11月場所11日目

鶴竜は終盤に入って疲れてきたか。潮丸のはたきにねばりなく落ちた。

玉春日に春日王。ＮＨＫの放送の画面左上に出た｢玉春日－春日王｣の表示が、しりとりか回文のようで可笑しかった。
相撲は、玉春日がもろ差しからの寄り。

垣添がいい動き。朝赤龍に押し込まれたがよく残し、土俵際ぐらつきながら体勢を立て直して、左差しから寄って出た。

１敗の豊真将が出島を破って横綱を追走。
立ち合い出島に押し込まれたが、今日も頭を下げて持ちこたえた。今場所は押し込まれる相撲が多いが、土俵に足がかかっても危なさを感じさせず、必ずそこから攻め返す相撲を見ていると、これも芸の内、これも地力という気がしてくる。
出島がやや膝が入ったところをつきおとした。豊真将の体も飛んだが問題なし。

時天空は、栃乃洋に立ち合い素早く右前まわしをとって左からはのどわ。長身を生かした攻めで右四つに組んだ。栃乃洋のまきかえに乗じて寄った。栃乃洋は左が差せないと力が出ない。それを封じた時天空の考えた攻め。

普天王は、立ち合い頭から当たって二本入れて出たが、旭天鵬のふところの深さにかわされ、頭を押さえられてのはたきに落ちた。３大関を破りながら、これで普天王は４勝７敗。

安馬に黒海は、いささか内容の薄い相撲。
立ち合い黒海が押し込み、安馬はこれをまわりこんで反撃に出たが、やはり安馬の動きが今場所は本来のものではない。黒海土俵際のはたきに、もつれた勝負となった。軍配は黒海。
安馬がねばって押し出したように見たが、軍配は黒海。
スローＶＴＲで見ると、安馬の左手が明らかに蛇の目を掃いており、行司の判定は妥当だった。

把瑠都は、露鵬にまんまとやられたという相撲。
露鵬が、一合してすぐ左に動いて上手をとり、間髪入れずに投げて決めた。
露鵬としては自分の相撲だが、把瑠都の今日の相撲はよくない。相手を見ていないし、ただ出ただけの相撲だった。これではこんな相撲になるのも仕方がない。

安美錦と琴奨菊は、安美錦が一瞬早く立って飛び込み、二本差して動こうとしたが、琴奨菊は動ぜず相手を正面に置いて前に出た。がぶりながら相手に圧力をかけていくところに安定感がある。
これで白星先行、６勝５敗。

稀勢の里と琴欧洲は、立ち合い大関が張って二本差しをねらったが、さすがに稀勢の里もそれを許さず左四つ。琴欧洲としては組み負けたが、やはり稀勢の里は右腕がよくないのだろう。
左は支障がないので、相手の右差しを防ぎ、左四つになっても上手を許さなかったところまではよかったが、充分の四つになりながら、攻めに動けない。
右上手がとれず困った形の琴欧洲だったが、稀勢の里がすぐに攻めてこなかったのが幸いして、自分の方から体勢立て直しに動けた。
とれなかった右上手をさぐり、深い位置ながらがっちりととった。
その後右をまきかえにいったところを稀勢の里に寄られたが、今日の稀勢の里はそこで勝負を決められない。琴欧洲はふところの深さでしのぎ、最後は投げの打ち合いとなったが、上手の有利で投げ勝った。
稀勢の里は、両まわしとも一枚だったのも攻めの威力が出なかった原因。とりなおしにいけなかったものか。

千代大海は、おとといの相撲で右腕を傷めたのだそうだ。それであれば、昨日の雅山戦の相撲も納得がいく。
今日の魁皇戦、立ち合い細かい突きにいったが、やはり相手を押し込むには至らない。
魁皇は右から相手の左かいなをつかみにいく攻めで、千代大海の突きに落ち着いて対応、右からたぐりながら上手をとる得意の流れで左四つ、右上手も充分な体勢。
この時点で勝負は決まった。あとは千代大海としてはどうしようもなかった。

心配な栃東は、それでなくてもこれまで分のよくない琴光喜との対戦。
やはり相撲がとれない状態のようだ。
仕切っている間から、歩く足の運びが自然でなかったが、時間一杯からともかく立ち合い低く当たって右差し。相手が琴光喜だから右は差せる。
しかし、足が痛いのだろう、左からおっつけて攻めることができない。
一方の琴光喜は左上手充分の右四つ。頭もつけて、いかようにも料理できる形。あとは、琴光喜の動きに、栃東としては、まったくついていけなかった。
千秋楽までの出場自体、どうなのか、という感じだ。

結び、朝青龍は、雅山との一番。最近横綱の11連勝という対戦だ。
雅山は立ち合い頭から当たって突き、いなそうとしたところまではよかったが、横綱はそれ以上に相手をよく見ており、雅山の突きを残すと、あとはあっさり押し出した。
今日の相撲を見ると、横綱はますます調子を上げ、もう完調といってもいいようだ。
雅山の重い突きも、今日はよかったのだが、その雅山を一旦止めたと思ったら、あとは僅かな突きで反撃、勝負が決まった。
横綱は腕が伸びたいい突きだった。体格では大きな差がある相手だが、その雅山を、身体をぶつけながら押していくのでなく、腕の力だけで押し出したのはすごい。
今日の一番は、横綱が本当に強いと感じた。

全勝　朝青龍
１敗　豊真将
２敗　魁皇

毎日この星二つ差ゾーンから続々と後退し、今日を終えてだいぶしぼられた感がある。
つまらない展開になってきた。前半戦は、星の差はあっても、横綱自身の調子が今一つだったし、追う大関陣が充実していたので、横綱が下位に星を落とすか、大関が直接対戦で差を詰める可能性があると見ていたが、ここへきての横綱大関の調子を見ると、やはり朝青龍の優勝の可能性は相当高くなってきた。
残り５日。栃東は休場の可能性もあるし、千代大海もいっぱいいっぱいという感じがある。こうなると横綱攻略に一番期待できるのは琴欧洲か。
明日、魁皇が横綱戦だが、何とか食えれば星の差は一つになる。その可能性はちょっと低いと思うが。