naokichiオムニバス

68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

7月場所千秋楽

十両は、1敗の逸ノ城と2敗の栃ノ心が、千秋楽に対戦、栃ノ心が勝って2敗で並んでの決定戦となった。
その決定戦は、右四つがっぷりの力相撲となったが、栃ノ心が元三役の力を見せて勝った。
栃ノ心がケガから快復し、幕下まで落ちた番付を順調に戻してきているのは喜ばしいことだ。
一方の逸ノ城も、同じ日に本割り、決定戦と連敗してしまったものの、来場所は新入幕が確実だ。今場所、照ノ富士の著しい成長ぶりが印象に残ったが、逸ノ城には、さらに上には上がいると感じさせられる。末恐ろしい存在だ。

さて、幕内は、14日目が終わった段階で、
  2敗 白鵬琴奨菊
  3敗 豪栄道、高安
という展開。
白鵬が、ここに来て調子を落としている印象があるだけに、千秋楽、優勝ラインが2敗か3敗か、決定戦があるのかないのか、色々なケースが考えられる。

モンゴル出身のベテラン、旭天鵬時天空は、右四つがっぷりから、力の入った工房の末、時天空が寄り切った。
旭天鵬、6勝9敗、時天空、7勝8敗。共に幕内下位の番付で、物足りない成績だが、今場所の相撲を観ていると、2人とも少なからず力が落ちたと感じさせられた。

照ノ富士蒼国来は、立ち会いから左四つ、蒼国来が上手をとって、照ノ富士は半身の体勢だったが、蒼国来が攻めあぐねる内に、右上手をとり、後は体格の差に物を言わせた。
照ノ富士は、その非凡さを示した場所になった。上位との対戦がある来場所が楽しみだ。
一方の蒼国来は、相撲にだいぶ力強さが戻ってきたが、残念ながら負け越し。

3敗の高安は、豪風との対戦。過去1勝5敗と、高安にとっては分の悪い相手。
立ち会い、豪風が突き放して攻める。高安は差そうとしたが、豪風の厳しい攻めに果たせず、やむなく突きで応戦したが、豪風が体を開いての引き落としにつんのめった。
やはり高安に苦手意識があったか。これで、優勝争いからは脱落。

妙義龍大砂嵐は、妙義龍がじらし気味のタイミングから立ち上がると、すばやく飛び込んで踏み込みよく押し込んだ。大砂嵐は体を開いてはたいたが、妙義龍はよくこらえて落ちず、右をのぞかせながら、東土俵に一気に出た。
妙義龍は11勝。今場所は、自分の相撲が存分にとれていた。本格復活の場所になった。
大砂嵐は、勝てば殊勲賞という一番だったが、勝ち越し、三賞とも逃した。
今場所、大砂嵐への賞賛の声が多いが、私としては評価できない。あの暴力的なかちあげ、またやたらと相手の顔を張る相撲は、むしろ批判されるべきではないのか。相撲は単なる格闘技ではない。外国人力士にそのへんを教えるのは、周囲の義務だと思う。

嘉風常幸龍は、嘉風の一方的な相撲。立ち会いから突き立てて攻め込み、左から突き落とし気味に押し倒した。7勝8敗。惜しかった。
常幸龍は、まったくいいところがない相撲だったが、今場所は10勝5敗と2ケタに乗せた。この人は、デビューからの華々しい成績からすれば、入幕後はぱっとしない場所が続いていたが、やっと2ケタ勝って、来場所は上位に上がる。どんな相撲をとるか、楽しみだ。

7勝7敗と勝ち越しがかかる遠藤碧山の対戦は、遠藤が立ち会い頭で当たるも、碧山に当たり負けて、碧山の突きに一気に押し込まれて危なかったが、遠藤が体を開いて引き落とすと、これが決まった。
遠藤は、右足一本で残す危ない体勢で勝ちを拾って、舌を出した。
今場所、遠藤は期待はずれの内容。精神面で、人気につぶされている面があるか。何とか乗り越えてもらいたいところだが。

既に審判部見解から「勝てば大関昇進」の見解が出ている豪栄道は、もちろん優勝の可能性も残したい琴奨菊戦。
動きと巧さは豪栄道。今場所の迷わぬ一気の攻めが出れば琴奨菊と予想。それぞれに目指すものがかかるこの一番に、どちらが意識せず平常心でとれるかがポイントと見た。
琴奨菊がつっかけて、不成立。2回目に立つと、すぐ右四つ。琴奨菊としては、右をのぞかせる形で突きつけて出たいところだったが、豪栄道もがいい左上手をとったことで、下手をとらざるを得なかったのが、勝負の分かれ目になった。
豪栄道は、右下手もとって、さらに有利な形。琴奨菊が上手を切りにきたところを、脇を締めて上手投げでふりまわし、赤房下へ寄り切った。
これで、両者3敗で並び、2敗は白鵬だけとなった。

豪栄道は、これで大関昇進を手にしたが、私としては賛成できない。3場所合計32勝が星数として足りないということではない。また、今場所の豪栄道の相撲がよかったことは、充分に認める。ただ、この力士の相撲が完全に確立したかどうかを、もう1場所見たかった。
豪栄道という力士は、以前から器用さが災いして、自分の相撲の型が固まらないのが物足りないと思っていた。
14場所連続関脇という実績、また現在大関が2人という状況も総合的に見て、ということだろうが、だからこそ、来場所の相撲を見た上で、としてほしかったと思う。

