naokichiオムニバス

68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

シベリウス「クッレルヴォ」演奏会

一昨日3日(火)、すみだトリフォニーホールで行われた、シベリウス「クッレルヴォ」の演奏会(日本シベリウス協会主催)を聴きに行った。

これで、3週連続で火曜日の夜に演奏会に出かけたことになる。
(今月は、来週以降、火曜日ではないが、あと3つ演奏会の予定がある)

自分でも意外に思うが、すみだトリフォニーホールで演奏会を聴くのは初めてだ。

錦糸町の駅から近くて便利。

東京スカイツリーが、こんなに近くに見える。

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素敵なホールだと思った。

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●日本シベリウス協会主催 シベリウス生誕150年シリーズ KULLERVO

日 時 2015年3月3日(火) 18:10開場 19:10開演
会 場 すみだトリフォニーホール大ホール
指 揮 新田ユリ
独 唱 駒ヶ嶺ゆかり(メゾ・ソプラノ)、末吉利行(バリトン)
合 唱 Finlandia男声合唱団LauluMiehet
     合唱団お江戸コラリアーず
合唱指揮 マッティ・ヒュヨッキ
管弦楽 アイノラ交響楽団
曲 目 シベリウス クッレルヴォ
     シベリウス フィンランディア(合唱付き)
     [アンコール] シベリウス 舟旅

指揮の新田先生は、日本シベリウス協会の会長である。

個人的には、以前、一度だけ練習をつけていただく機会があった。

   ※一発オケの思い出③~「兼松講堂リニューアル記念コンサート」(04年6月)
       http://blogs.yahoo.co.jp/naokichivla/34589780.html

(ついでに記せば、今回の演奏会のプログラムに、アイノラ交響楽団の合奏指導としてお名前が載っている、指揮者の佐伯正則先生は、新田先生のお弟子さんだが、その佐伯先生には、浦安オケで過去2回、本番(マーラー1番、ドヴォルザーク7番他)を振っていただいたことがある)

また、アイノラ交響楽団とは、その創生期に、一度だけ参加させていただいたことがある。

   ※一発オケの思い出②~シベリウス交響曲を演奏する会(01年10月)
       http://blogs.yahoo.co.jp/naokichivla/34589605.html

新田先生が指揮をされる演奏会、そしてアイノラ交響楽団の演奏会を聴くのは初めて。会場も含めて、初めてづくしの演奏会となった。

18:40からプレトークがあると聞いていたので、早めに会社を出た。
18:10の開場直後にホールに到着。当日券を買い求めた。全自由席だ。
2階の最前列、中央寄りの16番に座った。

18:40から、合唱指揮のマッティ・ヒュヨッキ氏と、今回の合唱指導の松原千振氏がステージに登場し、プレトークが始まった。

ヨーロッパでは、フランス革命後に、スイス、ドイツ、スウェーデンフィンランドなど、各地で男声合唱の文化が発展した。
ヨーロッパでは、大学の合唱団が合唱文化の発展に貢献したが、日本の大学の合唱団と異なり、現役の学生で構成されるのではなく、卒業してからも、10年、20年とその合唱団で歌うのが特徴。
シベリウスも、若い頃から男声合唱の曲を書いていた。
フィンランドは、帝政ロシア支配下にあり、ロシアの合唱音楽の伝統を受け継ぐ形であったが、ロシアは、フィンランドが独自の音楽の世界を作ることを容認しており、政治的に独立はしていなかったものの、自由が与えられていた。
そうした中、フィンランド叙事詩「カレワラ」は、フィンランドの合唱音楽の発展に貢献する役割を果たした。
日本で、北海道のアイヌの「ユーカラ」も、歌で伝承された叙事詩という点で、共通点がある。
「クッレルヴォ」は、シベリウス26歳の時の作品で、フィンランドの合唱音楽が、独自の世界を確立する転換点になった。

そんな内容のプレトークだった。

このプレトークは、フィンランドの言葉で語られたものと思われるが、「クッレルヴォ」の発音は、頭の「ク」にアクセントが置かれる(「ク」が一番高い)。
同様に、「Sibelius」も、頭の「シ」にアクセントが置かれる。日本人は、普通、「シベリウス」と言う時に、「ベリ」が高くなるが、「シ」が一番高い。
そうなんだ、と思った。

さて、そんな話を聞く内に開演時刻が迫った。

フィンランドと日本の合唱団の混成による合唱が入場し、オケが入場。

ところで、この「クッレルヴォ」という曲、個人的にはほとんどこれまでなじみがなかった。
作品の存在は知っており、CDも、ベルグルンド=ヘルシンキ・フィル、コリン・デイヴィス=ロンドン響のものを一応持ってはいるが、それらもせいぜい2、3回聴いた程度。

