賞の創設50周年を記念してのものだ。
1月号ということで、レコード・アカデミー賞の発表が掲載されており、レコードを買い集め始めていた私は、受賞レコードも参考にしようと誌面を眺めたものだった。
管弦楽曲部門のメータ=ロス・フィルの「春の祭典」、協奏曲部門のカラヤン=ベルリン・フィルのベートーヴェン三重協奏曲、器楽曲部門のアシュケナージのリストなどを候補として検討したのをおぼえている。
管弦楽曲部門のメータ=ロス・フィルの「春の祭典」、協奏曲部門のカラヤン=ベルリン・フィルのベートーヴェン三重協奏曲、器楽曲部門のアシュケナージのリストなどを候補として検討したのをおぼえている。
以後、高校、大学、卒業後の1980年代前半あたりまで、レコ芸は穴が空くほど読んだ。
暇だったんだよなあ。何度も何度も読み返し、何年何月号の表紙は何で、特集は何で、交響曲の月評で推薦盤になっているのは何で、とおぼえるほどだった。
大木正興氏や高崎保男氏、畑中良輔氏の月評は文章も暗記するくらい読んだものだ。
暇だったんだよなあ。何度も何度も読み返し、何年何月号の表紙は何で、特集は何で、交響曲の月評で推薦盤になっているのは何で、とおぼえるほどだった。
大木正興氏や高崎保男氏、畑中良輔氏の月評は文章も暗記するくらい読んだものだ。
だから、レコード・アカデミー賞についても、この時期のものは、何年の何部門は何で、大賞は何だったか、などもおぼえている。
特に大学時代は、親しい友人たちもレコ芸を買って読んでいたから、今年の交響曲部門は何がとるか、など予想談義をしたものだ。
特に大学時代は、親しい友人たちもレコ芸を買って読んでいたから、今年の交響曲部門は何がとるか、など予想談義をしたものだ。
そんな身なので、この冊子は非常に興味深く読んだ。
レコード専門誌3誌、「レコード芸術」、「ディスク」、「LP手帖」の批評家が選定するレコード賞として、1960年に「レコード批評家賞」が創設され、翌年から「レコード批評家選奨」に名称変更されたそうだ。
そして、1963年、「レコード・アカデミー賞」が創設される。
この冊子には、「レコード芸術」の1964年2月号から、その特集ページが復刻掲載されている。
選考委員長は村田武雄氏。
大賞が、ブリテンの自作自演、戦争レクイエム。
アカデミー賞として、ワルター=コロンビア響のマーラー1番、ロストロポーヴィチとリヒテルのベートーヴェンのチェロ・ソナタ全集、ベーム=フィルハーモニア管の「コシ・ファン・トゥッテ」が選出されている。
アカデミー賞として、ワルター=コロンビア響のマーラー1番、ロストロポーヴィチとリヒテルのベートーヴェンのチェロ・ソナタ全集、ベーム=フィルハーモニア管の「コシ・ファン・トゥッテ」が選出されている。
冊子では、この第1回から昨年の第50回までの全受賞レコードが掲載されている。
オンタイムで見てきた名盤が多数並んでいて、懐かしい。
全受賞レコード紹介の他、座談会が2つ。
まず、小林利之氏、歌崎和彦氏、諸石幸生氏による「レコード・アカデミー賞の50年」。
小林氏、歌崎氏は、第1回からこの賞にかかわっており、諸石氏は現在の選定委員長。貴重な話をされている。
それから、相場ひろ氏、満津岡信育氏、矢澤孝樹氏による「決定!ベスト・オブ・レコード・アカデミー賞」。
歴代の受賞盤から、部門ごとにベスト3を選ぶものだ。
ちなみに、交響曲部門のベスト1は、カラヤン=ベルリン・フィルのマーラー9番、管弦楽曲部門は、ブーレーズ=クリーヴランド管の「春の祭典」(CBSの旧盤)、協奏曲部門は、ロストロポーヴィチ=カラヤンのドヴォルザーク、オペラ部門は、マッケラス=ウィーン・フィルの「利口な女狐の物語」。
ちなみに、交響曲部門のベスト1は、カラヤン=ベルリン・フィルのマーラー9番、管弦楽曲部門は、ブーレーズ=クリーヴランド管の「春の祭典」(CBSの旧盤)、協奏曲部門は、ロストロポーヴィチ=カラヤンのドヴォルザーク、オペラ部門は、マッケラス=ウィーン・フィルの「利口な女狐の物語」。
今回、この冊子で読んで、そう言えばそうだった、と思わされたのは、カラヤンが大賞を受賞していない、という事実だ。
1970年代から80年代にかけて、カラヤンはレコード・アカデミー賞の常連だった。
1972年には、チャイコフスキーの3大交響曲と「マイスタージンガー」で2部門同時受賞しているし、特にオペラでは、「オテロ」の他、1978年から1981年には、「サロメ」、「ドン・カルロ」、「アイーダ」、「パルジファル」で4年連続受賞している。そして、前記マーラーも。