結び前、鶴竜稀勢の里の一番は、立ち会い、鶴竜が右を差そうとしたが稀勢の里がこれを許さず、前に出ながら、自分充分の左四つに組んだ。ここまでは稀勢の里ペースの相撲だった。
しかし、稀勢の里が次の攻めに出る前に、鶴竜がすばやく右をまきかえ、もろ差し。激しく寄って出て、黒房下へ寄り切った。
鶴竜のまきかえの巧さが光ったが、これが昨日の白鵬戦に出ていたら、と思う。もろ差しから、白鵬が右をまきかえた時に、すかさず右をまきかえ返すことはできなかったものか。
鶴竜は11勝。新横綱の先場所よりは、落ち着いた相撲が目立ったが、負けた相撲に、いかにももったいない負け方が目立ったのが惜しまれる。
稀勢の里は、2ケタにも届かず。今場所の稀勢の里の相撲は、勝った相撲も含めて、内容がよくなかった。白鵬に勝った一番は、印象には残るものの、内容的には逆転勝ちであって、決していい相撲だったわけではない。

さて、白鵬にとっては、勝てば30回目の優勝、負ければ巴戦という状況での日馬富士戦。
あるいは、日馬富士が、変化などの一発勝負に行くかとも思われたが、それはなく、日馬富士としてもいい相撲をとってくれた。
立ち会いが日馬富士のつっかけで2回不成立。
3回目に立ち上がると、すぐに右四つ。しかし、先に上手を取ったのは日馬富士。上手をとると、すかさず引きつけて、出足鋭く向正面に寄って出ると、白鵬は危なかったが、必死に残した。
日馬富士は、攻めを休まず、左上手から投げてゆさぶる。白鵬は、ここまで上手に手がかからず、日馬富士の右かいなを抱える形。今場所の白鵬は、左上手が取れず、このように抱える格好になることが多い。
一時は、半身の体勢で非常に不利な状態。どこかで左をまきかえにいくかと思ったが、まきかえにはいかなかった。
日馬富士も次の攻めが出ない。あるいは、白鵬に右かいなをがっちり抱えられて、動けなかったか。
動きが止まる中、白鵬が左手を伸ばして上手をさぐり、指1本ずつ伸ばすようにして上手をとると、すかさずその上手からの出し投げ。下に打つ投げが見事に決まって、白鵬が30回目の優勝を手にした。
白鵬については、場所中に、さばいて勝とうとする姿勢が疑問であると書いた。しかし、今場所の2敗した相撲、あるいは、勝った終盤戦の相撲とも、内容を再考すると、あるいは、白鵬の力が下り坂になってきた現れかとも思った。
途中から右肘にサポーターをつけるようになったが、右腕が万全でなかった影響もあったか。このへんは、来場所の白鵬の相撲がどうなるか、注目したい。
日馬富士は、千秋楽の相撲を別にすると、今場所は、自分のパターンにはまった相撲がとれなかった。立ち会い鋭く当たって突き起こし、次の攻めを出していく、という自分のペースでの手順での相撲がどうしてもとれなかった。
2ケタには乗せたものの、来場所以降も苦しい土俵が続きそうだ。

三賞

殊勲賞 豪栄道
敢闘賞 高安
技能賞 該当なし

技能賞は、11勝の妙義龍、10勝の豊ノ島あたりでどうなんだろうか。
常連クラスだと、この程度の星では、という考えもあるのかもしれないが。

また、いつものことだが、後半戦に追い込んだ力士というのは、結果として2ケタ勝っても、なかなか三賞の候補にならない。前半に活躍して、尻すぼみになった力士の方が有利という傾向がある。
今場所だと、ともに10勝の、常幸龍荒鷲あたり、何かあってもよかった気がする。

番付予想。

十両と幕下の入れ替え。
幕下陥落は、天鎧鵬、若乃島、希善龍、栃飛龍。
十両昇進は、魁、芳東、若荒雄、北はり磨。
東3枚目で4勝の若荒雄には、甘い昇進になるが、数は合う。

幕内と十両の入れ替え。
東西の3枚目、東の貴ノ岩が12勝、西の逸ノ城が13勝と、入幕絶対確実な成績。
入れ替わりに陥落するのは、臥牙丸若の里
西筆頭で9勝の佐田の富士をどうするか。
入幕させるとすれば、東10枚目で下に7枚あって4勝の徳勝龍か、東14枚目で下に3枚あって6勝の鏡桜のどちらかを落とすことになるが。

三役。
      東       西
横綱  白鵬     鶴竜
横綱  日馬富士
大関  琴奨菊    稀勢の里
大関          豪栄道
関脇  豪風     妙義龍
小結  照ノ富士   常幸龍

関脇小結は、栃煌山安美錦、碧山の陥落と、豪栄道大関昇進で4枠全部が空く。
幕内上位で好成績の力士の中から、豪風、妙義龍は文句のないところ。
東6枚目で9勝の照ノ富士も、ややラッキーだが、新三役。
もう1人をどうするか。
西5枚目で8勝の遠藤か、西7枚目で10勝の常幸龍のどちらかだろうが、まあ、常幸龍か。