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68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

上妻宏光 ソロ・デビュー10周年特別講演 ~伝統と革新~

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昨23日(火)の外出、最終目的地は渋谷のオーチャードホール

津軽三味線奏者、上妻(あがつま)宏光の演奏会だ。
記念の特別公演ということで、スペシャルゲストが5人出演した。

私は上妻宏光という人をまったく知らなかった。妻の誘いで一緒に行くことになったのだ。
妻は、これから三味線を習って弾けるようになりたい、と前から言っている。楽器も近い内に買う予定だ。

オーチャードホールに前回来たのは、いつだろう。何の演奏会の時だったか。

3階中央の最前列に座る。

津軽三味線というものを実演で聴くのは初めてだ。
日頃、邦楽には正直なところあまり関心がないので、テレビでも、せいぜい紅白歌合戦で、細川たかしが「望郷じょんがら」を歌った時に、後ろに大勢の三味線がいた場面などをおぼえている程度だ。

2部構成。

第1部は、古典(演奏会タイトルの「伝統」)。そして、第2部は、この人ならではの、純邦楽を超えた活動(同じく「革新」)を聴いた。

第1部、最初は、一人での演奏。バッハの無伴奏ヴァイオリン、無伴奏チェロみたいなもので、三味線一本での演奏が、3、4曲。

ピアノを弾く時の椅子(背もたれのあるもの)に座って弾いている。

大きなホールなので、当然PA付き。3階にも音がよく聞こえてくる。

曲間には本人のMCが入り、曲名もその都度紹介してくれた。

三味線ソロの曲の後、今度は、歌付きで、「田原坂」。

次に、オリジナル曲、「紙の舞」となったが、ここで上妻宏光の後ろ上方に、もう一人三味線奏者が。
三味線のデュオとなったが、実はこのパートナー奏者が、スペシャルゲストの一人目、志村けんだった。

志村けんが三味線を弾くとは、まったく知らなかったので、びっくりした。
MCでの話によると、上妻宏光に弟子入りして5年になるのだそうだ。

第1部の最後に、上妻、志村の二人に三味線奏者がさらに加わってのアンサンブルの形で、「津軽じょんがら節」。

初めて津軽三味線の生演奏を聴きながら思ったのは、世の東西、似た楽器が発達してきたことへの興味だ。

胴に弦を張り、撥やピックや爪ではじいて音を出す。
そういう共通点を持つ楽器は、三味線の他に色々ある。


また、少し奏法が異なる楽器としては、もちろん、ヴァイオリン属
二胡

楽器の発祥や歴史についてはまったく不勉強だが、どこか1カ所で発明されたものが、世界に伝播したということはなかろう。

世の古今、世の東西で、共通点のある楽器がそれぞれに誕生し、発達して、今日に至るのだろうと推測する。

面白いものだ、と思った。

自分で弾いているヴィオラもそうだが、三味線にはギターのようなフレットがない。棹の上から下までフルに使ってのポジション移動は、とても大変そうだ。
オーケストラのファースト・ヴァイオリンみたいに見えた。

さて、休憩後の第2部は、三味線という楽器の可能性を追求し、邦楽器を広く知ってもらいたい、という、上妻宏光の活動コンセプトによる、他ジャンルとのコラボレーション。

ピアノとパーカッションとのトリオの形で、「風」、「Solitude」。

ジャズともフュージョンとも違うような、こういう音楽を何と呼んだらいいのかわからないが、まあ、ジャズ的なテイストのインストだ。

心地よい音楽だとは思ったが、初めて聴いたこともあってか、こういう音楽で使われる三味線の音色には、やはりいささかの違和感があった。

これがエレキギターだったら、もっとフィットするだろうな、と思いながら聴いた。つまらぬ感想だが。

次に、2人目のゲスト、綾戸智恵

綾戸智恵のピアノとヴォーカルとのデュオで、ローリング・ストーンズのナンバー。
「Junping Jack Flash」といったかな。

これはとてもよかった。

次のゲストは、尺八の藤原道山

ともに10周年だそうで、それを記念してお互いのアルバムに参加したと言っていた。

「華」という曲を二人で演奏した。

4人目のゲストは村治佳織

協演は初めてとのこと。デュオで、「ラ・ノーチェ・セゴビア」という曲を演奏。
これが初演らしい。

私は第2部の中ではこれが一番よかったと思った。

そして、最後のゲストは夏川りみ

ピアノ、パーカッションが加わって、「涙そうそう」。
この人の声は本当にきれいだ。

次に、上川隆也が主演した「その男」という舞台の音楽を担当した中の曲。「涙の記憶」と言ったと思う。

そして最後に、この演奏会のために作ったという、「縁(えにし)の詩」という曲でしめくくった。

拍手に応えてのアンコールは、洋装から再び和装に着替えて、ソロでの津軽三味線の曲だった。

やはり、こうした曲が一番はまるな、と思った。

しかし、盛りだくさんの演奏会だった。ライブと言った方がいいのか?

17:30開演、20:00終演。

テレビの収録が入っていた。この演奏会の模様は、来年の元日にNHKのBS2で放映されるとのこと。
興味のある方は、是非ご覧下さい。

妻に連れられての演奏会だったが、貴重なものが色々聴けてとてもよかった。

帰りに、久しぶりに「元祖くじら屋」に入った。

妻は、三味線を習いたいと言いつつ、どういうジャンル(流派?)の三味線をやるか、考え中だったようだが、やはり津軽三味線がいい、と言っていた。
楽器も津軽三味線には、それ専用のものがあるのだそうだ。

上妻宏光は、「生一丁!」と称して、PAなしの生音の演奏でのツアーも行っている。
来年の2月に、東京日本橋で公演があるそうなので、これにも行ってみたいものだ、と話した。