不案内な作品だったが、実にすばらしかった。


プログラム冊子から。




浦安オケでお世話になった方が、3人関わられている。指揮者の矢澤定明先生が、合唱指揮。また、別のページには、副指揮者が2人載っている中に、トレーナーとしてご指導いただいている、石川さゆりファンの松川智哉先生。そして、以前、グリーグのコンチェルトのソリストをお願いした白石准先生。白石先生は、一昨年の「ミサ曲」、「ウエスト・サイド・ストーリー」でも演奏されていて、バーンスタイン作品の常連のようだ。

私の席は、3階1列20番。ステージ、ピットが俯瞰できる最前列ほぼ中央。
そして、早めに席に着いて、プログラム冊子の解説を読む。
開演。
最初の「ニューヨーク、ニューヨーク」くらいは、さすがに知っている。スムーズに入れた。
冒頭から、めまぐるしい舞台転換。わかりやすくて効果的だ。
続く、ヒルディとチップのタクシーのくだりは、誠に秀逸な音楽。楽しい限りだ。
博物館の場面、クレアとオジーのデュエットも良い。
そして、ゲイビーのアリア「寂しい町」は、一転してしんみり。
三者三様、タイプの異なる音楽が配されて、味わい深いものがある。
その後、曲目解説では、ゲイビーが女子高生と踊るとされているダンスの場面、ゲイビーとは別の水兵の男性が踊った。ゲイビーの心象風景ということなのかもしれないが、ステージ上に水兵が2人いる形になり、ちょっと飲み込みづらかった。
カーネギー・ホールでの声楽レッスンの場面。マダム・デイリーが、「ワルキューレの騎行」を歌いながら登場したが、これはオリジナルなのだろうか。あるいは、ヒルディの名前がブリュンヒルデもどきであることからの演出?
それはともかく、ここでのレッスンのくだりは面白くて笑える。
このくだりや、2幕でのコニーアイランドなど、ビジュアル的には、結構エロいところが目につく。これは、今回の演出上の意図なのか、もともとそういう作品なのか、どちらだろう。
主役の水兵の、たまの上陸休暇で、女性とのアバンチュールが第一、というストーリー設定は、やはりこの作品が制作された戦時中の空気を反映しているかもしれない。観ながらそんなことを考え、さらに従軍慰安婦問題までが頭をよぎった。
1幕終盤、ゲイビーの「僕が僕でよかった」は、「寂しい町」ともども、彼の人物を理解させる良いアリアだと思った。
25分の休憩の後、2幕。
2幕は1幕に比べるとずっと短い。物語が一気に進んでフィナーレに至るたたみかけは、意図的な作りなのかもしれない。
ダイヤモンド・エディーズ、コンガカバーナ、スラム・バンク・クラブと店がどんどん変わっていく一連の場面は、このミュージカル全体の中でも、とりわけ面白い。そのたびに繰り返されるクレアとピトキンのからみには、客席から笑いが起きた。
この中で、一同がゲイビーを励ます「私がついている」は、圧巻のアンサンブルナンバー。名曲だと思った。
そして、何と言っても、コニー・アイランドへの地下鉄で歌われる「いつかきっと」は、さらにすばらしい音楽だ。何度も出てくる、「Oh,well」のメロディラインとリズムが、何とも魅力的だ。「ウエスト・サイド」で言えば、「サムホエア」にあたるナンバーと言えるだろう。うるっとさせられる。
コニー・アイランドで、事態が一気に収束し、それぞれがそれぞれの場所に納まったところで、船の前で「ニューヨーク、ニューヨーク」が歌われるフィナーレ。
24時間が経過したストーリー的にも、また、音楽的にも、「ダ・カーポ」に至った、ということだ。この構成には大変説得力を感じた。
事前予習はハイライト盤だけだったが、こうして全曲を、視覚を伴う形で鑑賞することができて、本当に貴重な経験だった。
なじみがなかったこの作品だったが、わかりやすく、初心者でも充分楽しめた。
こうなると、是非とも一度「キャンディード」の実演を観てみたいと思う。そんな機会があるだろうか。
バーンスタイン本人が指揮した演奏はどんなだったんだろう、と思った。
※「いつかきっと」の色々なバージョン。バーンスタインのピアノと歌も聴けます。
(一部リンク切れあり)
http://www.yokozuka.net/yokozukahc/Blog/entori/2010/12/30_basukia%2Cmairusu%2Cbansutain.html
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