若き前橋さんが海外に勉強に行かれる時に、齋藤秀雄氏から、「人と比べてはいけない」と言われた、とのエピソードが印象に残った。
自分の生活を顧みると、例えば会社の仕事でのストレスの多くは、誰かと自分を比べて、自分の方が劣っている、あるいは優れているとかの意識(価値観)にとらわれている時に感ずるものだ。
これは、仕事に限らず、例えば趣味のオケ活動でも同様だ。
このことに関する答えは、わかっている。
人生のどんな場面にあっても、自分としては自分になしうる最善を尽くすしかない。それだけで良い。それ以外の道はない。
自分の力以上のことはできないのだから。出し惜しみをしたり、出し切れなかったりすることは避けたい。
そう割り切れば、人と比べる必要などはない。常に最善を尽くしている自覚さえ持てれば、それで良いはずだ。
そこに、人は介在しない。
答えは明快だ。わかっている。
しかし、人間、やはりそうはいかないものだ。少なくとも私は。
気がつけば、人と比べ、結果や評価を気にする自分が、そこにいる。
齋藤氏は、きっと、自分でもそんな悩みや葛藤を経験した末に、旅立つ前橋さんにアドバイスしたのだろう。
私も、企業人として、家庭人として、アマチュア奏者として、「最善を尽くしている自分」でいられるようでありたい。
ゆうべ、来年1月に行われる、前橋汀子カルテットの演奏会チケットを、ネット予約した。
曲目は、ベートーヴェンの8番と14番。楽しみだ。