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68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

まさかこういう展開になるとは~七月場所13日目

白鵬照ノ富士が12戦全勝で併走。続くのは玉鷲琴ノ若だが既に3敗。事実上優勝争いは2人に絞られた。

 

まさかこういう展開になるとは思わなかった。

その意外さは、ひとえに白鵬が星を落とさずにきたところにある。

 

初日、照ノ富士が2場所連続優勝を受けて、先場所苦杯を喫した遠藤を問題なく退けた一方、6場所連続休場明けの白鵬が明生相手にぎりぎりの相撲で勝ったのを見て、NHK解説の北の富士舞の海両氏も、白鵬の前途に悲観的なコメントをしていた。

私も同感だった。

 

いつ負けてもおかしくない、と思った。1つ負けたら、2連敗、3連敗しそうに見えた。

 

長期休場明け、膝の手術。コロナ禍で充分な稽古ができなかったと思われる中、再起を賭けたこの場所で、相撲勘が戻る前に星をいくつか落とせば、状況的には即引退だ。

 

4日目の隆の勝戦の辛勝あたりが懸念のピークだった。もう限界が近い、と思ったが、その翌日に好調の逸ノ城を問題なく下したところが分岐点となっただろうか。

 

以後、いつ負けても、連敗し始めてもおかしくない、という感じは残っているものの、また、両雄併走と言われても、一貫して照ノ富士の方が相撲内容が良く、強いのは疑いがないものの、とにもかくにも12日目まで全勝で来たことに大きな驚きがある。

 

「休場明けの白鵬」が、いつもそうだったことは百も承知だが、今度の場所までもが同じになるとは。

 

12日目の御嶽海戦も、あっさり右四つに組み止めた。右を差し合い、左は互いにまわしに届かない。白鵬から見て左前みつはそう遠くはなく、何故ぱっと取りにいかないんだろう、と思って観ていたが、じっくり構える余裕ということだったようだ。次の少しの動きでその左を取った素早さにはうなった。あとは一気の寄り。

 

ここまで観ても、白鵬が、残る髙安、正代を一蹴できるとは、私にはなお思えない。

今場所の強さは照ノ富士の方が圧倒的に上だと思う。危ない相撲はこれまで皆無に近い。

照ノ富士の残る対戦相手も同じ2人である。盤石に見える照ノ富士が、場合によって1つくらい星を落とす可能性もなくはない、とも思う。

しかし、先に黒星を喫するとすれば白鵬だろう。

 

もしかして、歴史上きわめて稀な、千秋楽の全勝対決がこのまま実現するのだろうか。

全勝対決となれば盛り上がるだろうし、現在の評価のまま照ノ富士が勝てば3連覇で文句なしの横綱昇進、白鵬が復活優勝を遂げれば、照ノ富士の「序二段→大関」の奇跡の復活にも匹敵するドラマとなる。

 

ただ、白鵬が「ギリギリのところで相撲を取っている」と漏らしたとされるように、仮にこのまま優勝、あるいはそれに準ずる成績を収めたとしても、来場所以降これが続くかどうかは大いに疑問だ。

東京中日スポーツの「北の富士コラム」に、北の富士さんが「これから毎場所同じことになる」と書かれているが、それはどうだろうか、と疑問に思う。

 

ここまでの白鵬を観ながら、私が思い出すのは平成14年(2002年)九月場所の横綱貴乃花である。

この場所、7場所連続休場から復帰した貴乃花は、序盤に早々と2敗しながらその後持ち直し、横綱武蔵丸との千秋楽相星決戦まで持ち込んだ。

   その場所の星取表

      https://sports.yahoo.co.jp/sumo/torikumi/hoshitori/?bashoId=200209

 

敗れはしたものの、よくぞここまで、と思わせた貴乃花だったが、翌十一月場所は全休し、年明けの一月場所で途中休場、再出場の末に、刀折れ矢尽きた格好での引退となった。

 

私には、あの場所の両横綱よりも良い星での全勝併走でありながらも、白鵬とあの時の貴乃花が重なって見えるのだ。

(全勝併走と2敗併走の差は、今場所、貴景勝、朝乃山の両大関の休場が大きい)

 

さて、あと3日。どういう決着になるだろうか。

 

尚、照ノ富士が昨年のこの場所で、再入幕で幕尻優勝した時、まさか1年後に横綱昇進がかかるところまで行くとはとても予想できなかった。

今場所の照ノ富士の相撲は復帰後のどの場所にも増して完璧であり、横綱昇進に異論があろうはずはないが、膝の爆弾もあるので、いつまで務められるかはわからない。

角界全体のことからすると、全勝併走の盛り上がりの裏に、実は、「その次を担う力士が見えない」という問題が隠れていると私には思える。

憂慮すべきはそこだろう。