15日制、史上6回目の千秋楽全勝相星決戦が実現した。
めったに見られぬこの数字。9年ぶりになる。
今場所の両者の相撲内容からすると、白鵬がいかに尻上がりに調子を上げてきたとは言え、照ノ富士の方が上回る。
まともな相撲で渡り合えば照ノ富士。
普通に取れば照ノ富士。
そのように予想した。
ただ、前日の白鵬の時間いっぱいからの徳俵での仕切りをどう考えるか。さして強敵とも思えぬ正代相手にあのような奇策を採った白鵬が、今場所最大の強敵にまた何かやるのではないか。その点だけが読めなかった。
結果は白鵬45回目の優勝。
この一番、やはり白鵬としては、「できることは何でもやらないと勝てない」と考えていたのだろう。「できることは何をやってでも勝ちたい」と。
とにかく、まともな相撲、白鵬としても現時点で出せるものを全部出し切った相撲をとってくれたことは良かった。立ち会いのあのあまりにえげつないかちあげは別だが。
勝敗を分けたのはただ1点。白鵬が常に相手よりも先手先手で動ききったところにある。どこか少しでも止まる場面があれば、照ノ富士に形を立て直すスキを与えただろう。照ノ富士の今場所は、彼の土俵人生の中でも最高の内容で14日間を貫いてきたが、最後のこの相撲に関してだけは、白鵬がそれを僅かに上回った。
私はこの一番については、白鵬が勝ってはいけない、白鵬に勝たせてはいけない、と考えていたが、この勝ち方を見て、納得するものはあった。
(繰り返すが、あのかちあげは別だ)
序盤からの相撲を思えば、白鵬がこれだけ動ける相撲を取れるところまで持ち直したことは驚きだ。ただ、この15日間でどれだけ膝に無理がたまっているのかは心配である。
「復活優勝」、「完全復活」と言っていいかどうかは、次の場所を見る必要がある。
古い怪我を抱える照ノ富士にも、白鵬同様に、まずは来場所以降も今場所のような相撲を取り続けられることを祈りたい。