備してもらう形の方が、気が散らなくてよかったと思った。

 

4楽章のテンポはとても速かった。しかし、その後に出てくるロシア民謡のメロディは遅く、この楽章でも緩急の差は大きかった。とても力強く重厚感のある演奏だった。

 

大植さんのこの曲の指揮は、これまでに聴いたことがないテンポの変化や表情づけがあり、大変聴きごたえがあった。

オケについては、1楽章の冒頭など、管セクションの音がばらけて聞こえる場面がいくつかあった。

 

はかばかしくない客入りだったが、盛大な拍手が続き、楽員がステージからはけた後、指揮者だけまたステージに登場した。

 

この演奏会だけでないが、楽章間の咳が必要以上に出ないこと、曲が終わってのブラボーがまったくなくなったことは、大変良いことだと思う。コロナの「効用」とは決して言いたくないが、終息後もこうあってほしいものだ。

 

開演前に特段のアナウンスがなかったので、勝手に席を立って退場したが、その後、規制退場をエリアごとに行うとのアナウンスが聞こえた。これは遅い。やるなら最初に言わないと。

 

以下は余談。

浦安オケは大植さんに一度だけ練習を振っていただいたことがある。

1998年6月14日(日)。もう23年前のことだ。

確か大植さんはミネソタ交響楽団で活動されていた時期だったと思うが、浦安オケの団員にツテがあり、帰国中の大植さんに練習をつけていただくことになった。まさに千載一遇の機会であった。

当時私は労働組合の仕事をしていて、3日前から京都に出張、この14日が帰京の日だった。午後からの練習には何としても出たいが家に帰って折り返す時間がない。妻に家から楽器を持ってきてもらうことにして、東京駅到着後、新浦安駅に移動して妻と落ち合い、出張荷物と楽器を交換して、そのまま美浜公民館に向かった。

当時練習していたのはベートーヴェンの7番。7月26日(日)の本番まであと1ヶ月半というところだった。2階の大集会室で大植さんをお迎えし、ベト7の指導を受けた。

練習後、1階のロビーで、大植さんと少し話しながら、持っていったCD何枚かにサインをいただいた。