naokichiオムニバス

68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

3月場所14日目

把瑠都が全勝を守った。いよいよ全勝優勝に王手。
長い相撲観戦歴の中で、大受、真鶴他、14勝1敗の十両優勝は何人か見てきたが、初日からの連勝は、昨年9月の豊ノ島の13連勝が最高だった。
さて明日はどうか。

武雄山豪風を下して勝ち越し。今場所は、両者ともいい相撲を見せてくれた。

嘉風は、琴奨菊を相手に思い切りのいい相撲で、嬉しい勝ち越し。前にも書いたが、この人が幕内に定着するためにはもう少し地力をつける必要があると思う。

高見盛が6勝3敗から5連敗で負け越し。
今日も自分充分の形を作れない。左四つになったが、自分から左差しにいったようだ。
一方の朝赤龍は、踏み込みよく、上手下手充分。
攻め込まれた高見盛は、左ですくってしのぐのが精一杯で、まったくいいところなく転がされた。
高見盛は、終盤戦にきて、負けが込んできたこともあってか、心身とも疲れて根がなくなってきた感じがある。
朝赤龍には気迫が感じられた。これでは勝てない。
高見盛という人は、足腰の柔らかさ、背筋力の強さなど、いいものを持っているし、何より人気があるが、どうも成績がついてこない。これだけの人気力士なのだから、常に幕内上位でとってほしいのだが、それができずにいる。
勝って上を向き、負けてがっくりとやっているだけでなく、もう少し何か考えないといけないだろう。

2ケタがかかる稀勢の里と既に10勝の旭鷲山は物言いのつく相撲となった。
稀勢の里は、左四つに組み勝ったまではよかったが、その後の攻めが雑。
左下手はがっちりとっていたが、右上手がとれず、その状態でかまわずのどわでがむしゃらに出た。
老獪な旭鷲山にこの攻めは無茶だ。
まわりこまれながらの首投げ。両者きわどく落ちた。
旭鷲山のもたれこみ方が実にうまかった。
個人的には軍配通り旭鷲山でいいと思ったが、同体との判定で取り直し。
判定の当否はともかく、稀勢の里としては、こういう相撲になったことを反省すべきだ。
若いのだから荒削りでいいという見方もあろうが、そうは思えない。何でもかんでも前に出ればいいというものではない。いつまでも雑な相撲をとっていては、せっかくの素質を空費するだけだと思う。
取り直しの一番も、簡単に旭鷲山のひっかけにかわされた。
花道を引き揚げながら、いつものようにしきりと悔しがっていたが、悔しがるような相撲ではない。
何故悔しがるのか。今の自分の相撲で勝てると思っていて、悔しがっているのなら、大きな勘違いと言うべきだ。
自分の相撲をどう固めていくのか、高見盛同様、根本的に考え直してもらいたい。
いつまでも行き当たりばったりの相撲をとっていてはいけない。

北桜時天空は4分の相撲。
立ち合いしばらくの攻防から、右四つに組んだが、北桜が一旦つかんだ左上手を、時天空がうちがけにいくと同時に切ったことで、以後の長い相撲につながった。
北桜は上手がとれないまま、半身の体勢でがむしゃらに前に出ようとしたが、時天空のふところの深さに邪魔をされて攻めきれない。
時天空が再三うちがけで脅かすので、やがて前にも出られなくなり、動きが止まった。
時天空も、とった右下手が1枚のために思い切ってしかけられないようで、頭までつけながら、膠着状態になった。
時天空がもっと攻めるべき体勢でありながら、なかなか動かず、かといって全く動きが止まるでないので、水も入れられないという相撲になった。
北桜がそれでも何とかと攻めようとしたところ、最後はけかえしを食った。
力相撲ではあったが、途中からは時天空の攻めのなさがやや不満なところ。
北桜としては、序盤で左上手を離してしまったのが、勝敗の分かれ目になった。

旭天鵬栃乃洋は、互いに充分の形から、旭天鵬が右上手を引きつけての寄りで10勝目。
栃乃洋も元気ではあるが、今現在の地力の違いが感じられた。

北勝力は、玉乃島に、まったく踏み込むことなくいきなり引いて、「逆電車道」。
相変わらず気力がない。
私がこの人に腹が立つのは、相手に合わせようとしないマイペースな立ち合いや、好調な時の談話に傲慢な感じがすることだ。傲慢というのが語弊があるなら、少なくとも謙虚さが感じられない、と言い換えよう。
優勝争いにからんだ先場所、「毎場所、いつも全部勝つつもりで土俵に上がっています」と言っていたが、それだったら、今場所にしても、もう少し気迫を見せろと言いたい。

