naokichiオムニバス

68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

今回の演奏会で弾く曲について

イメージ 1

これが、再三再四ふれてきた、「鬼門」です。ト音記号の、それも五線の上まで音があるよ・・・。



浦安シティオーケストラの本番が、あさって27日(日)に迫った。
昨年12月の譜読みから6ヶ月半。この間、2月には岩井で合宿もあった。
個人的には、まだまだ仕上がっていないが、明日は午後からGP、あさって午前もリハーサルがある。
恒例の直前追い込みで、少しでも整えたい。

さて、今回演奏する曲について。

「コリオラン」序曲(ベートーヴェン)

レコードだと、同じベートーヴェンのシンフォニーの余白に入っていて、聴くことが多い。「エグモント」、「レオノーレ」なんかもそうだ。
だから、正直、「「コリオラン」を聴くぞお!」と思って聴くことはあんまりない。
何となく知ってはいる、という曲だ。

弾くのは今回が初めて。
さらに正直、短いし、何か暗いし、最後もしんみりしてるし、そう気合いの入る曲でもないなあ、と思いながら、今回の練習に入ったのであった。

しかし、オケ練日誌で何度か書いてきたが、やはりベートーヴェンベートーヴェン。力のある音楽であり、作曲者の意思というものを弾いていて強く感じる。
指揮のY先生も、短いこの曲に、かなりこだわって練習をつけてこられた。
「演奏会の最初の曲だから」、「ベートーヴェンだから」と。

ベートーヴェンの場合、ダイナミック指定は非常にシンプルだ。それだけに、ffとf、fとpは、違いをはっきり出さなければいけない。本番では、この点に気をつけて弾きたい。

バレエ組曲「くるみわり人形」(チャイコフスキー)

浦安では、このところ、チャイコフスキーのバレエ曲が続いていて、04年7月に「白鳥の湖」抜粋をメインに演奏、06年5月に「眠りの森の美女」組曲を中プロで演奏。
そして今回の中プロの「くるみわり」で、三大バレエを一巡する。

この曲は、我々のオケの選曲会議で、これまでに何度か候補には挙がったが、特殊楽器が多いことや、技術的にも非常に難しいということで、そのたび見送られてきた。
今回、英断をもって(?)とりあげることになったが、三大バレエの中で最後になったのは、そういう事情もある。

私が「くるみわり人形」組曲を知ったのは、高校の時。
もうはっきりおぼえていないのだが、何かの演奏会(高校の時だから木更津でだったかなあ)で聴いたと思う。解説付きの演奏会だったような記憶があり、チェレスタがこんぺいとうをあらわしているんだとか、フルート3本が葦笛なんだとか、その時に知ったんだと思う。

で、レコードだが、最初に聴いたのは、雑誌の付録だった。
高校の頃、学研から「ミュージックエコー」という月刊の音楽雑誌が出ていた。確か、書店で買っていたのではなく、高校の音楽の先生の斡旋で、学校を通じて購読していたと思う。
大木正興氏による、若者向けの新譜紹介の記事が毎月載っていて、レコードを集め始めたばかりの私には、非常にためになった。
この雑誌には、毎月、17センチLPのレコードが1枚、付録についた。
当時まだ無名(と言ったら言い過ぎか)の朝比奈隆=大阪フィルの「運命」や「未完成」などといった、今からすると非常にレアものの音源もあった。
その一連の付録の中に、秋山和慶=東京交響楽団の「くるみわり」があり、これをよく聴いていた。

市販のレコードで初めて買ったのが、カラヤンウィーン・フィルの演奏で、74年、高校卒業間近の頃だった。前年の秋に、カラヤンベルリン・フィルが来日し、来日記念として、ロンドンと東芝が、カラヤンのレコードを廉価盤で放出した、ロンドンの方の1枚である。

その後、大学に入ってから、小澤(征爾)さんがパリ管を振った新譜(「くるみわり」と「眠り」のカップリング)が、「第九」や「悲愴」に続いて出た。
結局、これまでのところ、この演奏を一番何度も聴いてきたと思う。

私の場合、三大バレエの中では、「くるみわり」に一番なじんできた。
弾くのは今回が初めてだ。

「小序曲」にはいまだに苦心しており、今回の演奏会のすべての曲の中でも、これが一番の難関かもしれないと思っているが、「行進曲」以降は、とても楽しく弾けている。

暗い、あるいは重厚な「コリオラン」とショス5にはさまれた、今回の演奏会で唯一お客さまがやすらげるであろう、この中プロ、夢やおとぎ話の雰囲気が出せればいいのだが。


メインは、我々のオケにとって、今回一つのチャレンジである、ショス5。

前回、昨年11月の定期演奏会では、チャイコフスキーの5番をメインに演奏したが、この選曲の時は、チャイ5とショス5の一騎打ちになり、投票の結果、ほんの僅かの差でチャイ5に決まった。
この時は、弦はチャイ5、管はショス5という分かれ方をした(ただ弦の中で、チェロだけはショス5派が多かったのだが)。
そんな経緯もあって、今回はショス5ということになった。

