naokichiオムニバス

68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

ちあきなおみの偉大

今日16日(金)放映のテレビ東京たけしの誰でもピカソ」は、船村徹氏をゲストに、ちあきなおみをとりあげた。

ちあきなおみの歌は、デビューからずっと聴いていた。

今日の番組を見て改めて思ったのだが、日本の歌手でどんなジャンルの歌でも歌えたという点では、美空ひばりとこの人だろう。男性では思い浮かばない。

ちあきなおみの場合、デビューは歌謡ポップスだったが、純粋な歌謡曲、演歌も歌えたし、洋楽のスタンダードからジャズ、活動の後期には、ファドやシャンソンも歌った。
そうした多様なジャンルの歌を、美空ひばりの場合は、すべて自分のスタイルにはめこむ形で歌いこなしたのに対して、ちあきなおみは、必ずしも自分にひきよせきるのではなくて、それぞれのジャンルのテイストを生かしながら歌った人だと思う。

番組でも、彼女のさまざまなタイプの歌をとりあげてきかせてくれた。

ちあきなおみが最も本領を発揮したのは、「歌芝居」だと思う。
ある設定、あるストーリーの物語を、歌を通じて、受け手に伝える説得力においては、空前絶後の高みにあった人ではないだろうか。
芝居は役者が演ずるものだが、ちあきなおみは、歌抜きでの芝居をさせて、すばらしい女優になれるイメージは必ずしも持てない(現役当時、ドラマなどに出ていたか、ちょっと記憶にない)。
しかし、歌を伴った場合、その歌芝居において、これ以上の名女優はいないと思わせる、絶大な説得力がある。歌なくしてなりたたない世界なのだ。
番組でとりあげられた「紅とんぼ」の後、たけしが「これはオペラだね」と話したが、本当にその通りだ。

そうした歌芝居のもう一つの傑作が、「ねえあんた」だった。
今日の番組で、これが聴けなかったのは残念だったが、今でも忘れられない紅白歌合戦での「夜へ急ぐ人」を久しぶりに見られて嬉しかった。

船村氏が、ちあきなおみの「矢切の渡し」を、細川たかしの同曲の歌唱と対比させて、「鑑賞用の歌」と評していた。
細川たかしの歌は、細かい陰影がないので、自分にも歌えそうだと思わせるが、ちあきなおみの歌はそうではないという。
確かにそうだと思った。ちあきなおみの歌は、気軽には聴けない。
ただ、どちらのスタイルがすぐれているということではなく、それぞれのスタイルとして完成されたものだと思う。

彼女が活動をやめてしまって今年で15年になる。
番組の最後に、船村氏が、復帰を切望する発言をしていた。
私も同じことを思う。しかし、昨年の紅白歌合戦で、森昌子が必ずしもいいパフォーマンスでなかったことを考えると、これだけ長いブランクの後で、今日見たような水準の歌を聴けるかどうか、不安も大きい。
難しいところだ。

ちあきなおみのレコードはいくつか持っている。
あまり売れはしなかったと思うが、私が好きな曲に、「花吹雪」という歌がある。
もう少しして、桜の時期になったら、聴いてみよう。