25日(金)、東京文化会館で行われた東京二期会オペラ劇場の「影のない女」を観に行った。
リヒャルト・シュトラウスのオペラは機会があれば観るように心がけているが、今回の「影のない女」は、上演されることがめったにない演目でもあり、迷わずチケットを買い求めた。
私にとって「影のない女」は、まったく知らないオペラである。LPレコード時代、レコードは持っていなかった。
CDは、シュトラウスのオペラのボックスセットでショルティの盤を持っているが、これまで聴いたことがない。今回の公演の数日前、外出時にウォークマンを使って聴いた。どんな感じの音楽かを把握しただけのにわか勉強である。
日 時 2024年10月25日(金) 13:00開場 14:00開演
会 場 東京文化会館大ホール
演 出 ペーター・コンヴィチュニー
指 揮 アレホ・ペレス
私の席は4階L2列35番。平日の午後公演で空席が多かったので、休憩時に3階センター席の後ろの方、周囲に人がいない席に移動した。
ボン歌劇場の共同制作で、ペーター・コンヴィチュニー演出によるワールド・プレミエと表示されている。
前日、24日(木)がその初演で、カーテンコール時には激しいブーイングが起きたと聞いていた。
コンヴィチュニーの演出については、ネットで情報を得ていたが、要するにかなり大胆なもので、舞台設定の読み替えもあれば、音楽自体の入れ替えやカットも行われていると知った。
演出意図として、皇后が子供を産めないこと(=影がない)が問題にされるこのオペラは、現代の価値観からするとそのままの上演は受けいられないものであり、今の聴衆にどう聴いてもらえるかを考えた、ということらしい。
オペラのストーリーすらろくに知らず、音だけ1回聴いた程度の「影のない女」初心者には、誠に不向きな公演のようだ、と知ったのが前日のこと(笑)。
まあともかく虚心坦懐に観よう、と出かけ、プログラム冊子の解説を開演前に流し読みしたが、そんなにわか勉強も焼け石に水。
結論から言うと、これまで、好きなオペラ、未知のオペラ、数々実演で観てきたが、今回の「影のない女」ほど難解な公演はなかった。
冒頭から、よくわからないなー、と思いながら観た。
このオペラに限らないが、翻案ものの演出というのは、オーソドックスな舞台を先に知った上で観るべきものだと思う。でないと、演出意図や面白さなどがわからない。
加えて、観ているこちらは、どれが誰だとか、どういう話が進んでいるかなど、頭に入っていないで追いかけているので、理解できるわけもない。
2回くらい、日本語の芝居が出てくるのだが、オリジナルではどうなっているのか、この演出だから挿入されたものなのか、それもわからない。うーむ。
でも、耳に聞こえてくる音楽だけを純粋に受け止めていると、これを実践している歌手、そしてオケは大変だろうなあ、とも思った。シュトラウスだけにすごく難しそうだ。
あたふたしている内に、第1部が終了。
盛大なブーイング。
長年、たくさんの演奏会を聴いてきたが、思ってみれば、ブーイングというものを実際に経験するのは初めてかな。少なくともこんなに明確な「ブー」の声が飛び交うのは初めてだ。
25分間の休憩中に席を移動。
第1部が100分だったのに対して、第2部は45分と半分以下。
本来のフィナーレがカットされているからかもしれないが、そもそも全3幕のオペラなのに、第1部、第2部と表示されているのだから、他にも色々と切ったり貼ったりがあるのだろう。初心者にはまったく・・・。
聴きながら、そもそもこういう演出でなく、オーソドックスなオリジナル尊重の上演であっても、この「影のない女」というオペラは、難解な作品なのではないか、という気がしてきた。
もともと食べづらい食材なのに、あるシェフが独創的個性的な料理をしたことで、また一層違うものになった、みたいな。
音楽自体は、聴きながら、さすがシュトラウスと思う歌でありオケであるとは思ったのだが、わからん、わからん、のまま第2部も終わった。
カーテンコールは撮影可、ということだったので。
最後に出てきたのはバラク夫妻だった(たぶん)。そういうポジションなんだ。
※こちらは東京二期会の旧Twitterに投稿された、この日のカーテンコール動画。
『影のない女』2日目ご来場ありがとうございます!連日さまざまな反響を呼んでいる当公演、残すところあと土日の2日間となります。
— 東京二期会【オペラ】Tokyo Nikikai Opera (@nikikai_opera) 2024年10月25日
東京文化会館14時開演、当日券もございます。是非劇場にてご自身の心でお確かめください! pic.twitter.com/9c9CK1VLlT
この公演、東京での4日間を終えたら、ボン歌劇場で上演されるんだろうか。
とにかく私は、「影のない女」のオーソドックスな公演を、DVDでもいいから観てみたい。それが先決だ。
帰り道、ホワイエのラックに、クァルテット・エクセルシオの定期演奏会のフライヤーを発見。11月1日(金)、小ホール。妻と聴きに来る。
※この公演についてふれているネット記事をいくつか貼っておきます。