naokichiオムニバス

68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

キュッヒル・クァルテットのハイドン・ツィクルス Ⅱ

24日(木)、岐阜への出張から帰京後、サントリーホールへ。

 

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●キュッヒル・クァルテットのハイドン・ツィクルス Ⅱ
日 時 2021年6月24日(木) 18:30開場 19:00開演
会 場 サントリーホール ブルーローズ
演 奏 キュッヒル・クァルテット
      ヴァイオリン ライナー・キュッヒル
      ヴァイオリン ダニエル・フロシャウアー
      ヴィオラ ハインリヒ・コル
      チェロ シュテファン・ガルトマイヤー
曲 目 ハイドン 弦楽四重奏曲第32番ハ長調
    ハイドン 弦楽四重奏曲第60番イ長調
    ハイドン 弦楽四重奏曲第79番ニ長調「ラルゴ」
    [アンコール] ハイドン 弦楽四重奏曲第57番ト長調 第2楽章
            ハイドン 弦楽四重奏曲第38番変ホ長調「冗談」
                 第4楽章、第2楽章、第3楽章、第1楽章

 

今年のチェンバーミュージック・ガーデンのパンフレットを眺め、さてどれに行こうかと思案した時、このハイドン・ツィクルスに目が止まった。キュッヒルさんの四重奏団だということもあったが、それ以上にハイドンだけで構成されるプログラムが魅力的だったからだ。

 

ハイドンの四重奏曲については不勉強で、一部の有名曲を除いてはよく知らない。副題のない30番だとか32番だとか言われても、どんな曲だかわからない。
3回のツィクルスの内、この日にしたのは、曲目で選んだわけではなかった。

 

大学時代、部室に集まったオケ仲間でハイドンの四重奏曲を何曲か遊びで合わせてみたことがある。何と何の曲をやったかは定かでないが、1つとして似た曲がなく、それぞれに違う個性や面白さがあることを感じさせられ、ハイドンってすごいなあ、とみんなで話したことは鮮明に覚えている。

 

そんなハイドンの面白みをまとめて味わえたら、という気持ちだったので、曲は何でもよかったと言える。

 

プログラム冊子から。

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私の席はC7列11番。先週同じ会場で聴いた、小菅優他の武満徹メシアンの時と同じCブロックだが、あの時よりは上手寄りの席だった。

 

並びは、下手側からファースト、セカンド、ヴィオラ、チェロ。チェロ以外は立奏だった。

私の席からだと、セカンドから右の3人はよく見えるのだが、キュッヒルさんが前に座っている人の頭に隠れてしまう。こちらが少し右に寄れば4人が見えるのだが、前のその人は聴きながら結構左右に動くので、困った。

 

最初の32番、「太陽四重奏曲」の1つだと言うので、ウルブリヒ四重奏団の音源で聴いたことがあるはずだが、まあほとんど覚えていない。

 

2楽章と3楽章の切れ目がわからず、ずいぶん速いメヌエットだなあ、と思って聴いていたのが実は4楽章で、全曲が終わってしまった。

 

4人の音量バランスとしては、キュッヒルさんが相当大きい。他の3人とは差がある。ハイドンだからファーストが目立つように最初は感じたが、そうではなく、バランスの作り方によるものだろうと思った。

 

ハイドンの四重奏はファースト偏重で他は伴奏、というイメージをもっていたが、こうしてよく聴いてみるとそうではない。チェロがすごく難しい動きをしているのに気づいたが、それはセカンドもヴィオラも同じで、結構四者がそれぞれ独自のことをやっていたりする。
これまでの先入観を改めさせられた。

 

大学オケでの僅かな経験で感じた、多彩さや意外性がある。ひとすじなわではいかないものがあるなと思った。

 

2番目のイ長調の曲も楽しかった。ただ、これも自分の先入観としては意外だが、ちょっと仲間と合わせて遊んでみたい、という気にはならない。大変そうな曲、という印象だ。

 

このキュッヒル・クァルテットのアンサンブルは柔らかい。肩を怒らせて精密なアンサンブルをするというのではなく、ゆるさを感じさせる。
ハイドンにはフィットしているように思った。

 

2曲終わって、20分間の休憩中に、事件が起こった。

 

