naokichiオムニバス

68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

9月場所6日目~2番相撲をとらせていいのか

幕内前半戦、立ち合いについては少し落ち着いた感じがあった。

垣添(対千代白鵬戦)、嘉風(対玉鷲戦)は、いずれも、先に両手を仕切り線にしっかりついていながら、自分のタイミングで立とうとして、早くつっかけて待ったされた。
やはり、手をつけばいいというものではないのだと思う。

1敗同士、黒海玉乃島は、頭四つで互いに様子をうかがった後、黒海が、機を見て玉乃島の右をたぐるようにして左前まわしをとり、一気に寄った。

出島栃ノ心は、栃ノ心が右からかちあげ、互いに右差しから先に上手をとり、引きつけて正面に寄った。力強い相撲だった。

北勝力は、相手を突ききれず、時天空は右四つに組み止めて、東へ寄り切った。
北勝力という人は、私にとって数少ない「嫌いな力士」だ。立ち合いが自分勝手であることが理由だが、もう一つ、負けが混んでくると、とたんに気力の感じられない、あきらめたような負け方をするようになることも気にくわない。
この一番も、確かに不得手の四つ相撲に持ち込まれてしまったからだろうが、相手の寄りを必死の形相で残そう、というところがまったくなく、格好だけ一応こらえているという感じで、顔は淡々としたものだった。

若の里は、豊響が押して出るのをはたきでかわし、左四つに組み止めた。上手をとり、豊響に両まわしを与えない。
しかし、豊響も腰が重く、若の里も簡単には攻めきれない。若の里の攻めを、再三にわたって必死に残した豊響は、北勝力とは全然違った。
しかし、最後は、若の里が白房下に寄り倒した。

栃煌山将司は、栃煌山がいい流れで左からおっつけて出て、その左で上手をとり、東土俵、もう勝負あったかと思ったが、将司は浅いもろ差しになっていて、この寄りを残し、左からおっつけて正面に逆襲。初日が出た。

幕内でただ一人全勝の豪栄道は、昨日、立ち合いで散々だった琴奨菊との対戦。立ち合いはすんなり成立。琴奨菊は、出ながら左を差そうとしたが、豪栄道がうまく間合いを作ってはたきこんだ。
あっけない相撲ではあったが、豪栄道の動きのよさが目立った。一方、琴奨菊は、相手の動き(変化とは言えない)についていけずに落ちたのは、やはり立ち合いのことに頭が向いているからだろう。

雅山旭天鵬は、立ち上がってすぐ、正面放駒審判長が手を挙げて止めようとしたが、両力士は相撲を続行、行司も審判長の声に気づかず、突き合いの後に旭天鵬がはたいて「勝負」がつき、行司も旭天鵬に軍配をあげた。
当然、審判長が勝負無効を告げて、取り直し。
雅山の手つきが不充分だという判断だと思うが、止めるほどのものではないように思った。

いずれにせよ、土俵下から肉声で止めるのは無理だということだ。協会が「立ち合い正常化」にこだわるのであれば、これは、早急に改善すべきだ。
先日書いた、審判にホイッスル、は半分冗談としても、土俵上にはっきりと声が伝わるような拡声装置を設けるべきだろう。旗を持たせて揚げさせるのもいいかもしれないが、これは見逃す可能性もある。

審判長は、止めたのに止まらなかったことで怒っていたが、行司も、立ち合い成立と判断して、以後は勝負の裁きに専念していたのだから、怒られて自分も面白くなかっただろう。まして、両力士にしてみれば、一所懸命相撲をとって、今のは無効ですと言われては浮かばれない。さらに、場内のお客さんで、審判長の動きに気づかずに観ていた人も多かっただろうから、熱心に応援しながら観たのに、え? 今のは無効なの? と思ったはず。
つまり、すべての人が面白くない思いをしただろう、ということだ。そうまでして、手をつかせないといけないのだろうか。

2回目の立ち合いは成立。格別雅山の手つきがよくなったとは思えなかった。強いて言えば、右手は少し土俵上に静止した時間が長いかな、という程度。要するに、1回目がそんなに悪く、2回目がそんなにいいとも見えなかったということだ。
問題は、2回目は旭天鵬が立ち遅れ(おそらく、勝ったと思った相撲が無効だったことで、気持ちが落ち着いていなかったのだろう)、タイミングがずれた形での立ち合いになった点では、こっちの方が問題だろう。公平な立ち合いでないという観点からは、この立ち合いだって止めることは考えられないのだろうか。
手をつく、つかないは厳格にみるが、立ち遅れは力士の自己責任ということなのか。
呼吸が合った立ち合いという意味では、1回目の方がずっとよかった。

さて立ち遅れた旭天鵬は、押し込まれながらよく残し、相手の右をひっぱりこんで組み、右上手をとって前へ出ようとしたが、外四つではやや無理があり、雅山の左からのすくい投げに落ちた。
最初の無効の一番と勝敗が逆になった。

