naokichiオムニバス

68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

アジア・フィルハーモニー管弦楽団演奏会

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昨2日(木)、サントリーホールで、チョン・ミョンフン指揮するアジア・フィルハーモニー管弦楽団の演奏会を聴いてきた。

サントリーホールで演奏会を聴くのは、おととし7月の東京フィル以来。久しぶりだ。

事の発端は、その前日の1日(水)の夜。
夕食の最中に、会社の先輩のT氏から突然の電話。

T氏とは、私が29歳の時に現場事務所で一緒に働いたことがある。既に会社を退職され、最後に会って飲んだのは7年前。すっかりご無沙汰だった。

「お前、クラシック好きだったよな。明日の演奏会のチケットがあるんだけど、行くか」。

という話から、行かせてもらうことになったのだった。

7年ぶりのT氏とホール前で落ち合って、チケットを受け取り、入場。


日 時 2012年8月2日(金) 19:00開演
会 場 サントリーホール
指 揮 チョン・ミョンフン
管弦楽 アジア・フィルハーモニー管弦楽団
曲 目 シューベルト 交響曲第8番ロ短調「未完成」
     ベートーヴェン 交響曲第3番変ホ長調「英雄」

チョン・ミョンフンに似ていると言われたことがある私だが、実演を聴くのは初めてだ。

   ※その過去記事 「有名人に似てる似てない(私の話)2」
       http://blogs.yahoo.co.jp/naokichivla/61347092.html

アジア・フィルというのは、これまでよく知らなかったが、チョン・ミョンフンが創設したオケで、常設の団体ではなく、毎年、夏の1週間くらいだけ活動しているのだそうだ。

サイトウ・キネン・オーケストラを想起するが、サイトウ・キネンが主にソリストの集団であるのに対して、こちらアジア・フィルは、オーケストラの楽員として活動している人が集まっているところに違いがあるようだ。

メンバー表を見ると、コンマスは、フランス国立放送フィルとソウル・フィルの両方で活動しているらしい。
以下、デトロイト響、サンフランシスコ響、ベルリン・ドイツ響、ロンドン響、ヒューストン響、シュターツカペレ・ドレスデン、ロサンゼルス・フィル、N響、大阪響、ミュンヘン・フィル、東京フィル、東京メトロポリタン響、新日本フィルロンドン・フィルロイヤル・コンセルトヘボウ管、サンディエゴ響、ニューヨーク・フィルロッテルダム・フィル、九州響、仙台フィル、マレーシア・フィル等々からの参加。

韓国人、日本人、中国人が多いようで、欧米系の顔はあまりいない。

弦の編成は、メンバー表から数えると、14・14・12・10・8。

1階12列40番。

さて、当夜の演奏会、何よりプログラムが私好み。「未完成」と「エロイカ」なんて、こたえられないね。

まず、「未完成」。

1楽章は遅めのテンポ。

深沈とした感じの響きだった。
落ち着いた、よく溶け合ったオケの音。

2楽章はやや速めのテンポ。

それにしても、「未完成」という曲!

「奇跡の音楽」と言いたい。

この2楽章のピッツィカート、そしてシンコペーション、転調は。

休憩の後、「エロイカ」。

指揮者は、「未完成」の時の地味な指揮ぶりから一転、情熱的な動作に。

1楽章はとても速い。明るく、軽い響きを作った。

2楽章だけがじっくりとしたテンポで、3楽章と4楽章は、再び速くて明快な音。

弦の中では、ヴィオラだけがややくすんだ音に聞こえた。
この音楽の作り方だったら、ヴィオラももっとくっきりした音を聞かせてよかったのではないか、と思った。特に両端楽章。
(ただ、私の座った席は、上手の端、壁際だったので、外配置のヴィオラは楽器が完全に真裏になる位置関係。そのせいもあったか)

(再び)それにしても、「エロイカ」という曲!

ハイドンモーツァルトと続いてきたシンフォニーの系譜の中で、いかに破格なものだったか、と改めて思った。

同じベートーヴェンの1番、2番でも、それまでのシンフォニーに比べたら斬新きわまりないものだったはずだが、それに続くこの3番。

当時の聴衆にとっては、理解困難、消化困難なものだったのではないだろうか。
(4楽章の途中で「金を払うから、もうやめてくれ」と聴衆が叫んだという話を聞いたことがある。おそらくオーボエのメロディから後でのことだろう)

大切なのは、ベートーヴェンその人が、2番のようなシンフォニーではもはや飽きたらず、こんなに長い音楽、かつてない中身を詰め込んだ音楽を作らずにいられなかった、という点だろう。
彼の内面に、それまで存在しなかったような質量の音楽が沸き出てきた。
そして、彼の精神はそれをこぼさず、かわすことなく正面から持ちこたえ、楽譜に書きとめることができた。
そのことのすごさを、改めて思った。

例えば、曲の始め方。和音二つを打って、すぐに主題が始まるなんてアイデア、それまでの音楽にあったんだろうか。
そんな発想が浮かんだ時、ベートーヴェン自身、頭がおかしくならなかっただろうか、と私などは思ってしまう。
そうではなく、当然のように、こういうものが書きたい、こういうものでなければならない、と思ったんだろうか。
ベートーヴェンに会えるなら、聞いてみたいものだ。

二つの曲が対照的に描かれた演奏会、とてもよかったが、時々、このメンバー全員で練習する時間はどれくらいあったのだろう、と思うこともあった。

アンコールはなかった。

しかし、スタンディング・オベーション、聴衆の歓声はやまず、一旦ステージからはけたオケが再び戻り、指揮者も出てきて、全員で何度も客席に頭を下げていた。

このコンビの録音としては、ブラームスの1番が出ている。

確かに、「エロイカ」を聴きながら、このオケでブラームスを聴いてみたい、と思った。

アジア・フィルは、1日(水)福岡、2日(木)東京と、同じプログラムで演奏し、4日(土)、5日(日)の両日、ソウルで「第九」を演奏する。