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68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

東京家庭裁判所の「模擬少年審判見学会」に参加

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昨19日(水)、東京家庭裁判所で行われた、「模擬少年審判見学会」に参加してきた。

「法の日」週間の記念行事として行われたものだが、私の会社では、日本経済団体連合会が10月を企業倫理月間と定めていることもあり、従業員が各種の記念行事に参加するよう、この時期には毎年呼びかけがある。

2008年、2010年にも、裁判員制度に関する行事に参加した。

   ※その過去記事
       「ためになりました 裁判員制度勉強会」
          http://blogs.yahoo.co.jp/naokichivla/56850783.html
       法の日週間行事「法廷見学ツアー(裁判員に選ばれるまで)」
          http://blogs.yahoo.co.jp/naokichivla/61688958.html

そして、今年は、東京家裁少年審判をテーマにした行事に参加したわけだが、非常に充実した勉強会で、ためになった。

参加者は54人。会社の法務担当の者も参加していた。

まず、少年審判というのがどういうものなのか、説明があった。
少年法にのっとり、犯罪を犯したりその虞がある少年の立ち直り、更正を目的として、「裁く」のではなく、教育、指導の観点から行うものとのことだった。

審判の結果として下される処分は、以下の5つ。

   最終処分 不処分
             処分を加える必要がない。厳重注意。
          保護観察
             施設収容はせず、社会の中で生活させながら、保護司が指導監督。
          少年院送致
             施設に収容して、矯正教育を受けさせる。
          検察官送致
             少年院送致では問題性が改善される見込みなし。刑事手続に乗せる。
   中間処分 試験観察
             しばらく様子を見た上で再度審判を開いて、最終的な処分を決める。

「最終処分」は、上から下に行くほど重い処分ということだ。

続いて、いよいよ模擬審判が行われた。

勉強会の会場には、裁判官、書記官、事務官、鑑別所調査官、付添人が座る席、また、少年とその両親が座る席などが設営されている。

そこに、それぞれの役を演じる人たちが入ってきて座った。

少年と両親の後ろには、鑑別所の職員役が2人。腰縄と手錠を手に持っていた。

なかなかリアルだ。

撮影が禁止されていたので、写真を載せられないのが残念。

設定は、傷害事件。高校3年の少年が、高校以外に通っている予備校の帰り、飲み会帰りの男性とすれ違う際に肩がぶつかり、路上でのやりとりの末、相手の男性を殴り倒した上に顔面を足で踏みつけたというもの。

被害者の男性は、外傷性くも膜下出血により、生涯車椅子の生活になる可能性が高い。

このような説明の後、審判のお芝居が始まった。

裁判官と少年のやりとり。
両親からの発言。
被害者の母親の発言。「できるだけ重い処分を」と求めた。
付添人(裁判での弁護士のような立場)の発言。付添人は、「保護観察」か「試験観察」を、と求めた。
鑑別所調査官の発言。

台本を見ながらということでなく進められたので、あたかも本当の審判を観ているような(実際の少年審判は非公開)気持ちになった。
被害者も気の毒だが、少年の側も、両親含めて生活のすべてが一変してしまったわけで、お互いに不幸なことだなあ、と、観ていてうるうるしてしまった。