1972年には、チャイコフスキーの3大交響曲と「マイスタージンガー」で2部門同時受賞しているし、特にオペラでは、「オテロ」の他、1978年から1981年には、「サロメ」、「ドン・カルロ」、「アイーダ」、「パルジファル」で4年連続受賞している。そして、前記マーラーも。
「こだわりコラム」によれば、アーティスト別の受賞回数ランキングでは、カラヤンがトップ(14回受賞)。それなのに、大賞を受賞していなかったとは。
同じ時期、指揮者でレコード界の中心的存在だったのが、ベームとバーンスタイン。両巨匠は、総受賞回数はカラヤンより少ないものの、大賞は4回ずつ受賞している。
ベームは、「ルル」、「トリスタンとイゾルデ」、「ニーベルンクの指環」、ブルックナーの4番で大賞。
バーンスタインも、ベートーヴェンの交響曲全集、ブラームスの交響曲全集、「トリスタンとイゾルデ」、ベルリン・フィルとのマーラー9番で大賞。
ベームは、「ルル」、「トリスタンとイゾルデ」、「ニーベルンクの指環」、ブルックナーの4番で大賞。
バーンスタインも、ベートーヴェンの交響曲全集、ブラームスの交響曲全集、「トリスタンとイゾルデ」、ベルリン・フィルとのマーラー9番で大賞。
オペラの録音が決して多くなかったバーンスタイン(加えて高崎保男氏の受けもよくなかった)が、生涯唯一のオペラ部門での受賞で大賞となったのに、この部門常連のカラヤンが、とうとう大賞を得ずに終わった、というのは、カラヤン側から見れば無念な話だろう。
レコーディングが少ない人だった、ということはあるが、そのほとんどが、今に至っても不動の名盤とされているのに。
特に、「こうもり」や「トラヴィアータ」あたりは受賞してしかるべきだったと思うが、その年に競合盤があったということか。
特に、「こうもり」や「トラヴィアータ」あたりは受賞してしかるべきだったと思うが、その年に競合盤があったということか。
1973年度の小澤征爾=パリ管の「火の鳥」も、個人的には懐かしいレコードだ。
小澤さんは、その前年に、日本フィルを指揮した武満徹、石井眞木作品で日本人作品部門の受賞があるが、海外のオケを振って、邦人作品でないレパートリーでの受賞は、「火の鳥」が初めてだった。
ボストン響の音楽監督に就任し、世界にはばたきつつあった小澤さんの名誉の一つとして、喜ばしく思ったのをおぼえている。
小澤さんは、その前年に、日本フィルを指揮した武満徹、石井眞木作品で日本人作品部門の受賞があるが、海外のオケを振って、邦人作品でないレパートリーでの受賞は、「火の鳥」が初めてだった。
ボストン響の音楽監督に就任し、世界にはばたきつつあった小澤さんの名誉の一つとして、喜ばしく思ったのをおぼえている。
その小澤さんは、翌年、今度は日本人演奏部門で、ニュー・フィルハーモニア管との「第九」で受賞。イギリスのオケ、ソリストもすべて外国人だが、日本人演奏部門ということで、議論を呼んだものだ。
この、日本人演奏部門は、日本人作品部門ともども、その当時、日本人のクラシック音楽、現代音楽のレコーディングを奨励する意味で設けられていたものかもしれないが、日本人を別枠扱いすることの違和感は指摘されていた。
小澤さんの他、東京クヮルテットや内田光子なども、この部門で受賞しているが、後年、日本人枠でなく、通常の部門での受賞も少なくない。
日本人演奏、日本人作品とも、1998年になってやっと廃止されるが、ずいぶん長く続いたものだと思う。
この、日本人演奏部門は、日本人作品部門ともども、その当時、日本人のクラシック音楽、現代音楽のレコーディングを奨励する意味で設けられていたものかもしれないが、日本人を別枠扱いすることの違和感は指摘されていた。
小澤さんの他、東京クヮルテットや内田光子なども、この部門で受賞しているが、後年、日本人枠でなく、通常の部門での受賞も少なくない。
日本人演奏、日本人作品とも、1998年になってやっと廃止されるが、ずいぶん長く続いたものだと思う。
歴代受賞盤を眺めると、この人が1回しか受賞していないのか、という驚きも少なくない。
カラス、クーベリック、ケンプ、スターン、スウィトナー、チョン・ミュンフン、R.ゼルキン、バックハウス、ペライア、ヘブラー、マルティノン、マリナー、ラローチャ、ランパル。
カラス、クーベリック、ケンプ、スターン、スウィトナー、チョン・ミュンフン、R.ゼルキン、バックハウス、ペライア、ヘブラー、マルティノン、マリナー、ラローチャ、ランパル。
それやこれや、大変興味深い冊子であった。