naokichiオムニバス

68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

若書きアーカイブ~レヴァインのマーラーNo.5きく(1980年6月15日、24歳)

※音楽雑記ノート「音楽断章」への書きつけ

声も出ないすばらしさ。レヴァインマーラーへの数々の讃辞を納得させられる。
No.3、No.1につづききくのは3曲めだが、曲がすすむたび、レヴァインならではというものを感じるようになった。

何しろ、レヴァインという人は、天才肌だ。動物的本能的野性的だ。じつに奔放。
No.1のフィナーレあたりの前進力など溜飲の下がる思いがしたものだが、じつにのびのびと思うままにやっているというかんじである。
(ダイナミックなどかなり大ざっぱだという。ブーレーズ的スコア通りの正確な演奏がはやりの今日むしろ逆行している)
ようするにC.クライバー(そしてたぶんムーティ)などと同類。

同じNo.1を小沢さんとくらべると何とも対照的。
小沢さん(たぶんアバドも)はここまであっけらかんとはできない。アホにはなれない。下品にはなれない。
小沢さんはつねに緻密で静的、端正。
No.1でいうとボストンの方がロンドンよりうまいし、鳴らせ方のバランスのよさ、全体の完成度の高さなどはるかに小沢さんの方が上。
しかし、レヴァインのこの八方やぶれのエネルギッシュさには抗しがたい魅力がある。

レヴァインはオペラ畑のせいかメロスの彫琢がかなり極端。小沢さんの方がバランスはまっとう。

レヴァイン楽天的。
No.3あたりでは、ジャケットさながらにモノクロ(アバドのNo.4のときかいたが)の感があった。
しかし今日のNo.5はすばらしい。

フィラデルフィアは上手だし、前記のレヴァインの奔放さが全曲にわたりプラスにはたらいている。
動物的というのはつまりアホというか知性がないということで、本来このまんはず。小沢さんのNo.1でこれでこの曲はいきどまったというか、申し分のないレコードが手に入ったと思った。どこからみても妥当な演奏だったから。
しかしレヴァインはその上をゆくとは思わないにしても、全く別の地点に立った名演で小沢さんにないものをもっている。

とにかくユニークな人だ。もうすこしいろいろきいてみたい。

※naokichi注;マーラーの5番では、このレヴァインフィラデルフィアの演奏が、今もって私にとってのベストワンである。またレヴァインがこの時期録音した一連のマーラーの中でも、この5番がベストワンだと思う。