１月場所10日目

安壮富士は、立ち合いすばやく浅いもろ差し、右前みつからの寄りで時津海を破った。
久しぶりに見事なおがみ寄りを見た。

潮丸と玉春日は、重量感のある押し合いとなったが、初日から７連勝した玉春日は、ここにきて前に出られなくなった。
結局、体重に勝る潮丸が押し切った。玉春日は今日も勝ち越しならず３連敗。

２敗同士の玉乃島に豊ノ島は、玉乃島が立ち合い頭から当たり、はさみつけて出るいつもの攻め。
しかし、豊ノ島が肩すかし。玉乃島の首の後ろを押さえたのが聞いて、玉乃島は前に落ちた。
玉乃島が頭を下げすぎたのが敗因。そのために身長で劣る豊ノ島の肩すかしが決まった。

鶴竜がいい動きを見せた。若いのでスタミナがあるのだろう。動ききった。
十文字もよく動いて激しい攻防になり、鶴竜にとっても危ない場面は何度もあったが、若さ勝ちというところ。
最後に西に出る際に、相手の腕をとってつきつけるようにして決めたのが目を引いた。

普天王はよほど状態が悪いのだろう。立ち合い珍しく右上手にすぐ手がかかったにもかかわらず、攻めの体勢にもっていけず、栃乃洋得意の左差し手からの寄りにあっさり土俵を割った。

黒海が目のさめるような相撲をとった。ぶちかましからの突きで、朝赤龍に何もさせなかった。
腕がよく伸びたのがよかった。こういう相撲が出ると、相手にとってはこわい。

高見盛と安馬は、立ち合いから高見盛ペース。すばやく右差し、すぐ左上手をとって、充分な形。上背に勝る高見盛につかまって、安馬としては勝手が悪い体勢となった。
安馬は、赤房下に寄られたが残し、そこから相手の右手首を握って、下手を徹底して嫌い、高見盛がそれをふりはらおうとしたところに内無双であざやかに決めた。
体勢が悪い中、安馬としてはともかく止まらずに何とかしようと動いたのが勝因。

豊真将と時天空も熱戦。
時天空は、立ち合いから裾払いを繰り出し、やや雑なくらい動いてかきまわした。
足腰のいい豊真将もしぶとく残しながら応戦したが、途中で何度も顔を張られたことで、さすがに相撲を崩された。
豊真将は西土俵に押し込んでいったが、時天空のはたきに足を出してしまった。豊真将としては悔しく惜しい一番。
なりふりかまわない時天空の気迫に、敗れながらも何か学んでくれれば。

稀勢の里が安美錦に完勝。
今日の稀勢の里は、立ち合いすぐに左差し、出ながら右上手をとって、まっすぐ寄った。
今場所不調の安美錦としてはどうにもならなかった。
こういう流れのいい相撲を、稀勢の里には確立してほしい。

旭天鵬は、立ち合い右に動き気味に上手を先にとった。
魁皇は、左四つにはなったものの、旭天鵬が寄って出ると、膝から崩れた。
立ち合いにもちょっと腰が入ったような感じがあったし、魁皇は足腰がしっかりしない。
これで５勝５敗。過去23勝３敗と圧倒している旭天鵬に負けたことで、終盤の星勘定はいよいよ苦しくなった。

千代大海と栃東は、千代大海にいい突きが出た。
栃東も下からあてがってこらえようとしたが、やはり残せなかった。
千代大海は２敗を守って勝ち越し。

琴欧洲と雅山は、琴欧洲に立ち合いの踏み込みがなかったが、左に体を開き気味に左上手をとって、充分の右四つ。
雅山は今日もここから体勢を立て直すことができず、琴欧洲の上手投げにあっさり転がった。
琴欧洲の相撲は悪くはなかった。望むとすれば、立ち合いに踏み込んで上手をとる相撲をとってほしい。
雅山はこれで負け越し。昨年は全場所勝ち越して、優勝決定戦にも出たし、大関復帰目前までいったが、今場所の調子では三役維持も厳しいだろう。やはり昨年がピーク、年齢的にも大関復帰までは難しかったということか。

白鵬は、今場所けんか四つの相手には右四つになりきれないことが多いので、今日の琴奨菊戦も、相当気を引き締めていかないと危ないと思って見ていた。
しかし、今日の白鵬は流れのいい相撲だった。
琴奨菊がやや左に動き気味に左からおっつけて左差し。一瞬左四つの形になった。
しかし、白鵬はすぐに右をまきかえてもろ差し。左差し手も返して琴奨菊に右上手を与えず、何もさせなかった。
動きの中で自然な流れでいい形を作る、いい時の白鵬の相撲だ。
これで７勝目。勝ち越しを賭ける明日の横綱戦、少し楽しみになった。

朝青龍と琴光喜は、右四つの琴光喜が立ち合い右に体を開いて右上手を先にとった。頭をつけ、横綱に両まわしとも許さない絶好の体勢。
ここでがむしゃらに出ればいいものを、止まってしまった。
動きが止まれば、そこから体勢を作っていくのが朝青龍の真骨頂。果たして、琴光喜が攻めないでいるところ、右をこじいれてもろ差し。後は琴光喜としてもどうにもならなかった。
善戦もそこまで。勝機は充分あっただけに、見ている側からすれば、琴光喜がせっかくいい形を作りながら、もたもたしている内にむざむざと反撃を許した相撲で、歯がゆいとしか言いようのない一番だった。何をやってるんだ、という相撲。

１敗　朝青龍
２敗　千代大海、豊ノ島

横綱の独走気配に変わりはない。
明日から５大関が横綱挑戦となるが、さしあたり明日の白鵬がどの程度とれるか。
そして、千代大海が星を落とさず横綱戦を迎えられるか。琴欧洲に意地はあるか。
魁皇、栃東には今の相撲ぶりからすると期待が持てないので、残る３大関の誰かが横綱に勝ってくれたら、少しは面白くなると思うが、どうか。