トイレに行って戻って座っていた。私の左には男性が1人、さらにその並びに女性の2人連れが座っていたのだが、その3人と知り合いらしい男性(仮にA氏とする)が近づいてきて、1列後ろの席(本来A氏の席ではない)に座って、話しかけた。

 

それが、演奏への批判なのである。

 

A氏曰く、あんなのはハイドンじゃない、ファーストが目立ち過ぎだ、ファーストは音程も悪い、前はこうじゃなかった。
今、ロビーでも他のお客さんが、ひどいと怒って話していましたよ、とも。


A氏にどうですか、と振られ、私の隣の男性はちょっと困ったように「楽しんでますけど・・・」と答えていたが、女性2人は、バランスが悪い、合わせようとしていない、などと同調していた。

 

A氏はさらに、「この後の「ラルゴ」が同じようにひどかったら、もう来年は来ないことにする」、「3回のツィクルスの他のチケットを買わずに今日だけにしておいてよかった」とまで言い放った。

 

言われている内容には賛成できないわけではないものもあった。例えばバランスの点は、そういう見方もあるだろうと思った。

 

しかし、そう思わずにすばらしい演奏だと感激して聴いている人だっているはずだ。それなのに、周囲の人たちに聞こえるような大声で批判的な言説をまくしたてるのは、やはり演奏会場におけるルール違反だと思う。
レストランで、どのテーブルのお客さんも美味しいと思いながら食べているのに、あるテーブルの客が、こんなのは食えたものじゃない、シェフを呼べ、と言ったら、店全体の空気が壊れる。それに類した行為だと思った。

 

A氏は言うだけのことを言って自席に戻って行ったが、ひどく気分が悪かった。

 

言うなら自分たちだけの場で言いなさい、もしくは演奏者を楽屋に訪ねて直接言いなさい(言えるものなら、だが)、と言いたかった。

 

自分には聴く耳があるのだと言いたいのかもしれないが、自分の発言が、どれだけ周囲に害を与え迷惑な行為か。それがわからなければ、こういう演奏会に来て音楽を聴く資格はない、と思った。

 

この手合いは、アマチュアの演奏活動などは認めないクチだろうな。

 

とにかく、休憩後の後半に向けて大いに感興をそがれる事件、事故だった。

 

その後半の79番。

 

2楽章のラルゴがとてもよかった。曲も演奏もすばらしかった。ただ、休憩中の件が気分的にひっかかっていて、集中しきれなかったのが残念。

この楽章ではヴィオラが特によかった。

 

コルという人のヴィオラは、すべての曲にわたって、一歩下がった立ち位置で味わいを添えていくという感じだった。前橋汀子弦楽カルテットの川本嘉子さんなどは、もっと主張の強いヴィオラだが、それとは相当違う。

 

3曲が終わってのアンコールは、5曲も弾かれた。聞きおぼえのある曲もあったが、何番の○楽章、と区別はつかない。曲名は、帰宅後にサントリーホールのサイトで確認した。
(最近の演奏会は密を避けるためか、アンコールボードが出ないことが多い)

 

最初は57番の2楽章。ステージに戻ってきて始めようというところで、キュッヒルさんがセカンドの楽譜をのぞいて、それじゃないよ、という感じでめくった。場内から笑い声。本当に間違っていたのか、小芝居なのかは不明。

 

以後、1回カーテンコールで出てきてはけ、また出てきたら演奏する、の繰り返しになった。

 

3曲、4曲と続くので、これだったら四重奏曲4曲分の演奏会だ、と思ったら、結果的には本当に26日(土)にも演奏される38番「冗談」を楽章順でなく全曲弾いた形だった。

 

終演して、またA氏が来て何か言い始めたら嫌だなと思ったが、規制退場の最初はCブロックからだったので、早々に退散した。

 

ハイドンの四重奏曲をまとめて聴く貴重な機会でとてもよかった。

 

前週に聴いた、武満徹メシアンを思い出して、同じ室内楽でも幅が広いとつくづく思った。

 

ハイドンの四重奏曲の全曲盤は持っているので、いずれ時間がとれる時に、じっくり探索したい。

 

サントリーホールTwitter公式アカウントから写真を拝借しました。

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※26日(土)の公演の短時間映像を見つけたので貼っておきます。

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