この曲は過去に弾いた経験がある。

最初は大学オケの時。
4年生の冬、最後の定期演奏会を終えて、次の4月の演奏会のメインがショス5だった。
本番には乗れないと思ったが、卒業までの期間は、練習に参加して、後ろの方で弾いていた。冬の合宿にも参加したと思う。
これが、ショス5にふれた最初である。

卒業し、今の会社に就職して、この演奏会の本番の日は、新入社員研修の最中だった。
乗ることはできないまでも、聴きには行きたいと思っていたのだが、結局行けなかった。
この時のちょっとせつない思い出は、以前書いた。
  http://blogs.yahoo.co.jp/naokichivla/33502304.html
私にとっては、ショス5という曲と、大学卒業前後のこの時期のことは、今でも切り離せないものがある。

研修が明けて、正規の配属が本社の経理部に決まり、浦和の独身寮に落ち着いた。
研修中は、音楽をろくに聴ける環境ではなかったのだが、やっと自分の部屋でステレオを鳴らせるようになった。

早速、秋葉原石丸電気に走って買った、社会人になって初めてのレコードが、そんないきさつもあって、実はショス5であった。
ストコフスキー=ニューヨーク・スタジアム交響楽団の演奏。「レコ芸」の相談室のページで、出谷啓氏がいつも推していた盤である。

次に弾いたのは、ずいぶん後で、02年6月。
いつも誘っていただいている津田沼ユニバーサル交響楽団と、習志野シティ・フィルハーモニックの合同演奏会に、エキストラとして参加させていただいた。
習志野文化ホール、金丸克己氏の指揮だった。
本番のステージで弾いたのは、これが最初ということになる。

そして今回、自分のオケで。
やはり、エキストラとして、部分的に練習に参加して弾くのと、自分のオケで、半年かけて一からやっていくのとでは、全然違う。
例の1楽章、15番16番の鬼門も、習志野で弾いた時は、そんなに苦労した印象がない。
後ろの方で、適当にというと語弊があるが、迷惑をかけるようなデカい音は出さないようにしてそこそこに弾いていたからだと思う。
しかし、自分のオケで前で弾くとなれば、やっぱり大違いで、この箇所は、これまでの練習過程では、常に自分の頭の中から離れなかった。
ここについては、本番までの残る時間、少しでも回数多くさらって、ともかく、思いきって弾きたい。

ところで、ショスタコーヴィチのこのシンフォニー、弾いていてどうか、というと結構微妙なものがある。
聴いて好きな曲、いい曲が、弾いて楽しいとは限らないものだ。
個人的には、ヴィオラ弾きとしては、やはりこれまでたびたび弾いてきた、モーツァルトベートーヴェンブラームスあたりが、楽しいし、弾き甲斐があると思っている。
それに対して、ショスタコーヴィチというのは、自分にとっての常食ではないので、「たまにはこういうものも食べてみるか」的な感じで取り組んできた。
だから、楽しいとは言えないが、物珍しさの意味では、弾いていて面白いと言えるかもしれない。

本番が近づくにつれて強く思うようになったのは、やはり3楽章はいい、ということだ。
この楽章だけは、古典派、ロマン派のオーソドックスな作品を演奏する時のような、他パートとのアンサンブルの楽しみを味わっている。特にヴァイオリンとの連携。

私は、近現代の音楽は、決して聴かない訳ではなく、バルトークなどは結構好んで聴いているのだが、ショスタコーヴィチの音楽については、これまで、この5番のシンフォニーをむしろ例外として、ほとんど聴かぬままに50歳の坂を越していた。

今回の練習過程で、一応よく知っている当の5番はさておき、ショスタコーヴィチの他の作品をこの機会に色々聴いて参考にしよう、と思い立った。
毎度おなじみタコリーナさん(タコリーナのタコは、ショスタコのタコだそうだ)にもアドバイスしていただきながら、交響曲弦楽四重奏曲の全集などあれこれのレコードを買って聴いた。
これは、練習にとてもプラスになったし、これまで食わず嫌い気味だった、ショスタコーヴィチの音楽に親しむことができた。
今度の演奏会が終わっても、時々はショスタコーヴィチの音楽を聴き続けていくと思う。

アンコール・・・?

アンコールが何であるのか、まだ内緒です。

今回、ショス5のアンコールの選曲は、結構苦心した。
最初は、同じショスタコーヴィチの「タヒチ・トロット」、という方向だったが、楽譜の権利の問題で断念し、選曲をやり直した。

そして決まった曲は。

個人的には、昔から大好きな曲。

作曲者は、ベートーヴェンでも、チャイコフスキーでも、ショスタコーヴィチでもない。
愛にあふれた音楽。

何年か前、東京オペラシティで聴いたことがある。尾高忠明さんの指揮で、アンコールでだったが、演奏する前に尾高さんが、曲名は言わず、「○○(作曲家の名前)って、とても愛妻家だったんです」とだけ言って、演奏を始めた。
聴きながら、思わず涙がこぼれそうになったのをおぼえている。

あさっては、演奏会の最後、会場のお客さまの心にしみいるような演奏ができたらいいなと思う。