naokichiオムニバス

69歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

1月場所終了

1月場所は、生きのいい若手が個性を発揮した相撲が多く、面白い場所だったと思う。
大関5人の内、4人が2ケタ勝ったというのも、まずは上出来。その分、横綱が3敗もしたということだ。


把瑠都に優勝されたが、13日目に決められたこと、それも自分が負けてのことだったのは、この上ない屈辱だっただろう。
鶴竜に1敗した後、相撲ががらっと変わってしまった。
個人的に気になる点が2つ。
まず、時間いっぱいからの立ち会いの形。前の方がいい格好だったように思う。
それから、稀勢の里戦、把瑠都戦の、相手のかいなをたぐって勝機につなげる取り口も、この横綱に期待される内容ではない。楽な相手ではない時の余裕のなさに見えてしまう。
白鵬にとって、あの63連勝を達成した平成22年がピークで、既に下り坂に入ってはいないかと危惧する。
まだ26歳ではある。
しかし、既に優勝20回を超え、双葉山以来という稀な上にも稀な60連勝超を達成した心身の疲労は、想像を超えたものがあるかもしれない。
1敗した翌日、「追う立場はこんなに気楽なものか」と発言したことが気になった。そう思ってしまったら、トップの座は維持していけないのでは?
洋洋たる前途を期待されつつ、怪我や内臓疾患のため、思いがけぬ早さで力士人生が失速した貴乃花を思い出してしまう。
杞憂であってほしいが・・・。


優勝したいと口にして、実際に優勝したのは立派。
土俵下のインタビューで涙を見せたことを始め、喜怒哀楽の表現が率直な点は、批判する向きもあるが、個人的にはこういう力士がいてもいいのではないかと思う。
さて、3月は横綱昇進に向けた場所になる。把瑠都が、横綱にふさわしいかの話が早くも出ている。
現在の大関(昇進間もない2人は別にして)の中で、一番成績が安定して良好なのは、把瑠都だ。大関としての成績を比較すると以下のようになる。

  琴欧洲  在位36場所 2ケタ 13 1ケタ 19 休場 4 カド番4回 優勝1回
  日馬富士 在位18場所 2ケタ 8 1ケタ 9 休場 1 カド番1回 優勝2回
  把瑠都  在位10場所 2ケタ 7 1ケタ 3 休場 0 カド番0回 優勝1回

在位場所数に対する、2ケタ勝ち星の場所の率は、
  琴欧洲  36.1%
  日馬富士 44.4%
  把瑠都  70.0%
となっている。琴欧洲日馬富士が、半分以下なのは、大関としてどうなのかと言わざるを得ないが、把瑠都はそれに比べればまずまずだ。
これまでのところ、大関での休場がなく、カド番もない。
(尚、琴欧洲日馬富士とも、カド番は休場によるもので、皆勤負け越しはない)
そして、把瑠都は、これで5場所連続の2ケタだ。
安定して10勝、11勝をあげているところへ、この優勝を機に、自信や気構えの部分で何かが付加されて、もう2勝、3勝の上積みが、通常レベルになってくれば、横綱の期待は充分持てる。
確かに、稀勢の里戦での変化は横綱をめざす大関として大いに問題だし、相撲の粗さは否めない。
しかし、反面、規格外の面白さがあるとも言える。
少なくとも、ツボにはまった時の強さは随一で、この点では、上記2大関よりは大きく上回る。
横審の委員長からは、来場所連続優勝を果たしても昇進には疑問あり、との見解が出ている。
個人的には異論はない。平成以降の横綱がすべて連続優勝で昇進していることからすれば異例だが、横綱たる資格があるかどうかを、そうした外形基準だけでなく判断しようという考えなら、賛同できる。
その代わり、連続優勝でなければ昇進させない、というのもやめてほしいと思う。


覇気が感じられなかった場所。常に何か思い悩んでいるという感じだった。
精神面の問題だろうから、稽古に打ち込んで早くリセットしてほしい。


この人としてはまずまずの成績であり、内容。ただ、要するに、下位へのとりこぼしが少なかったからであって、本来それが当たり前。
負けた相撲の内容にねばりが感じられない。
結局、大関は維持できても、何度も優勝するとか、まして横綱とかは望めない人なのだと、今場所の相撲を観て、却って思ってしまった。


