けさ報じられた、踏切事故。
遮断機が下りた踏切の中にうずくまっている男性を助けようと、車から下りて駆け寄った女性が、電車にはねられて死亡した、という事故だった。
男性の方は助かったとのこと。
異論もあるだろうことを承知で言うが、私は、この一件を、勇気ある行動、あるいは美談ととらえることができない。
一人の命は救われたが、一人の命は失われた。
今回の事故では、車を運転していた父親の制止も聞かずに、女性は車から下りて男性を助けに行ったという。
結果、父親は娘を失うことになってしまった。
大学時代、オケ仲間の一人が、何かの話題の折に、「親に線香を上げさせるほどの親不孝はない」と言ったのを、今でもおぼえている。
目の前で娘が命を落とすのを見た父親の気持ちは、いかばかりだろうか。
人の命を助けに行った行動自体は、誰もができるとは限らない立派なものかもしれないが、結果、大変な親不孝をしてしまったのも事実だと思う。
だからと言って、目の前の人を見捨てておけばよかった、とももちろん言い切れない。
娘を失った父親が、人助けをした娘を誇りに思えればまだしも救いだが・・・。
助かった男性や、その家族にしても、女性が犠牲になったことを考えれば、複雑な気持ちだろう。
悲しい事故だったことだけは事実だ。何ともやりきれない。