審判サイドとしては、1回目の立ち合い、ちゃんと手をつかなかった雅山が悪い、と言いたいのだと思うが、私としては釈然としない。
1回目と2回目の雅山の手つき。あの程度の違いで、止める、止めないが分かれるのなら、観ている側としては疑問だし、両力士には気の毒だと思う。
白鵬琴奨菊戦もそうだったが、土俵上で2番とらせる、ということは大変なことだと私は思う。しかもこの一番のように勝敗が逆になるようだと、白星黒星に賭けている力士にとっては、さらに重大なことだ。
気がつかずにとり続けたお前たちが悪いのだ、と言って済ませられるものではないだろう。それだったら、気がつかずに勝負を続行させた行司は、数日間出場停止処分になってもいいだろう。
私は、ちゃんと気がつくように止めなかった審判長だって悪いと思う。
繰り返すが、土俵上で力士に2番とらせる結果となった、というのは、非常に重大なことだと思う。
勝負を止める権限を持つのは、審判と行司だ。どちらが止めるにせよ、「立ち合い正常化」のために止めるのであればだ、自分の役割をしっかりと果たすような止め方を考えてもらいたい。
この一番について、止めきれずに2番相撲をとらせることになったのは、放駒審判長の「不手際」であるとさえ、私は言いたい。行司や両力士に怒る問題ではないのだ。そう認識してもらいたいと思う。

豊ノ島は、立ち合いから流れよくもろ差し。切り返しを見せておびやかしながら攻めた。朝赤龍もしぶといので、豊ノ島も簡単には攻めきれない。
豊ノ島は左から投げて崩し、白房下へ寄ったが、朝赤龍もしぶとく右から小手投げを打つと、豊ノ島の体も大きく傾いた。しかし、最後は豊ノ島が左をつきつけて赤房下にもたれこんだ。
私好みのいい相撲だった。

琴光喜稀勢の里は、琴光喜がこれは明らかに手つき不充分。行司と審判長が同時に声を出した。しかし、琴光喜が右へ動く作戦だったことはばれた。
2回目、やはり作戦がばれたことで、琴光喜としては気持ちを整えきれないのか、立ちしぶり、待ちきれない稀勢の里がつっかけて、琴光喜受けられず、待った。
3回目の立ち合いは、1回目と同じく、琴光喜が右に動いて上手をとり、投げでふりまわして、西へ寄り倒した。

千代大海安馬は、両者が仕切り線に手をついて静止したが、こうなると却って呼吸を合わせて立ちづらいのか、互いに嫌った。
2回目は、安馬があっさりもろ差しとなり、抱きすくめるように正面に寄った。この立ち合い、安馬は左右ともチョン立ちだったが、止めなくてよかったのか、放駒審判長?
千代大海としては、自分の呼吸で立てなかったのが響いたようで、まったく相撲にならなかった。

魁皇は、立ち合いすぱっともろ差し、把瑠都を赤房下へあっさり寄り切った。把瑠都としては何の手もなく敗れてしまい、ふがいない相撲だった。

琴欧洲鶴竜の右への変化を食ってばったり。早くも4敗目。
この一番に関しては、鶴竜の変化の仕方がうまかったという感じだ。タイミングが絶妙だった。あれでは、相手をよく見ていても食うかな、というところだが、琴欧洲の左足が遅れたのも事実。

昨日の敗戦、それも負け方がよくなかっただけに、白鵬の今日の土俵を心配して観た。相手は、先場所、朝青龍を食っている栃乃洋。決してあなどれない相手だ。
しかし、杞憂だった。今日は昨日と全然違う相撲だった。
白鵬は、相手より一瞬早く立ち、しかも踏み込みが鋭かった。左から相手ののどの当たりを突いて起こし、右からすくうようにして差して、右四つ。栃乃洋は左が固いので、左四つにいくかと思ったが、難なく右四つに持ち込んだのはさすが横綱
あとは左上手をさぐりながら右かいなを返して一気の寄り。完勝。

朝青龍安美錦は、安美錦が思いきった左への変化。朝青龍はたたらを踏んで東土俵まで泳ぎ、そのまま送り出された。
このところ、四つだけでなく突き押しの相撲も見せる安美錦だけに、朝青龍としては、変化を予想せず、思い切って突っ込んでいったのだろうが、この一番で感じたのは、やはり朝青龍の動きだ。
雅山戦で、相手のいなしにあっさり崩されたのと同様、この一番でも、相手の変化に泳いだ後、体勢を立て直すことができない。かつての朝青龍だったら、後ろを向かされても俊敏に向き直っていたところだが、今はそれができない。
朝青龍は、時間いっぱいからの仕切り、右こぶしをおおげさに振り上げてから仕切り線についた。チョン立ちへの批判がある中、ほら、こうして、手をついたぞ、とアピールするような動作だった。
しかし、それだけに、ふだんの、朝青龍としての平常心の立ち合いではなかったとも言える。それが、変化を食った原因かもしれない。

全勝 豪栄道
1敗 白鵬琴光喜安馬黒海

豪栄道の全勝は、いずれストップするだろう。明日早くも琴光喜に当てられている。
白鵬琴光喜安馬の3人の中では、昨日を別にして、白鵬がやはり頭一つ抜けている印象だ。琴光喜安馬がどこまで並んでいけるか。