お芝居が終わったところで、参加者が5つのグループに分かれての、グループディスカッションに移った。

座った席でグループが決まっており、私は第4グループ。

男性5人、女性6人の計11人。年齢はさまざま。ずいぶん若い人もいたが、法学専攻の学生さんだろうか。

各グループには、裁判所のスタッフが2人ついて、進行と記録をしてくれる。

第4グループの進行役についたのは、模擬審判で裁判官役を務めた方で、本職も裁判官なのだそうだ。記録係は調査官をされている方。

ディスカッション(評議)をして、グループとして、前記のどの処分が妥当かを決めなければならない。

模擬審判の間、配られたメモ用紙に、各自、論点等をメモしてあった。

まず、各自、特に重視すべき論点を出し合いましょう、ということで、端から順番に意見を述べることになった。

私は2番目。以下を述べた。

・今の審判では、日頃真面目で、暴力事件の前歴もない少年が、何故、突如として、相手の顔を踏みつけるまでの凶悪な暴力をふるったのかがわからない。
・裁判官とのやりとりでも、自分自身、かっとなって興奮したとか、細部はおぼえていないとかの話で、自己の感情を分析できていないような気がする。
少年審判が、本人の立ち直りのためにあるのなら、そうした感情のコントロールを身につけさせるべきで、それには、施設に収容するのがいいのか、保護観察止まりでもいいのか、そこが論点。
・被害者の母親の話は心に響いたが、少年審判において、被害者側の心情に配慮して処分の軽重を決めることは必要なのだろうか。

11人が順番に意見を述べた。さまざまな意見があった。

少年に同情的な意見。
少年に厳しい意見。
両親が甘いとする意見。

事件の結果の重大さは皆認識しつつも、少年の更生のための審判、というところで、それぞれに迷った感じがあった。

本件をどう評価するのか。

議論は、自然と、「保護観察」か「少年院送致」か、というところに絞られていった。

被害者が生涯車椅子ということだと、保護観察ではちょっと甘いのでは、との空気はありながら、かと言って、少年院送致でいいのか・・・?

「少年院帰り」というのは、今後の社会生活に大きいハンディキャップとなる、との意見も出た。

大勢は保護観察に傾く中、私は、少年院送致もありではないか、と意見を出した。
全体の流れから、敢えて、という部分もあったが。

趣旨としては、私はどうしても、少年の感情のコントロール、彼の心の中が気になるので、そこは、施設収容で矯正教育を加えた方が、再度の過ちを犯さずに済むのでないか、それが更正の道ではないか、というものだった。

50分の討議時間はあっという間に残り少なくなり、では決めましょう、ということで、挙手による投票。

少年院送致が2人。保護観察が9人。

ここで、保護観察に挙手した一人が、「保護観察でも、重い軽いはないんでしょうか。あるなら重いものが妥当と思います」と発言。

裁判官の方から、「そういう意味では、中間処分である「試験観察」が考えられます」との話があった。

だったらそれで、という空気になったが、時間切れで打ち切りとなった。

もとの会場に全員が戻り、各グループについた裁判所スタッフから、討議の内容と結果の報告。

第1グループ 保護観察9 少年院送致1 試験観察2
第2グループ 不処分1 保護観察7 少年院送致1 試験観察2
第3グループ 不処分1 保護観察4 試験観察6
第4グループ 保護観察9 少年院送致2
第5グループ 保護観察7 少年院送致1 試験観察1

合計 不処分2 保護観察36 少年院送致5 試験観察11 (検察官送致0)

やはり保護観察が大勢で、少年院送致は少数意見となった。
グループによっては、少数ながら不処分という人がいたり、また試験観察について、我々のグループがほとんど視野に入れぬまま終わったのに対して、それが最多意見だったグループもあったりで、色々だなと思った。

ここから、模擬審判の続き。

処分が言い渡される場面となった。保護観察だった。

模擬審判が終了し、お芝居をした人たちが紹介された。

草食系っぽい真面目そうな少年役を演じたのは、実はふだんは裁判官をされているのだそうだ。
ふだんは、少年に対して色々話す立場にあるのに、今日は審判を受ける側の席に座って、あれこれ考えさせられたとのコメントに、会場内では笑いが起きた。

少年の父親は家裁の経理課長、母親は人事部署の職員の方なのだそうだ。

それにしても、皆さん、お芝居が上手だった。おそれいりました。

最後に、現実の少年審判が行われる、審判廷の見学があった。任意参加だったが、せっかくなので参加した。

東京家裁には、9つの審判廷があるそうだ。

少年審判は非公開なので、傍聴席がない。そのため審判廷はずいぶん狭く感じられた。

案内をしてくれたスタッフの方に、参加者から色々質問が出された。

3時間の勉強会。参加してよかった。

今後もしこういう行事が企画される場合は、成人が対象となる民事調停とか、そういうものをとりあげてもらいたいと思った。