naokichiオムニバス

68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

坂本冬美コンサート2023

4月28日(金)、国立への寄り道を終えて、八王子へ移動、坂本冬美のコンサートを聴いた。

 

J:COMホール八王子は、八王子駅南口に出たすぐのところにあるビルの4階。

 

エレベーターで4階に上がる。

 

坂本冬美の公演は、2021年3月に、明治座で一度接している。この時は、第1部が橋田壽賀子作、石井ふく子演出のお芝居、第2部が歌謡ショーだった。

全9曲を聴いたが、初めて生で聴く坂本冬美の歌に大変感動し、次はフルのコンサートを聴いてみたいものだと妻と話していた。

ただ、コロナ禍にあって、彼女のコンサートは延期や中止が続いているようで、なかなか機会がなかった。

今年に入ってから、毎週家に来る生協の商品案内の中にこのコンサートのチケットが載っているのを妻が見つけ、申し込んだらめでたく入手できた。千葉から行くには八王子は少々遠いが、次のチャンスがいつ来るかわからないので、平日午後の公演ながら、午後半休を取る形にした。

 

我々の席は1階22列30・31番。

 

座っていると、前方の席には、お揃いの水色のTシャツを来た人たちがいる。ファンクラブの会員だろうか。

 

15:00、定刻に本ベルが鳴ると、客席から拍手がわき、やがて手拍子に変わった。ファンにはお約束のことなのだろう。

曲によっては、ペンライトが振られた。

 

セットリスト。15曲が歌われた。

 

   祝い酒
      (MC)
   再会酒場
   俺でいいのか
   桜の如く
      (メンバー紹介)
   また君に恋してる
      (MC)
   真赤な太陽
   かもめの街
   火の国の女
      (MC) ※司会者 名古屋冗
   岸壁の母
   あばれ太鼓
      (MC)
   男の火祭り
      (MC) ※坂本冬美、名古屋冗
   酔中花
   ブッダのように私は死んだ
   夜桜お七
      (MC)
   風に立つ

 

緞帳が上がる。生バンドの演奏である。

1曲目は「祝い酒」。

 

歌い終わってMC。

2023年、大阪で舞台をやってきたが、コンサートはこの八王子が初めて。

コンサートを行うのはコロナ後初めてで、3年ぶりになるとのこと。

衣装も一新。このステージセット、演出でこれから全国をまわるそうだ。

 

続いて、5月10日(水)発売の新曲、「再会酒場」が披露され、「俺でいいのか」、「桜の如く」と3曲続けて歌われた。

 

ここで上手へはけて、しばらくバンドのインスト演奏。

舞台袖から坂本冬美の声で、バンドのメンバー紹介。

下手側に、ピアノ、ドラムス、ギター2人、ベース。上手側に、サックス、トランペット2人、ヴァイオリン、キーボード2人。11人編成で、サックスがバンマスだった。

名前を呼び上げられたメンバーが、それぞれしばらくソロをとった。

 

続いて、振り袖から赤いドレスに着替えて登場し、「また君に恋してる」。

56歳になりました、というMCをはさんで、美空ひばりの「真赤な太陽」、ちあきなおみの「かもめの街」。

「また君に・・・」に始まる、カバーソングはアルバムも多数出ており、コンサートでも1つのコーナーが設けられているようだ。

 

赤基調の照明、火を噴く山の映像をバックにして「火の国の女」。聴きごたえがあった。

 

ここで上手にはけ、名古屋冗という男性が下手から出てきて、MC。専属司会者らしい。

メンバーの一部とからんだトークの後、「岸壁の母」。

引き揚げ列車などの終戦直後の映像。その後、海を望む形の画像がバックに出た。

この「岸壁の母」はまさに圧巻という他はない。圧倒された。

歌の前のレシタティーヴォのような部分も、つかみきった歌唱だった。

昨年、歌謡浪曲だけを集めたアルバムが発表されたが、コンサートにおいても、カバー曲同様、このジャンルが一つの構成要素になっているのかもしれない。

(「あれから十年」「悲願十年」という言葉が出てくる。つまり、昭和30年を指すのだろうが、私が生まれた年だ。その頃は、まだこういう状況が残っていたんだなあ、と改めて思った)

 

下手に和太鼓が置かれ、「あばれ太鼓」。

MCで、この和太鼓の奏者とは、もう26、7年一緒にやっているという話が出た(バンマスの人とは31、2年、名古屋氏とは33、4年)。

もう1曲、和太鼓との共演で「男の火祭り」。

この曲では、中に出てくる「あっぱれあっぱれ」に合わせて、「そーれ」と声を出しながら腕を突き出すアクションを客席にレクチャー。これは明治座の時にもあった。

(今回の公演は、マスク着用を前提に声出し解禁だった。客席から随時声が飛んでいた)

 

名古屋氏とのトークでは、とにかく我慢の3年だったとの話が出た。コンサートは数えるほどしかできず、できても客入りを制限したので、ステージから客席を見上げるのが怖かった、と。

バンドのメンバーも仕事が減る中、練習、勉強に励んでいたそうだ。

3年ぶりに元通りのコンサートができるようになったことを、坂本冬美だけでなく、全員が本当に喜んでいる様子だった。

 

次に歌われた「水中花」では、むせび泣くようなヴァイオリンがとてもよかった。

道ならぬ恋を歌うこの曲を聴きながら、もしかしてあの曲につながるのではないか、と思ったら当たった。「ブッダのように私は死んだ」。

この曲は、おそらくコンサートでのメインを占める定番曲になっていくだろう。

 

さらに続けて「夜桜お七」。この曲はアンコールにとっておくのかと思ったが、アンコールはなく、いつも必ず最後に歌うという「風に立つ」で締めくくられた。

これがお約束のようだ。

 

16:51終演。

 

明治座での感動から、フルコンサートを、と今回八王子まで足を運んだが、あの時を上回る感動をおぼえた。

歌の力感の充分なこと。線の細さはもちろんなく、と言って過ぎたところもなく、何より常に品を失わないところに、この人の歌の良さがある。

歌のうまさの点では、パンチが効いていることも含め、天童よしみが今一番かと思うが、好みの部分で言えば、断然坂本冬美だ。

また、数いる女性演歌歌手の中で、この人の声は一番好きだ。

ステージマナーがまた最上。MCも上手だし、客席を笑わせるすべも知っている。

それやこれや、とにかく完成度が高いのだ。かつて、SPEEDのライブに通っていた頃、彼女たちの歌や踊りのパフォーマンスの完成度に感じ入ったことを思い出す。

 

日頃、坂本冬美の歌を聴くのは、紅白歌合戦くらいだが、こうして2時間近いステージにふれると、1曲歌うだけの紅白は、その歌手の一部を切り取っているだけだ、と痛感する。

 

クラシック、それ以外、あれこれの演奏会を聴きに行くが、純粋に「感動した」と感じることはそう多くない。

小田(和正)さんあたりだと、もう長年聴き尽くしてきているので、いつも満足して帰るが、感動とはちょっと違う。

クラシックだと、大小の雑念が邪魔をすることがある。

今回のように、うまいなあ、すごいなあ、とだけ感じっぱなしで最初から最後まで過ごせる演奏会。純粋に感動した、という実感が得られる演奏会。

ほんとにめったにない。

 

またいずれ遠くない内に聴きに行ければと思う。