naokichiオムニバス

66歳会社員。ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

ポリーニ二度目の実演を聴く

昨13日(火)、先月23日(火)に続いて、ポリーニの実演を聴いた。


日 時 2012年11月13日(火) 19:00開演
会 場 サントリーホール
曲 目 シャリーノ 謝肉祭第10番「震えるままに」
                 第11番「雨の部屋」
                 第12番「弦のない琴」
     ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第30番ホ長調
     ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第31番変イ長調
     ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第32番ハ短調
演奏者 シャリーノ ピアノ:ダニエレ・ポリーニ
            指揮:ティート・チェッケリーニ
            室内アンサンブル:クラング・フォーラム・ウィーン
            声楽アンサンブル:シュトゥットガルト・ニュー・ヴォーカル・ソロイスツ
     ベートーヴェン ピアノ:マウリツィオ・ポリーニ

前回は、初めて聴く実演でのポリーニのピアノの音が、長年録音で親しんできたものとずいぶん異なることにとまどいをおぼえた。
(21番、22番、23番のソナタだった)

   ※前回公演の記事
       http://blogs.yahoo.co.jp/naokichivla/63312086.html

我々が座ったのは、1階15列の10番、11番。
前回は、1階6列の6番、7番。
前回は、初めて生ポリーニを見る、ということで、珍しく前寄りの席を敢えて選んだ。
今回は、それよりは後方。同じく舞台下手寄りではあるが、前回よりも中央に近い。

開演直前、我々と同じ列の数人右、ちょうど中央あたりの席に、小澤征爾さんが座った。お元気そうだった。一緒にいた外国人の女性は、もしかするとポリーニ夫人かもしれない。昔音楽雑誌で写真を見た記憶がある。

さて、前半のシャリーノ作品。ポリーニの委嘱で、今年の夏にルツェルン・フェスティバルで初演されたもの。日本初演

ピアノのダニエレ・ポリーニという人は、マウリツィオと血縁関係にあるのか、と思ったが、プログラム冊子記載のプロフィルには、特に言及がない。同姓の他人か。

室内アンサンブルは、フルート、バスフルート、チェロ2、バセットホルン2、ミュートが付いたトロンボーン2、打楽器奏者3という編成。
弦楽器はチェロだけだが、音域は相当幅広く使った。

声楽アンサンブルは、女声2、男声3。

10月に聴いたマンゾーニの作品よりも、このシャリーノの作品の方を、私としては興味深く聴けた。
個々の楽器の音色の混ぜ合わせ方に、説得力のようなものが感じられた。

3曲の中では、器楽のみで演奏された、2曲目の第11番が飛び抜けて長かった。
この第11番は、時にヴェーベルンの音楽を思い起こさせられるところがあった。ヴェーベルンの作品のように全然短くはなかったが。

3曲で30分ほどの作品だった。

小澤さんと並ぶ席に座っていたのが、作曲者のシャリーノで、舞台に上がって拍手を受けていた。

さて、20分の休憩の後、ベートーヴェン。今回の4公演の中で、私が一番聴きたかった最後の3つのソナタだ。
(この3曲のプログラムは、1998年、2010年の来日公演に続いて3回目)

ステージに登場したポリーニがピアノの前に座る。
生で聴くポリーニのピアノの音に、少なからぬとまどいを感じた前回。
今回はどうだろうか・・・?

息を詰めて待つ中、30番の1楽章、ヴィヴァーチェ・マ・ノン・トロッポが始まった。
流れ出したピアノの音。
前回とは全然違う!
正直、ふうーっと、安堵した。

一つ一つの音がしっかり聞こえる。
実演会場の残響、ペダルの影響はあるものの、これなら、私のイメージにある「ポリーニの音」だ。

しかし、この違いはどこからくるのか。
やはり左寄りの前回の席と中央よりの今回の席の違いなのだろうか。
確かに、中央ではないので、ピアノの蓋に正対する席ではなかったが、そこに反響する音は聞こえたと思う。前回の席ではそれがなかったかもしれない。

それとも、ポリーニ自身の演奏が違うのか。
前回の席でこの演奏を聴いたらどうだっただろう、と何度も思った。

テンポは、3曲ともおしなべて速め。
ソナタ3つ合計での正味演奏時間は、1時間程度だったと思う。

3曲すべてすばらしい演奏だったが、31番の3楽章、「嘆きの歌」の部分で、それまでよりさらに一段ギアが上がった感じがあった。
こちらに伝わってくる「音楽の圧力」が変わったように思った。どっしりとした音楽。
フーガも力強かったが、このフーガ、聴いていて、「ミサ・ソレムニス」のアニュス・デイの途中、練習記号Nからのフーガに似ている、と思った。
これまでそういうことには気がつかなかったが、今年9月、横島勝人先生のワークショップで「ミサ・ソレムニス」を練習したことで、そんな気がしたのだ。

そして。

ベートーヴェンソナタの到達点、32番。
この演奏の、何とすばらしかったことか。
1楽章は、前回の「アパッショナータ」の3楽章のように団子に聞こえるのでは、という懸念を持っていたのだが、そんなことはなかった。
本当に力強い演奏だった。

そして、そして。

アリエッタと変奏は・・・!
言葉もない、という感じだった。
場内が、まさに水を打ったように静まりかえっていた。
ベートーヴェンの音楽。ポリーニのピアノ。

前回のステージを聴いて、正直、私はポリーニの実演を聴くのが遅すぎたか、と思った。

しかし、今回は全然違う。

この、ベートーヴェンの奇跡のような最後の3つのソナタを、ポリーニの実演で聴けてよかった、と思いながら聴いた。
時間が過ぎるのがもったいなかった。こういう演奏会はいつ以来だろう。

いやあ、それにしても、この3つのソナタ
後期のあの弦楽四重奏曲群と、まさに甲乙つけがたいものがあるなあ。

スタンディングオベーション。私も立って、感謝の拍手を送った。

アンコールはなかった。それでよかったと思う。その方がよかったと思う。

また、来年、あるいは2年後にきっと来日公演があるだろう。
是非また聴きたい。

(追記)
12月16日(日)24:00から、NHKBSプレミアムで、今回の来日公演が放映されるとの情報を得た。私が行った両日ともテレビカメラが入っていた。是非この3つのソナタは放映してもらいたいものだ。