naokichiオムニバス

68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

帰宅困難者の顛末<後編>

タクシー待ちの行列は、駅舎から表に向かっていて、表に出た正面が、ヤンマーのビル。
そこから左に折れる逆L字型で、タクシー乗り場に続いていると推測された。

並んだ位置から、その曲がり角までが、目分量で100人くらい。
左に折れて、乗り場まで、どれくらいの長さの列なんだろう? でも並ぶしかないんだ。

行列はしかし、それなりに少しずつ進み、17:10頃、並び始めて30分くらいで、曲がり角のところまで出た。

曲がり角に近づくにつれて、外の激しい風雨が近くに見えてくる。今は建物の中だからいいけど、表に並んだら、雨に濡れたりするかなあ、と不安だった。

表も、一応ひさしはあるので、傘をさす必要はなかったが、なにぶん、横なぐりの雨だ。風向きが変わると結構濡れた。

雨もさることながら、とにかく風。先刻、日本橋へ行こうとして断念した時よりも、激しさを増している。それはそうだ。台風はだんだん近づいてきているんだから。

この時は、少なからず身の危険を感じた。突風で、何かが倒れてくるとか、飛んでくるとか。

   まだ東京駅なう。
      https://blogs.yahoo.co.jp/naokichivla/62562213.html

のほほんと突っ立っているだけでは危ない。万一の事故に対応できるように、緊張しながら立っていた。特に、顔。何かが目に当たったら大変なので、持っていたタオルで顔を覆うようにした。

角を曲がったところで、乗り場の方を見た。ずいぶん遠いなあ。

角からそこまで、やっぱり目分量で100人はいそうだ。つまり、この曲がり角が、並んだ時からほぼ半分の位置。

でも、ここに来るまでのペースからすれば、あと30分。明るい内には乗れるだろうか、と思っていた。

ところが。

ここから進まなくなった。

曲がり角から乗り場までの列の、半分くらいまで進んだのが、18:10頃、角を曲がって1時間。

タクシー待ちの行列というと、今月3日(土)、札幌ドームでの小田(和正)さんのライブ終演後を思い出す。終演からタクシーに乗るまで、ちょうど1時間かかった。

ただ、あの時は、タクシーは、次から次へと切れ目なく来ていた。

ところが、この東京駅は、タクシー自体がさっぱり来ないのだ。

まあ、この状況下だから、タクシーの台数自体が足りないのだろう。
ふだんの東京駅八重洲口は、夜などは、客待ちのタクシーが、八重洲ブックセンターから東京国際フォーラムのあたりまで、ずらっと並んでいるのだが。

それに、長距離客も多いだろうから、回転も悪いのだろう。

並んで待ちきれずに列を離脱する人も少なくなかった。
車は来ないものの、それで、列はじりじりと進んでいく。

そして、更に列が進んだところで、車が来ない理由がわかった。

今めざしている乗車プールは、北口側にある。
一方、降車プールについては、以前は、南口側にあった。客を降ろしたタクシーは、乗車プールに流れてくる、という形だった。

ところが、八重洲の再開発工事の関係で、降車プールが、乗車プールに平行する形で、外堀通り側に設けられているのだ。

だから、客を乗せて東京駅に到着したタクシーは、我々がめざしている乗車プールには入ってこない。というか、位置的に入れない。客を降ろしたら、そのまま呉服橋の交差点の方へ向かうしかないのだ。

というわけで、乗車プールに入ってくるのは、基本的に空車しかない。

これは効率が悪い。

大体、5~10分くらいに1台入ってくるか、というペースなのだ。

まあ、それ自体は我慢するにしても、腹立たしいのは、辛抱強く並んでいる我々を尻目に、その外堀通りの降車プールのところへ行って、客を降ろしたタクシーに乗り込んでしまう輩がたくさんいたことだ。

客を乗せたタクシーは、結構、いいペースでやってくる。そのたびに、駆け寄って乗ってしまう人間が後を絶たない。

タクシー側にしても、本来はそこで客を乗せてはいけないことを知っているのだろうが、群がってくる客を断って、空車で呉服橋に向かうよりは、その場で客がつかまえられる方がトクに決まっている。

これは腹が立ったねえ。

そうこうする内、19時頃だっただろうか、雨がぱたっとやんだ。
風もおさまってきた。

   もう少しの辛抱!
      https://blogs.yahoo.co.jp/naokichivla/62562367.html

身の危険を感じる状況ではなくなったので、待ち時間の心の平穏のために、ウォークマンを出した。

これが19:10。角を曲がって表に出てから2時間。

朝聴いていた、シューベルトの5番(ケルテス)の続き。C.クライバーの「未完成」。ショルティのベト8。

短めのシンフォニーながら2つ聴いても、まだ乗れない。

次は、バーンスタインの「新世界」(旧盤)。

1楽章が始まって間もなく、とうとう! 長かった長かった行列の、一番先頭に上り詰めた(笑)。

時に20:14。

しょっちゅう歩いて通っている、この八重洲口に、こんなに長時間立っているなんて、何か不思議な気がした。
大体、ここからタクシーに乗るなんてことは、まずないし。

そして、20:16、やっとタクシーの座席に身を埋めることができたのでした。

   やっとタクシーに乗れました!
      https://blogs.yahoo.co.jp/naokichivla/62562538.html

15:20 会社を出る
  ↓ 色々あって
16:40 タクシー待ちの行列に並ぶ
17:10 全体の半分まで進む      30分
18:10 残り半分の半分まで進む   1時間
20:14 乗車            2時間

東京駅から歩いて10分ほどのところにある会社を出てから、約5時間かけて、東京駅を離れた。
行列待ちは3時間半。
30分で半分進んだまでは順調だったが、残り半分の半分進むのに倍の1時間。
さらに、残り(つまり全体の4分の1)にその倍の2時間かかった。

乗って以降は順調。
湾岸習志野を下りてからの国道で、ちょっと渋滞があったが、大したことはなく、1時間足らずで帰宅。

   舞浜通過
      https://blogs.yahoo.co.jp/naokichivla/62562572.html

まあ、早く会社を出た後、あれこれ苦心したので大変ではあったが、帰宅の時間帯としては、ふだん、会社から帰るのと、大差はなかった。

   台風一過
      https://blogs.yahoo.co.jp/naokichivla/62563458.html

けさ、職場の同僚たちと、昨日の帰宅の顛末を報告し合った。

皆、相前後して退社して、ある者は埼玉へ、ある者は神奈川へと向かったが、皆、何とか帰宅はできたとのこと。

私以外の者は、皆、電車で帰れたそうだ。
動いていた最後の電車に乗れた、あるいは、いつもの路線は止まっていたので、別路線にシフトして帰ったなど、きわどい状況だったようだが。

私にしても、もう30分早く出ていたら、総武快速がまだ動いていて乗れたかもしれない。次に来る総武快速が止まった、というつまずきが、すべての始まりだったわけで、やはりこういう、予測のつく天災時には、早い行動が第一、と痛感した。

ただ、あの3月11日の震災を経験した、というのは、今回の台風においては、精神的に大きかったと思う。
同じ帰宅困難の状況に置かれて、あわてる部分は少なくて済んだ。
「あれに比べれば」というふうに思えたから。

何事も経験、とは言いたくないが・・・。

前記、札幌へ行った時も、台風接近での陸路移動を強いられた。
今年は台風被害の多い年だ。
まだこういうことがなければいいが、と切に願う。