今回、聴きに行ったのは、先月の札幌交響楽団の演奏会(交響曲第5番、6番、7番)のように、好きな曲だから、というわけではなく、めったに実演で聴けない作品だから、だった。

プログラムに、この作品に歌われる、「カレワラ」の中の「クッレルヴォの悲劇」の解説が載っていたので、読んだが、いや、何だかすごい話だな。
親を殺された復讐、妹との近親相姦、そして自殺。
シベリウスは、何でわざわざこの題材で音楽を作ろうと思ったんだろう。クッレルヴォって、必ずしも英雄でもなさそうだし。

第1楽章。

冒頭部分を聴いて、何だかNHKの大河ドラマのテーマ曲みたいだな、と思った。
しかし、曲が進行する中で、自分が日頃なじんでいる、シベリウスその人の音楽も、垣間見えてきた。

第2楽章。

冒頭、弦で奏でられる音楽は、しっとりしているようであり、あっさりしているようでもあり、何か面白いテイスト。
どこか、人間が歌っている歌のような感じを受ける。
この楽章も、やがてまぎれもないシベリウスの世界が開けてくる。

2楽章の途中で、5連符のようなリズム(正確には6連符で最後の6つ目が休符)が何度も出てきた。印象に残る音型だ。

2楽章が終わったところでチューニング。ソリストが入場した。

新田先生のスコアは、3冊か4冊に分かれている巨大なもので、ここで、譜面台の脇の椅子に載っていた2冊目のものが譜面台に置かれた。

第3楽章。

5拍子の音楽だ。
前記の、2楽章の5連符風の音型、そして、この曲全体が5楽章で書かれていることも併せて、シベリウスは、「5」という数字に何か意味を見いだしたのかな、と思ったりした。

この楽章で、初めて合唱が使われるが、フィンランド、日本の合同の合唱団が歌い始めた途端、そのすばらしい迫力に魅せられた。
実に力強く、美しい男声合唱だ。

次いで、ソリストが交互に歌う。ソリストが登場するのは、この楽章だけだ。

第4楽章。

冒頭のメロディは、ヴィオラが奏でていく。他の弦は休んでいる。
この楽章は、ちょっとロシア的な印象を受けた。ボロディンのようだと思った。

そして、最後の第5楽章。再び合唱が使われる。

1楽章で感じたような、大河ドラマテーマ曲風の音楽が、ここで戻ってくる。
4楽章、5楽章は、非常に劇的な音楽で、その意味では、日頃なじんでいるシベリウスの音楽とは、少し違った感じを受ける。
曲の最後は、まさしくドラマか映画の最後のような終結だった。

初めて実演で聴いた「クッレルヴォ」。

正直、よくわかった、とかとても気に入った、というわけではない。
しかし、ここから、シンフォニーの1番、2番を経て、色々なものをそぎ落としながら、最後にあの7番や「タピオラ」に行き着いたのだ、と思いながら聴けたことは、大変貴重だった。

シベリウスの創作の道のりの、入口を知ることができた思いがした。

休憩のないこの演奏会、大作「クッレルヴォ」が終わって、カーテンコールの後、プログラムの2曲目の「フィンランディア」が演奏された。
ソリストの二人も、合唱団の下手側に立って、合唱に加わった。

「クッレルヴォ」とはまったく対照的に、「フィンランディア」は、もうなじみきった曲だ。何十回、何百回と聴き、自分でも一度ならず演奏している。

そんな「フィンランディア」が始まって、どことなくほっとするものがあった。

この曲でも、合唱はとてもすばらしかった。

   ※オーケストラデビュー曲~「フィンランディア
       http://blogs.yahoo.co.jp/naokichivla/64733539.html

再度のカーテンコール。

合唱指揮のヒュヨッキ氏が指揮台に上がり、アンコール曲を演奏した。オケなしでの、アカペラ。
プレトークの中でも話題になっていた、「舟旅」という曲だった。「クッレルヴォ」初演の翌年の作品とのこと。

ロビーで、渡邉暁雄氏の「クッレルヴォ」のCDが販売されていたので、買い求めた。

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金子建志氏の姿を見かけた。金子氏、新田先生、佐伯先生は、先日の札幌交響楽団の演奏会の際、サントリーホールでお見かけした。

アイノラ交響楽団は、4月に行われる定期演奏会で、この「クッレルヴォ」を演奏する予定と聞く(杉並公会堂)。
プログラムは、「フィンランディア」に代えて、「カレリア」組曲
また、合唱団は、日本の「お江戸コラリアーず」単独になるようだ。

※アイノラ交響楽団Webサイト
    http://www.ainola.jp//