9日(土)、すみだトリフォニーホールで行われた、井上道義指揮新日本フィルハーモニー交響楽団のマーラーの3番を聴きに行った。
今年いっぱいでの指揮者引退を表明されている井上さんの演奏会を聴く機会は残り少なくなってきた。
昨年11月に読売日本交響楽団を指揮したマーラーの2番を聴いた。
その後、この3番の演奏会の情報を得て、マーラーのシンフォニーの中で一番好きな曲でもあり、これは聴き逃せないとチケットを買い求めた。
井上さんの演奏会については、31日(日)に行われる千葉県少年少女オーケストラの定期演奏会に行く予定にしている(それに先立つ公開リハーサルも聴きに行く)。
すみだトリフォニーホールへ。
ホール入口の柱に佐渡裕さんとオーケストラの集合写真がある。
昨年亡くなられた桑田歩先生がまだここにおられる。
●すみだ平和祈念音楽祭2024 井上道義&新日本フィルハーモニー交響楽団
日 時 2024年3月9日(土) 14:15開場 15:00開演
会 場 すみだトリフォニーホール大ホール
指 揮 井上道義
メゾ・ソプラノ 林 眞暎
管弦楽 新日本フィルハーモニー交響楽団
曲 目 マーラー 交響曲第3番ニ短調
プログラム冊子から。
指揮者と曲優先で行くことを決めたため、今回の演奏会に「すみだ平和祈念音楽祭」のタイトルが冠されていることには気づかないでいた。
すみだトリフォニーホールでは、1997年の開館以来、東京大空襲があった3月10日前後に、平和の祈りを発信すべくこの音楽祭を開催しているのだそうだ。知らなかった。
私の席は3階4列15番。ステージ全体が俯瞰できる良い席だった。もう少し前の列だったらもっとよかったが。
前の席の人がちょっと前のめり気味だったので、頭が邪魔になって最初の内は指揮者が見えづらかった。途中から前の人の姿勢も安定したので、見えるようになった。
オケは14型。
対向配置でヴィオラが下手側に座るのは、読売日本交響楽団との2番でも同じだったので、井上さんのマーラーの流儀なのだろう。
女声合唱は最初から入場して座った。
1楽章の途中、行進曲の部分で、弦各パートの表の奏者が休み、裏の奏者だけが弾いているところがあるのに気がついた。実演で何度か聴いているが、これは知らなかった。
長い1楽章が終わったところで、井上さんは指揮台脇の椅子に座った。
(これはスコアに指示があるんだったか。昔(確か1983年)、小澤(征爾)さんが新日本フィルを振った時にも、ここで椅子に座って長い間を置いた)
チューニングがあって、第2楽章が始まった。
ソリストはいつ入ってくるんだろう、と思いながら聴いた。
「第九」などでは、3楽章の前にソリストや合唱が入場することが多いが、拍手も出るし、どうも場の緊張がとぎれ、雰囲気が損なわれる面がある。
この3番も、ソリストが歌う4楽章は静かに始まるので、その前に入場して拍手が出るのは避けてもらいたいところだ。
マーラーでは、昔、若杉弘が指揮する2番の時、3楽章の途中、tuttiの強奏になったところで2人のソリストが入場して座ったことがあった。拍手の余地はなく、良い方法だと思った。今でも記憶に残っている。
もし同じ方法をとるなら、3番でも3楽章の途中でできるな、と勝手に思っていたのだが、その3楽章はどんどん進む。やっぱり楽章間で、かな、と思ったら、楽章がもう終わろうというところのtuttiで、ステージ上方のオルガンの両脇に児童合唱が入場、そしてソリストも出てきてその中央に座った。
4楽章でちょっと残念だったのはハープ。これは個人的な好みだが、途中に何度か鳴らされる高い音。これはもっと強く、こちらの耳に刺さってくるようにはじいてほしかった。
5楽章が始まって気づいたが、チューブラベルは児童合唱の脇、下手側に置かれていた。最初、テンポが安定しなかったのが残念。
それにしても、この3番、何度聴いても良い曲だと思う。
マーラーの様々な魅力が詰まっているように思われるのだ。
長く充実した1楽章がまずそうだし、続く2つの楽章も、メヌエット的、またシニカルなスケルツォ的で個性的だ。
そして声楽が入る2つの楽章。深沈とした4楽章から、一転して天から光が差すような5楽章(今回は、上方に位置する児童合唱が歌い出すと同時に照明があたったので、特にそんな感じが強まった)。
何より、清澄そのものの6楽章。同種の楽章としては、9番の4楽章も確かにいいが、私としては断然3番の6楽章だ。
(昔から、自分の葬儀の時には、この6楽章を流してほしいと思ってきた。4、5楽章を加えてもらうのもいいな。火葬の最中は2番の終楽章。いずれエンディングノートに記して、ディスクも用意しておかねば)
その6楽章、井上さんのテンポは私には速すぎると感じられた。この楽章は、ゆっくりしたテンポの方がいい。井上さんは、4分の4のこの楽章を、2分の2のように感じさせるテンポであり呼吸だった。
そこは不満に感じつつも、最後のDdurの和音が鳴り終わってホールの空間に散って行った後まで拍手が出なかったのは、さすが井上さん。拍手を封じるような指揮動作であり、何よりそういう音楽だった。
長いこのシンフォニーを聴きながら、桑田先生が存命であれば、このステージで弾かれていた(たぶんトップとして)はずだ、としみじみ思った。本当に残念だ。
カーテンコールは撮影可、との紙がプログラム冊子にはさみこまれていた。
バンダのポストホルン奏者。
好きなこの3番、一度弾いてみたいものだ。4楽章から後でいいな。もっとも難しいんだろうから、弾けるかどうかそもそもわからないが。
(そう言いつつ、6月には9番を弾く予定あり)
※井上道義さんのブログから。6楽章のテンポには意図があったようだ。
www.michiyoshi-inoue.com
※過去の関連記事
マーラーの交響曲とのつきあい
https://naokichivla.hatenablog.com/entry/18281569
【音楽のリレー】<第3日> マーラー 交響曲第3番ニ短調
https://naokichivla.hatenablog.com/entry/2020/06/07/193955