naokichiオムニバス

68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

9月場所13日目の土俵から

隠岐の海が、栃煌山を寄り切って6勝7敗と踏みとどまった。実力者相手に、左差し、上手もとらずにどんどん出て勝った内容には、やはりスケールの大きさを感じる。
再三書いているが、相撲の型が確立してくれば、稀勢の里琴奨菊以上に安定した強さを発揮できる可能性はある。
先物買いに過ぎるとは思うが、この人の横綱土俵入りは美しいだろう、などと思ってしまった。

豊真将北太樹は、非常に見ごたえのある攻防。今日一番の相撲だったと思う。
北太樹にどちらのまわしも与えない豊真将の厳しさが光った。押し倒しで決めたところに、かつては守りの相撲と言われた豊真将の、今場所の脱皮が象徴されている。
これで東筆頭での勝ち越し。小結の阿覧が負け越しているので、初の三役昇進は確定的だ。よかった。

鶴竜は、嘉風を圧倒。突きの相撲でも強いところを見せた。7勝6敗。何としても9番は勝ってもらいたいところだ。

稀勢の里臥牙丸は、注目の一番。稀勢の里がここで負けるようでは、白鵬に失礼になる、そういうふうにみていたが、いい相撲をとった。
突き合い。離れたままで勝負をつけようとするのは、稀勢の里にとっては危ない面があると思ったが、立ち会いから押し込まれながらも、その後は盛り返しての攻防から、最後は左からあてがうようなはずで、差しながらの寄り切り。
稀勢の里はこれで2ケタ。大きな臥牙丸との突き合いを経ての貫禄勝ちを観ると、やはりこの人には地力があるのだなと思わされる。
これも再三書いているが、今場所の稀勢の里のよさは、四つにこだわらなくなったところにある。突き押し中心で、四つに持ち込んでもとれる、という相撲を基本にした方が、上をめざせると思う。
少なくとも四つ一辺倒の相撲なら、琴奨菊の方が上だ。
一方の臥牙丸も、実力者相手に、今場所の進境を存分に見せてくれた。

日馬富士は、把瑠都相手に、右上手をとって頭をつけ、相手に上手を与えない、いい形になった。本来なら、ここから右にまわって、出し投げで崩したいところだったが、把瑠都がそれをさせなかった。
把瑠都はがっちり抱き込んだ優位をいかし、上手をさぐってとって、日馬富士が左から投げにくるところを出た。
内容的には、把瑠都の完勝に近い。把瑠都も、こういう相撲がとれるなら、もう少し星が上がってもいいのだが。
日馬富士は、8勝5敗。2ケタ確保に後がなくなってしまった。

結び、白鵬琴奨菊は、横綱としては、関脇相手に連日の敗戦はどうしてもできないところ。琴奨菊としては、勝てば優勝争いで並ぶだけでなく、横綱を破っての11勝は、先場所逃した大関昇進に王手がかかる。
この一番は、内容的には琴奨菊の完勝だった。立ち会い、白鵬が、昨日の稀勢の里戦同様に、右の前まわしをとりにいき、左上手をとれぬまま寄られた、と見えた。
しかし、実はそうではない。白鵬が右前まわしをとりにいったのではなく、右からかちあげにいっている。しかし、本来左四つの琴奨菊が、それより早く左前まわしを上手側からとりにいったことで、かちあげ不発に終わった白鵬としては、右を差さざるを得なかったのだと思う。白鵬としては、昨日の反省から、稀勢の里と同じ左四つの琴奨菊に、右差しにこだわった相撲はとらない、と決めていただろうと思う。
しかし、琴奨菊がまさかの右四つ相撲にきたことは、おそらく誤算で、後手にまわったために、左の上手もとれなかった。
以後は、誰しも予想外の、右四つからの琴奨菊のがぶり寄り。
琴奨菊の作戦勝ち、という一番だ。こんな相撲は、ちょっと予想できなかった。左四つの攻防になるだろうと思っていたのだが。
語弊のある言い方をすれば、これは「奇襲」に近い相撲だ。今場所は功を奏したとしても、来場所以降、琴奨菊白鵬と五分の相撲をとれるというものでもないように思う。
ただ、白鵬側からみると、おとといの鶴竜戦も含め、3関脇との相撲内容は、どれも、1年前に連勝記録を更新していた頃の白鵬とはほど遠い相撲だ。3敗した先場所に続いて、やはり何かのかげりが見える。
尚、昨日痛そうにしていた、右ひじについては、特に支障があるようには見えなかった。


残り2日で、トップにいるとは言え、2敗というのは、白鵬としては不本意な成績だ。
残る2大関戦は、いずれも分のいい相手なので、2敗は死守してもらいたい。
琴奨菊が、それについていっての決定戦まで持ち込めるか。そこまでいければ、当然大関だが。
稀勢の里が、今場所変わった相撲で、12番までいけるかどうかも注目だ。