ひいき力士の一人なのだが、琴欧洲とほぼ同様の評価とならざるを得ない。
いい相撲はあった。しかし、結局は10勝、11勝レベルの大関だ。大関として合格点とは言いづらい。
昨年7月場所のように、体調がよく、相撲の歯車がかみあえば、単発での優勝は、今後も何度か可能だと思う。
しかし、常時12勝、13勝して、優勝をねらい、横綱をうかがうというレベルには遠い。
把瑠都には、今のところそれが期待できる。そこが違う。


大関の場所、四つにこだわらない相撲に転じたのは大いに評価できる。この人はその方が強い。先場所よりはずっといい内容だったと思う。
上をめざすにあたっての課題は、何といっても対大関戦だろう。今場所、両琴には勝ったとはいえ、琴奨菊戦はあの変化。
今や大関なのだから、同格の相手をけちらすくらいにならないと、横綱昇進は云々できない。今のままでは、大関が多いだけに、地位を維持するのがせいいっぱいになってしまう。


安定した成績で、本当に力がついたと思うが、2場所続けての10勝止まりは物足りない。
本人も言っているように、もう2つか3つは勝てた。
若荒雄戦、高安戦がもったいなかった。
とりこぼしをなくすことが急務だろう。地力や技術の問題ではなく、やはり精神面か。
白鵬を初めて破った一番は、目がさめるような内容だった。ああいう相撲が場所の内にもっと増えれば、大関は間違いない。

期待はずれだった力士

豊ノ島。星もさることながら、ぱっとしない内容だった。大関云々はちょっと厳しいか。

隠岐の海。ちょっと頭打ちの感。三役復帰、定着には、ここを一つ乗り切らないと。

豪栄道北の富士さんが言っていた通り、進歩どころか退化している感じ。幕下時代から、日本人力士期待の星だったが、三役にも定着できない現状では、この先は非常に厳しいと思う。これまでの人なのか。

豊真将。7勝8敗。この人もひいき力士の一人なので、残念。何かが足りない、という気がする。今場所の相撲は、内容的にもどこか煮え切らないものがあった。

いい相撲をみせてくれた力士

高安。負け越したものの、気力あふれる相撲は魅力。何とか伸びてもらいたい。

栃乃若。確かに大物感はある。ただ、相撲の甘さも少なからず見られる。大物になるのか、甘さを克服できない大型力士で終わるのか、今が分かれ目だろう。来場所の上位戦で、何か体得できれば。

妙義龍。十両時代の相撲は知らなかったが、新入幕の先場所、今場所と観て、非常に注目するに至った。私好みのタイプの相撲だ。場所中に書いたが、決して体格に恵まれていないことを、今後強みにできるかどうかがポイントだと思う。三役やその上が望めるかどうかはまだわからない。しかし、怪我などがなく、今のままの相撲をとりきっていければ、豊ノ島安美錦旭天鵬朝赤龍のような、うまみや味のある存在になることは、間違いない。

松鳳山。高安同様、気合い相撲が魅力。上位で通用するかどうかはまだわからないが。

栃煌山。この人としては、8枚目なら当然の成績。内容的にも、もろ差しの相撲がよく出て、本人としては納得がいったと思うが、場所中にも書いた通り、その相撲でしか勝負できないとなると、思い通りの相撲をとらせてもらえない上位では、定着が難しくなる。もろ差しへのこだわりを置いて、相撲の幅をひろげるようにしてほしいのだが。豪栄道同様、幕下時代から期待が大きかった人だけに、今のままだと少なくとも大関は望めない。

臥牙丸。今場所はいいところばかりが目立った。相手をよく見て、相手の正面で突くことができた。来場所、上位戦でどこまで通じるか。巨体で動き負けするタイプだけに、厳しいかもしれない。ただ、単なる巨漢力士ではないのでは、という期待を持たせる人ではある。

栃ノ心時天空は、星はあがったものの、特段の印象がない。

最後に。栃乃洋がとうとう引退。別にひいきにしていた力士ではないが、自分の型、味を持った力士の引退は、やはりさみしいものがある。