この時期、東京では街を歩いていると、黒いスーツに身を包んだ若い女性とよくすれちがう。
会社訪問の女子大生だ。
季節の風物詩という感じである。
もう、判で捺したように、どの人も同じスタイルだ。
ヘアスタイルやメイクについても、何かしら統一されたリクルート対策があるのだろうが、そのへんはよくわからない。
ところで、私の世代の男子学生の就職活動というと、判で捺したように、あるものを持って歩いていた。
ご記憶の方も多いだろう。
厚手の紙でできたマチ付きの封筒(封入口のところは、ヒモでぐるぐる巻いてとめる)に、透明なビニールのカバーがついたものだ。
厚手の紙でできたマチ付きの封筒(封入口のところは、ヒモでぐるぐる巻いてとめる)に、透明なビニールのカバーがついたものだ。
誰もがこれに、訪問する会社の資料などを入れて歩いていた。
(私は、そういう没個性的なことが嫌だったので、布製のトートバッグを持ち歩いたのだが)
(私は、そういう没個性的なことが嫌だったので、布製のトートバッグを持ち歩いたのだが)
入社3年目の時。
新入社員のN君が、その銀行まわりの担当だったのだが、銀行に持って行く、預金の払出票その他の必要書類を入れていくのが、前記のビニールカバー付き封筒だった。
N君の1年先輩(私の1年後輩)のM君が、N君に、冗談めかして、
「じゃあ、N君、この「会社訪問袋」を持って、○○銀行に行ってきてくれ」
と言った。
「じゃあ、N君、この「会社訪問袋」を持って、○○銀行に行ってきてくれ」
と言った。
N君は、
「ほんとに、学生みたいで、やだなあ」
と言った。
「ほんとに、学生みたいで、やだなあ」
と言った。
当時は、このように「会社訪問袋」と言えば、通じたのだ。
N君もM君も、私も、別々の大学から入社してきたのだが。
N君もM君も、私も、別々の大学から入社してきたのだが。
余談だが、そのM君は、後年、この経理部財務課(その後部署の名前は変更されたが)の課長となり、今は、札幌にある支店の総務部長をしている。
そして、N君も、今年4月の定期異動で、大阪から東京に戻り、M君の後任者の後任者として、この部署の課長となった。
そして、N君も、今年4月の定期異動で、大阪から東京に戻り、M君の後任者の後任者として、この部署の課長となった。
30年近く前、新入社員から入社3年目の若手として同じ部署で仕事をしていた仲間が、そうして、順次その部署の長になった、というのは、やはり感慨深いものがある。