2日(金)、ミューザ川崎で行われた新日本フィルハーモニー交響楽団の演奏会を聴きに行った。
この演奏会は、井上道義氏が指揮する予定だったが、直前になって病気療養のための降板が発表された。
私は旧Twitterで見て知った。
今年いっぱいで引退する井上氏の指揮をいくつか聴いておきたいと思い、昨年11月にマーラーの2番(読売日本交響楽団)、今年3月にマーラーの3番(新日本フィル)を聴いた。
さらに、同じ3月には、千葉県少年少女オーケストラの定期演奏会とそれに先立つ公開リハーサルも聴いている。
そして、この8月のマーラーの7番の情報を得てチケットを買い求めた。11月には、東京フィルハーモニー交響楽団がアンドレア・バッティストーニの指揮で、同じマーラーの7番を演奏するが、ここは曲よりも指揮者にポイントがあった。
ところが、この降板。誠に残念な思いだったが、払い戻しはないとのことだし、代演の指揮がジョナサン・ノット。ノットの演奏は東京交響楽団ではまだ聴いたことがないので、それはそれで楽しみに出かけた。
入場口の表示は井上氏のまま。
プログラム冊子から。
「道義Forever~ラスト・サマーミューザ~」のサブタイトルがついている。
井上氏のメッセージによると、このマーラーの7番は特別な作品のようだ。当初は、今年12月30日(月)の最後の演奏会でとりあげるつもりだったとのこと。
(最後の演奏会の曲目は、メンデルスゾーン「フィンガルの洞窟」、ベートーヴェン「田園」、シベリウス7番、ショスタコーヴィチ「祝典序曲」。この演奏会のチケットも何とか買うことができた)
指揮者交代についての書面がはさみこまれている。
ノット氏と新日本フィルは初顔合わせとのこと。東京交響楽団の音楽監督なのだから当然だろうが、しかしよく空いていたものだ。
●フェスタサマーミューザKAWASAKI21024 新日本フィルハーモニー交響楽団
日 時 2024年8月2日(金) 14:00開場 15:00開演
会 場 ミューザ川崎シンフォニーホール
指 揮 ジョナサン・ノット
私の席は、3階3C2列13番。いい席だった。
予定されていた井上氏のプレトークに代えて、プレコンサートが行われた。
ステージ上に、コンサートマスターの崔文洙氏を初めとする弦楽器奏者4人が登場して、モーツァルトのK421の四重奏曲の、1楽章、3楽章、4楽章を演奏した。ヴァイオリン、ヴィオラは立奏。
弦は16・14・12・9・8。対向配置だった。
ところでマーラーの7番という曲。マーラーのシンフォニーの中では、日頃聴く頻度はそう高くない。やはり曲よりは井上氏でチョイスした演奏会だ。
実演で聴いたのは、過去たぶん1回だけ。時期は昭和の終わりか平成の初めだっただろうか。小澤征爾指揮新日本フィルだった。5楽章の最後の音響に圧倒され、もっと生の演奏会、また小澤さんの指揮に出かけるべきだと思ったのをおぼえている。当時はあまり演奏会を聴きに行っていなかったのだったか。
音源でもここ最近は聴いていなかったので、久しぶりの7番だった。
1楽章。この曲にしては、柔らかくそして温かい響き。ノット氏の音づくりなのだろうか。
2楽章。木管がさえずり合う場面では、オーケストラ・モデルネ・東京で弾いて以来、このところしばしば聴いている9番、その1楽章を思い起こした。
3楽章。大変マーラーらしいスケルツォだ。9番の2楽章よりも苦味がある。ヴィオラのソロが大変すばらしかった。
4楽章。甘い音楽だ。この楽章には、3番の4楽章を思い出した。ギターとマンドリンがよく聞こえたが、マイクで補強をしていただろうか。
5楽章。熱い音楽であり熱い演奏だった。こういう明るい感じのフィナーレは、マーラーの場合、他には5番くらいだろうか。マーチのイメージがあるが、3拍子基調の部分が多いように感じた。しかし、この楽章はちょっと狂ってるな。そう思った。
マーラーだから難しいんだろうが、とりわけこの終楽章は難しそうに見えた。
盛大なフライングブラボー。まあこういう終わり方の曲だから、想定はしていたが、それにしても早かった。最後の短い和音とほぼ同時だった。
フライングブラボーについては、日頃苦々しく思っているが、少なくともあの人たちは、音楽を聴いていないね。終わって叫べるのを待ってるだけ。
少なくとも、拍を数えていたら、あのタイミングで声は出そうとしても出せないだろう。最後の和音の拍裏より早かったもの。
カーテンコールは撮影可とのアナウンスが開演前にあったので、切ってあったスマートフォンの電源を入れた。
代演だったこともあるのだろう、オケが立たずに指揮者に拍手を送る場面が多かった。
団員がステージからはけた後も拍手がやまず、コンマスの崔氏がノット氏を連れて出てきた。
抱擁。
井上氏の降板は残念だったが、充実した音楽が聴けた。
何しろあと5ヶ月足らずで引退ということなので、今回の分をいずれまたどこかで、というわけにはいかない。
療養専念は1ヶ月程度とのことだが、それ以後、年末までのスケジュールを無事にこなして下さることを願う。
大きいのは、「ボエーム」の全国ツアーだろう。規模も大きいし負担も大きいと思う。この「ボエーム」、どれかに行きたいと思ったのだが、地方公演はどれも都合がつかず、ミューザ川崎での公演も既に完売。
私が行けるのは、年末、最後の演奏会だけになる。