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パーヴォ・ヤルヴィ=N響 ウエスト・サイド・ストーリー

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今日6日(火)は、午後半休を取って、オーチャードホールへ。

パーヴォ・ヤルヴィN響の「ウエスト・サイド・ストーリー」を聴くためだ。

バーンスタイン生誕100周年の今年は、バーンスタイン作品をプログラムに組む演奏会がいくつもあるが、これはその代表的なもの。

4日(日)と今日の2回、いずれもマチネ公演で、日曜日はオケ練に重なり、今日は当然会社、という中、オケ練は休まず、会社の方は半休を取るという(笑)、誠に思い切った技に出ることにして、チケットを確保。

プログラム冊子に書かれているのを読んで、そうだったか、と思い出したのは、1990年7月、バーンスタインロンドン交響楽団と来日し、最後に演奏会を行ったのが、ここオーチャードホールだったというエピソード。

そして、今日の指揮は、バーンスタインに師事したパーヴォ・ヤルヴィ

平日のマチネにも拘わらず、ほぼ満席。終演後、Facebook上で、複数の知人が私同様、休暇もしくは早退で同じ会場にいたことを知った。

「ウエスト・サイド」は、昨年7月に、同じ渋谷の東急シアターオーブで、ブロードウェイ・ミュージカルとしての上演に接した。
(昨年7月には、大阪のフェスティバルホールで、「ミサ曲」の貴重な実演にふれる機会も得られた)

今回は演奏会形式での実演である。

ステージ上にオーケストラが並び、ステージ前面にスタンドマイクが6本立てられ、歌手が両袖から出入りして歌う形だ。下手側がジェット団、上手側がシャーク団。

やはり、ミュージカルの上演に比べると、ダンスがないのはいかにも物足りないし、芝居らしい動作に乏しいのは仕方がないにしても、台詞が相当省略されているので、ストーリーを充分に理解することも難しい。

私にとっては、ミュージカルとしての舞台の方が、ずっと十全に楽しめたが、今回の演奏会形式も、さすがにヤルヴィ=N響だけあって、演奏会として見た場合には、もちろん満足できるものだった。すばらしかった。

やはり、バーンスタインの作る音楽の、リズム、ハーモニー、メロディの魅力は絶大なものがある。

冒頭に出てくる、増4度の音型が、「マリア」や「クール」でも繰り返し出てくる重要なものであることを、改めて強く感じた。

不安定な増4度は、「トゥナイト」では4度に転じ、安心感を与えてくれる。

この「トゥナイト」、ヤルヴィはin2で振っていた。

アメリカ」は、一連のナンバーの中でも屈指の傑作だと思うが、めまぐるしい転調に、ベートーヴェンの「エンペラー」の3楽章を思い出した。

1幕後半の、五重唱による「トゥナイト」は聴き応えがあった。「Tonight」という言葉が、トニーとマリアと、他の若者たちとでは、違った意味で用いられ、歌われる音楽そのものも性格が異なる。この二元的な見事な作り方は、バーンスタインが、例えばモーツァルトのオペラなどから発想したものだろうか。

1幕の最後、決闘の場面は、舞台上には歌手が不在の状態で、オケのみでの演奏。演奏会形式とは言え、多少の演技的な動作があってもよかったように思った。この場面に限らないが。

2幕は、1幕に比べると約半分の長さしかなく、ちょっと物足りないが、「クラブキ巡査」のように、いかにもミュージカル、と言ったわかりやすい音楽があるかと思えば、しっとりあるいはしんみりさせる音楽もあり、アヴァンギャルドな響きも出てくるし、中身は濃い。

フィナーレの最後、和音は解決しない。

初演当時、ブロードウェイ・ミュージカルで、ハッピーエンドで終わらないこの作品は、きわめて異色なものだったそうだが、音楽としても、解決しないままのコーダは、さぞ衝撃的だっただろう。

タイプの異なる2つの実演で、「ウエスト・サイド」を観られたことは、貴重で幸せな経験だった。

8月には、映画「ウエスト・サイド物語」に、佐渡裕=東京フィルがオーケストラの生演奏をつける上映が行われる。このチケットも手に入れたいものだ。

※過去の関連記事
    ブロードウェイ・ミュージカル「ウエスト・サイド・ストーリー」
       https://blogs.yahoo.co.jp/naokichivla/65815859.html
    初めてのフェスティバルホールバーンスタイン「ミサ曲」<1>
       https://blogs.yahoo.co.jp/naokichivla/65802825.html
    初めてのフェスティバルホールバーンスタイン「ミサ曲」<2>
       https://blogs.yahoo.co.jp/naokichivla/65802827.html