７月場所９日目～朝青龍深刻、白鵬完勝

ＮＨＫの放送は、正面が荒磯(元琴錦)、向正面が舞の海と、饒舌コンビ。うるさくて仕方がなかった。
これで刈屋アナだったら、ちょっと耐え難いところだったが(笑)。

豊真将と普天王は、左四つの相撲。普天王が上手充分から、久しぶりにいい相撲をとった。
豊真将は、いつものしぶとさは見せたものの、それだけ。基本的には内容のない相撲で、残念。

朝赤龍は、得意の左四つの体勢を作った。嘉風としては具合が悪いところだが、嘉風は頭をつけて食い下がる。逆にならないといけない朝赤龍は、食い下がられて困った格好。この形では、いかに左四つでも攻めきれない。終始立ち腰だったので、投げにはいくが、これではどうにも決まらない。
最後は嘉風がしぶとさ勝ちで寄り切った。
朝赤龍、よほど状態が悪いのだろう。

山本山は、若荒雄のいなしによく向き直り、押して出るところ、若荒雄がはたいた。
山本山は腹から落ちたが、若荒雄も土俵を飛び出し、微妙。軍配は若荒雄。当然の物言い。
差し違えでもいいかと思ったが、協議の結果は取り直し。
山本山は、息が上がって苦しそうで、負けでかまわないから、取り直しにしてもらいたくないという表情。
取り直しの一番は、突き合いとなったが、はたかれたら落ちるぞ、落ちるぞ、と見ていると、今度は文句なしにはたかれて、二度目の腹ばいとなった。
山本山の場合は、取り直しは三番乗りにしてやったらどうか(笑)。

翔天狼が、玉乃島を一気に押して、７勝２敗。強くなった。

黒海が、右への変化で、武州山に、まったく身体をさわらせなかった。
変化相撲、即に黒海みたいに身体がある力士の変化には、基本的に批判的な私だが、この変化は、うまい！　と感服した。立ち上がる寸前まで気配をまったく感じさせず、立ってからのかわし方は、やはりこの相撲に限っては、賞賛すべき技能と言わざるを得ない。

猛虎浪が、立ち合い先に左上手をとって、頭をつける体勢を作ったが、高見盛は、右からすくって相手の上手を切っておいて、そちらに引き落とした。
すくって差す差し身のよさ、そして、その右の方に引き落とす連続技、この相撲は、高見盛にしかとれないものだ。

豊ノ島や、下から押し上げてもろ差しをねらったようだが、雅山のはたきに落ちた。見ていて歯がゆい。

安美錦は、低く当たってもろ差し。重い岩木山をいっぺんにもっていった。地力を感じさせた一番。深く差さずに、相手の脇の下にあてがうようにして押したのが光る。

栃煌山が立ち合い低く当たって押し上げようとしたが、把瑠都は左右からおっつけて出て、左からの突き落とし。栃煌山のもろさは相変わらず。

琴奨菊は、立ち合い左を入れたが、豊響は、琴奨菊に右からおっつけさせず、右のどわから押して出て、右からの突き落とし。昨日まで全敗だったとは思えない相撲だった。

旭天鵬が豪栄道を圧倒。立ち合い右四つ。旭天鵬は上手充分。豪栄道は右半身の体勢で、何もできず。豪栄道と栃煌山とが、ふがいなさと相撲ファンの落胆を競っている。

稀勢の里が阿覧に地力の違いを見せた。左四つに組み止め、珍しく右上手を引きつけて出た。土俵際まで攻め込んでからの上手投げ。
阿覧は、もう自分の相撲を見失っている。それが、稀勢の里にこういう左四つの相撲をとらせた要因だろう。

琴欧洲と魁皇は、長い相撲になった。琴欧洲は、立ち合い当たってから突いて押し込んだが、魁皇は左からいなす。琴欧洲も向き直って、左差し。互いに上手がとれない。
琴欧洲は、右からおっつけて上手をねらうがとれず、もみあいが続いた。今の魁皇は、左一本で長身の琴欧洲を寄り立てることはできないだろうから、琴欧洲としては、上手がとれなければ、右をまきかえてもろ差しをねらう手もあると思ったが、そういう展開にはならなかた。
最後は、琴欧洲が東へ寄り立てると、魁皇も力尽きた。

日馬富士と琴光喜は、琴光喜が思い切りのいい相撲をとった。日馬富士は、当たって突き起こそうとしたが、琴光喜は相手の右を左から引っ張り込むと、すぐ小手に巻いた。
こういうのは変化とは言わないが、琴光喜の横への動きは俊敏だった。

朝青龍は、昨日の稀勢の里はまだしも、千代大海に負けるようでは、と思っていたが、そうなってしまった。
立ち合い、常に相手以上の速いタイミングで踏み込む朝青龍が、今日は立ち遅れ気味で、しかも当たる時には、顔が横を向いてしまっていた。
千代大海は、いつもの突き。朝青龍も応戦したが、攻め込むどころか、押し込まれてしまった。こんなことは考えられない。あっという間に足が俵にかかったが、必死でこらえようとして、足は後ろにある状態で、上体だけが前のめりになったので、これははたかれたら落ちるぞ、と思っていたら、案の定はたかれて落ちた。
これは深刻だ。フィジカルな問題なのか、メンタルな問題なのか。
いずれにしても、千秋楽まで相撲をとれるのか、というレベルの懸念になったし、それ以上に、今場所が朝青龍最後の場所になる可能性もあるのか、と思わされる。

白鵬は、立ち合いすばやく右差し、左前まわしもとった。鶴竜も、さすがに伸び盛りの若手らしく、すかさず左をまきかえてもろ差しになったが、白鵬はかまわず、すごい出足で西へ走った。
すごみさえ感じさせる内容で、全勝を守った。

全勝　白鵬、琴欧洲
１敗　琴光喜
白鵬に、両大関がどこまでついていけるか、という展開だ。