ウォークマンの登場は、やはり画期的だった。あれから、30年経つのか。
何が画期的だったか。「歩きながら音楽が聴ける」に尽きる。
「ウォークマン」というネーミングは、誠に商品の本質をついた秀逸なものだと思う。
その当時、ラジカセというものはもちろん存在した。だから、家から屋外に音楽を持って出て聴く、ということはあった。
しかし、ラジカセを手にぶらさげて鳴らしながら歩くわけにはいかない。
ハイキングで行った先とか、海水浴場とか、外出先のどこかに置いて、そこで聴く。つまり、固定した場所で聴く、ということだった。
ハイキングで行った先とか、海水浴場とか、外出先のどこかに置いて、そこで聴く。つまり、固定した場所で聴く、ということだった。
移動しながら聴く、という意味では、既にカーステレオが普及していたが、車の外で、家の外で、歩きながら聴けるタイプの機器の登場は、やはり画期的だったと思う。
かつては、音楽というものは、演奏会場において、演奏家と聴衆が対峙する形で聴かれていた。
その後、レコードの発明で、家庭というプライベートな空間に、音楽が持ち込まれるようになった。
そして今、音楽は、イヤホンを通じて、とうとう人の耳に張り付くに至った、という趣旨の記述だったと思う。
その後、レコードの発明で、家庭というプライベートな空間に、音楽が持ち込まれるようになった。
そして今、音楽は、イヤホンを通じて、とうとう人の耳に張り付くに至った、という趣旨の記述だったと思う。
團氏が、音楽鑑賞のあり方のそうした変遷を、肯定的に書いていたのか否定的に書いていたのか、忘れてしまったが、とにかく、これは歴史的に画期的なことだ、と論じていたと思う。
「とうとう人の耳に張り付いた」という表現が、私には印象に強く残った。
ところで、私は、すぐにウォークマンを買うことはなかった。
当時は、入社2年目。まだ仕事に忙殺される状況ではなく、割合早めの時間に独身寮の部屋に帰れていたから、部屋のステレオで音楽を聴くことで、充分満足していたのだろう。
そろそろほしいな、と思って初めて買ったのが、3年後の82年。入社5年目のことだった。
どうせ買うなら、機能が豊富なものを、と思い、カセットを聴くだけでなく、ラジオも聴けて、録音もできるもの、という条件で、アイワの「カセットボーイ」というブランドの商品を買った。
その頃は、今いる品川の支店で、経理の仕事をしていたのだが、月に2回、現場の応援ということで、日立にある工事事務所に、泊まりがけで出張していた。
そのこともあって、出張の往復や、日立の宿舎にいる時に、使いたいと思ったのだ。
寮のステレオで録音したテープを何本も持って行って、聴いたものだ。
ウォークマンの次は、ポータブルCDプレーヤーの時代になる。
初めて買ったのは、92年の春頃だったと思う。
LP時代に引き続き、CDになってからも、せっせとディスクを買い集めていたが、さすがにこの頃になると、仕事が忙しくなってきて、なかなか家のステレオで聴く時間がとれなくなってきた。
買っても聴けないんじゃ、しょうがない。
そこで、通勤や出張の移動時間を利用しようと思ったのだ。
そこで、通勤や出張の移動時間を利用しようと思ったのだ。
通勤では、毎日持ち歩いた。
出張の時には、ポータブルCDプレーヤーと、聴きたいCDを10枚、20枚、ディスクだけ入れるケースに収納して、持って出かけていた。
カセットからCDになって、これも画期的だと思ったのは、テープを作る(ダビングする)必要がない、ということだった。
それまでは、LPレコードもしくはCDからカセットに録音する、一手間があった。
それも、1時間の音源であれば、録音には1時間かかったのだから、今から思えば面倒なことだった。
当時はそれしか方法がないわけだから、外に音楽を持ち出せる魅力が、その手間に勝っていたと言える。
当時はそれしか方法がないわけだから、外に音楽を持ち出せる魅力が、その手間に勝っていたと言える。
それが、CD音源そのものをダイレクトにセットして聴けるとなると、これはもう本当に便利も便利、という他はなかった。
記憶では、カセット型の携帯プレーヤーは、そんなに毎日使ったわけではないが、ポータブルCDプレーヤーは、常に手放さなかった。
iPodの流行に、さすがに無関心ではいられず、そろそろああいうものがほしい、と思ったのが、2年前。
既にこのブログも始めていたので、記事にも書いた。
そして、この機器の、またまた画期的だったこと!
本当に、人間の技術開発というものには、際限がないと、痛感させられた。
何と言っても、もはやCDを持ち歩かなくていいんだから。
CDからパソコン経由で機器に取り込む作業のラクなこと。CD1枚が、2~3分でパソコンに取り込めてしまうのだ。トータル5分足らずで、機器に転送できる。
そして、今使っている8GB仕様の場合、マッチ箱程度のちっぽけな機器に、アルバムにして約100枚分が入ってしまう。
初期のカセットのウォークマンからすれば、色々な意味で天地の差だ。
通勤の時に、CD100枚を現物で持って歩く、なんてことは、到底考えられないが、それが、首からぶらさげた、わずか数十グラムの機器に入っちゃうんだもんねえ。
あと、ポータブルCDプレーヤーの場合だと、基本的に本体はバッグとかに入れないといけないから、そのバッグと耳がコードでつながっている、というのは、これも今から思えば鬱陶しい話だった。
それが、機器を首から胸にぶらさげて、手ぶらでも歩けるのだから、これも相当に大きな利便性だ。
iPodの普及も、この点が大きかったのではないかと思う。
今、こんなに便利だと思って、喜んで使っているものが、「今から思えば」と回顧されるように、きっとなるんだろう。
「これを知ってしまったら、あれにはもう戻れない」と。
「これを知ってしまったら、あれにはもう戻れない」と。
これまでもその繰り返しだった。
やはり楽しみなことだ。