黒海岩木山に変化相撲。
勝っても見ている方にはまったく値打ちのない相撲だ。
がっかりさせられる相撲が続いた。

相撲とは関係ないが、髭が濃い黒海を見ていると、昔、とんねるず石橋貴明がやっていた「ほもおだほもお」(字は忘れてしまった)を、いつも思い出す。
ここ2、3日、ますます黒々としてきて、ついチャイコフスキー肖像画を思い出してしまった。

安馬が機敏な相撲で露鵬をあざやかに下した。
初日からのテーピングは続いていて、痛みはあるのだろうし、終盤にきて疲れもあるだろうと思うが、動きは衰えない。やはり気力がすごい。
これで7勝7敗の五分に戻した。何とか明日勝って勝ち越してもらいたいものだ。

安美錦が惜しい負け越し。
雅山の重い突っ張りに、頭を下げてはずにあてがいながら応戦したが及ばず、はたきに落ちた。
勝ちたいという気迫が伝わってくる相撲だっただけに、残念だ。

さて、注目の白鵬若の里の一番。
白鵬ががちっとつかまえられるか、注目して見た。
今日も立ち合い、右足が大きく遅れてはっとした。若の里が当たってすぐつきおとしにきたことで、左の上手をとることができなかったが、動ずることがなかった。精神面は大丈夫なようだ。
ともかく、相手をよく見ていた。正面解説の高砂親方も言っていたが、その後の入り方のうまさ。右をすばやく深く差し込み、もろざし気味に一気に出て決めた。
前に出る出足のスピードもすばらしかった。これほど一気に前に出る相撲を白鵬にはなかなか見なかった気がする。
全体に、文句のない流れで、かつての大関候補、また過去1勝6敗と苦手にしていた相手を、全く問題にしなかった。
栃東戦で精神的な動揺が見られたが、あの日限りだったようだ。これで14勝は間違いないだろう。
立ち合いの右足だけが気になる。修正してほしい。

魁皇は立ち合いに一度待ったをした。精神的にどうかと思ったが、立ってからの相撲は今場所一番。
分のよくない琴光喜に、すんなり左四つに組むことができ、かつ右上手もがっちりとる絶好の形。
今場所、ここまでは左四つになっても攻められず、力の衰えを見せていた魁皇だが、今日のついては、ここから思い切って上手からふりまわして、速く勝負をつけた。
気持的に開き直ったか、今日については力が出た相撲だった。
7勝7敗。しかし、明日は白鵬戦。あまりにも厳しい相手が残った。

白鵬が勝ったことで優勝の可能性が消えた栃東は、それでも愚直な相撲で千代大海に快勝。
千代大海はもちろん突いて出たが、例によって押し込めず、突きながら下がる形。
前に出る圧力は栃東の方がはるかに勝り、千代大海の突きをあてがいながら、押し込んだ。
その後、千代大海がはたきにいって自らバランスを崩して転がった格好。
一貫した姿勢の相撲をとりきろうとした栃東
突きが通じないと見てかきまわしにいった千代大海
両者の姿勢の差が勝敗を分けた相撲と言える。
これで栃東の明日の横綱戦は大変楽しみになった。

結びの朝青龍琴欧州は、琴欧州がほとんど相撲にならず、横綱が一方的に押した。
やはり昨日傷めたという右足首がよくないのだろう。ケガは仕方がないとはいえ、大詰めの優勝争いに影響する一番に水を差した。
琴欧州については、ともかく膝と足首を完全に治して、来場所は万全の形でとれるようになってくれることを祈るばかりだ。

さて、これで朝青龍白鵬が1敗併走のまま千秋楽。
優勝決定のケースは、どちらかが負ける、どちらも勝つ、どちらも負ける、の4種類となる。
調子が上がりきれない横綱が、充実を維持する栃東に負けるケースはありうる。
また、白鵬が、魁皇の陥落の命運を握り、かつ自らの優勝もかかる中、自分の相撲をとれずに負けることも考えられる。
まったく予想がつかない。両者勝っての決定戦が一番望ましいのはもちろんだが。