1971年(昭和46年)、高校1年生の秋に、思い立ってクラシック音楽を聴くようになって、今年で丸50年、半世紀経った。
物心ついた頃から、母が聴いていたラジオの影響で歌謡曲少年となり、中学時代はこれにフォークソングが加わる。
クラシック音楽との関わりとしては、5歳から習い始めたピアノがあった。モーツァルトのソナタやシューベルトの即興曲など、多くのピアノ曲を練習した。
ただ、中学3年生まで続けたこのピアノのレッスン時代、自分自身の中には、今弾いている曲がクラシック音楽であるという意識がまったくなく、ハノンやツェルニーの練習曲同様、ピアノが上手になるための教材でしかなかった。
ピアノを習うのをやめて高校に入学した秋に、どうしたきっかけだったか思い出せないが、よし、自分はこれからクラシック音楽を聴いていこう、と決心したのだった。
(似た経験としては、1976年、大学3年生のこれも秋に、ビートルズの音楽をちゃんと聴こうと思い、「サージェント・ペパーズ」を皮切りにアルバムを集め始めたことが挙げられる)
こづかいの中からクラシックのレコードを買って聴くことから始めた。
両親はクラシックにはまったく疎かったので、音楽教師をしていた母方の伯母に相談したりした。
当時、木更津駅西口の近くにサザナミ電気(電機だったか?)という店があり、ここがレコードも取り扱っていた。ここに取り寄せを依頼して買ったのが、フルトヴェングラーの「運命」と「第九」の2枚組だった。たぶんこれが、自分で意識的に買い求めた初めてのクラシックのレコードだったと思う。4,000円した。50年前の4,000円だから今だと1万円くらいに相当?
以後、今日にまで続くレコードコレクター人生に至る。
情報収集もせねば、と「レコード芸術」を買うようになったのが、1972年1月号から。もちろん今日まで買い続けている。
(バックナンバーも揃えたいと思い、「読者のページ」を通じて、ある方から1968年~1971年の分を譲り受けた。実家に置いてある)
手持ちのレコードはそうそうすぐには増えない。市原に住む8歳上の従兄が何枚かのレコードを貸してくれた。フルトヴェングラーの「エロイカ」やワルターの「田園」などベートーヴェンの9曲が揃えられていたのを覚えている。
(余談になるがこの時点で既に社会人だった従兄は、小田(和正)さんと東北大学の同級生で、親しい友人関係にあった。1971年というと前年にジ・オフ・コースは「群衆の中で」でデビューしている。私がオフコースを知るのも、従兄と小田さんの友人関係を知るのも後年のことである)
少しずつ増えていくレコードを聴き、ベートーヴェンやショパンなどを改めて自分でも弾いてみたりしながら、クラシックに親しんでいった。
大学受験に合格した時には、合格祝いとして、両親からはベーム=ウィーン・フィルのベートーヴェン交響曲全集、母方の叔父からはカラヤン=ベルリン・フィルのモーツァルト6大交響曲集という、箱入りの組物を買ってもらったものだった。
この流れなくして、大学で管弦楽団に入部し、ヴィオラを弾くようにはならなかっただろう。
高校でクラシックファンになっていたからこそ、クラシックのオーケストラをサークルとして選んだのだった。
大学時代は、クラシック音楽に様々な蓄積ができた4年間だった。
家庭教師などのアルバイト代でレコード集めが格段に加速したし、オケ仲間との間でのレコード鑑賞、音楽談義も濃密だった。あれほど毎日のように時間を忘れて音楽の話ができたことは、卒業後はもちろんない。
大学オケでの演奏ももちろん大きい。スコアを見てレコードを聴くだけだった自分が、実際のそれらの音楽を演奏できるのだから、経験としては格段の違い、異次元のことだった。
卒業し就職した後は、配属先が東京だったので、レコード購入では石丸電気や山野楽器などの大型店の恩恵を受けることができ、それ以上に演奏会に通う面での環境に恵まれた。色々な演奏会を聴きに行けるようになったのは、学生時代との大きな変化だった。
一方、卒業後、ヴィオラを弾くことについては遠ざかった。
そのまま、鑑賞中心の音楽生活が続いたが、40歳を前に、今の所属団体である浦安シティオーケストラとのご縁ができて、演奏活動に復帰、以後今日までの四半世紀は、オケでの演奏が音楽生活の大きな柱となった。
演奏も鑑賞もアマチュアでしかないが、こうして半世紀を振り返ると、人生の過ごし方としては、自分なりに豊饒なものがあったと思う。
さて、あと何年くらいクラシック音楽と暮らしていけるだろうか。
10年、20年。
聴く方はともかく、弾く方を何歳まで続けられるのか。まだまだ引退は考えたくない。
ともかく、クラシック以外も含めて、生まれてきたこの人生に音楽という宝物があったことを、神に感謝したい。
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