naokichiオムニバス

68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトⅩⅦ 「カルメン」<2>

今回の音楽塾の公演日程は、こうなっている。

3月15日(金)    ロームシアター京都
  17日(日)    ロームシアター京都
  21日(木・祝)  よこすか芸術劇場
  24日(日)    東京文化会館

小澤さんとクリスティアン・アルミンクが分担して指揮するとインフォメーションされていた。

近年の小澤さんの状況から、それはやむを得ないとしても、せめて最後の第4幕くらいは振ってほしい、と思っていた。

(前回行った2015年の音楽塾の時は、前半のベートーヴェン2番をナタリー・シュトゥッツマンが指揮したが、後半のラヴェルは小澤さんが全曲振った)

しかし、京都2公演の初日、15日の様子が報道されたところによると、小澤さんは「冒頭の3分半」を指揮した、とのことだった。

3分半。冒頭の、というからには、前奏曲部分だけなのか。

2017年、水戸室内管弦楽団の第100記念定期演奏会で、ベートーヴェン「第九」を全部は振れず、後半の3、4楽章だけ指揮したとの情報はショックだったが、まさか3分半とは・・・。

いや、それよりも、場合によっては、15日の指揮で疲労がたまってこの日は振れない、ということもありえない話ではない。

ともかくキャンセルせずに3分半であっても振ってくれれば、と願うしかなかった。

幸い、会場に着いて、「演奏者変更のお知らせ」と言った掲示は目にふれなかったので、出ては来てくれるのだろう、と思いつつ開演を待った。

ピットのオケは、見切れもあるので正確にはわからないが、12型か。メンバーはやはり若い。

パンフレットに、「塾生」として、歴代のオーケストラメンバーのリストが載っている。ヴィオラでは、今やプロオケのトップを務める鈴木康浩氏や須田祥子さん、昨年浦安オケで分奏の指導をいただいた村松龍先生の名前がある。マウントあさま管弦楽団ブラームスのヴァイオリン・コンチェルトを共演した、城代さや香さんも載っている。

皆さん、ここから巣立ったのだ。

ピット中央に、譜面台とスコアが2つ並んでいる。

アルミンクが先に、その後に小澤さんがつく形で入場。客席から向かって、上手側にアルミンク、下手側に小澤さん。

オケも全員起立して、指揮者と共にお辞儀をした。

小澤さんが前奏曲を振り始める。往年と変わらぬ指揮ぶり、力強い音楽だ。

しかし、3拍子の「運命のテーマ」の前奏曲までで、小澤さんの指揮は終わった。

椅子に座っていたアルミンクが立ち、1幕が始まった。

小澤さんは椅子に座り、スコアをめくっている。場合によっては、何か必要な指示を出したりしていたかもしれない。

(前日の16日(土)、NHKの朝7時のニュースで、この京都公演に向けてのリハーサルの模様を特集していた。その時も、指揮者が2人並んでいた)

舞台装置は本格的、具象的なものでよかった。2010年に、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で同じ「カルメン」を観たが、もっと抽象的な装置だった。やはり、その後、新国立劇場で2回観た公演や、この日の公演のように、リアルな方が良い。


レシタティーヴォでなく台詞でつなぐ形で進行した。

デイヴィッド・ニースの演出は、細かな工夫が色々あり、その意図に納得させられた。以下「・」印で記す。

・1幕、ホセとミカエラのやりとりを、カルメンが見ている。
・1幕、カルメンが逃走するところを、ミカエラが見ている。2人の女の恋敵関係を強調。

1幕が終わり、指揮者2人は退出。

さて、2幕以降も小澤さんは振らないにしても、ピットには出てくるんだろうか、と思ったが、出てきたのはアルミンクだけだった。

2幕冒頭のジプシーの歌は、やっぱり盛り上がる音楽だ。ふと、ラヴェルの「ボレロ」を思い出した。

カルメンは真っ赤なドレス。

・2幕の終わり、軍への復帰がかなわなくなったホセが軍服を脱ぐと、カルメンが別の服を着せる。

今回の公演でのカルメン、ホセは、2017年の音楽塾の時と同じ歌手。

音楽塾が初めてでないにしては、サンドラ・ピクス・エディのカルメンの歌は、1幕での登場後、最初の内、しっくりこなかった。「ハバネラ」、あるいは「セギディーリャ」は、テンポが遅すぎたように思う。

しかし、その後はめざましくよくなり、この2幕ではすばらしい歌だった。他のどの歌手もすばらしい出来だった。

・3幕、暗がりの場面だが、カルメンに赤い服を着せて、所在をはっきり示している。
・3幕の最後、迎えに来たミカエラと共に帰郷するホセに対して、カルメンがあざ笑いながらも途中から泣く。これに先立つカード占いの結果と併せ、これで本当にホセと自分の運命が決まった、ということか。

4幕は、「アラゴネーズ」で始まるものと思ったら、いきなり闘牛場前の広場の喧騒で始まった。しかし、その後に「アラゴネーズ」がダンス付きで演奏された。

・4幕でのカルメンは、白いウェディングドレス風の衣装。
・4幕、闘牛士らの行列の際に、赤いテープが群集から投げ入れられ、それがステージ床にひろがっていたが、大詰めで刺されたカルメンが倒れると、赤いテープがあたかも血のように見えた。
・ホセは、最後に射殺される。

非常に見ごたえ、聴きごたえのある演奏だった。

歌手もよかったし、若いオケもプロオケではないにも拘わらず、とてもよかった。

それにしても、やはり「カルメン」というオペラはすばらしい。何度観ても飽きない。

2009年12月の浦安市民演奏会で、一部の曲を演奏したことがある。カルメンは郡愛子先生だった。一度、全曲を演奏してみたいものだと思うが、何とかそんなチャンスはないものだろうか。

カーテンコールの最後に、小澤さんも登場。スタンディングオベーションとなった。我々も立った。

18:44、終演。

20:08の新幹線に乗らないといけないので、京都駅へ急いだ。

イメージ 1


<追記>
小澤さんはその後体調を崩され、21日の横須賀、24日の東京の公演を降板された。快復を切に願うが、厳しいかもしれないとも一方で思う。

※3月16日(土)にNHKテレビで放映された内容
    https://www.nhk.or.jp/ohayou/digest/2019/03/0316.html