naokichiオムニバス

68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

7月場所14日目~「29年ぶり」に水差す白鵬の変化

終わり3番について。

日馬富士琴欧洲は、今場所の調子からすれば予想通りの結果だが、日馬富士が、思うように動けている点は今日も変わりがない。
先場所の旭天鵬もそうだったが、勢いに乗っている時は、やることなすこと良い方向に動く。
日馬富士が、今場所突然強くなった、という感じはない。
昨年の7月場所もそうだったが、「うまくはまれば優勝に手が届く」ことは事実であっても、ほんの僅かの差で、相撲がはまらなくなると、8勝7敗、9勝6敗になる点は変わっていないのではないか、という気がする。
今場所の相撲には文句がないが、来場所以降、毎場所13勝、14勝の成績を続けられる、というイメージが持てない。来場所、「横綱昇進挑戦失敗の9勝6敗」の方が、正直想像できる。

把瑠都琴奨菊の速い動きについていけなかった。
それにしても、前日、白鵬とあれだけの力相撲を演じることができた把瑠都が、何故2ケタにも届かないのか。不思議だ。

大関時代となり、大関同士のつぶし合いが激しい中、それをすべて制し、抜け出すのは容易なことではない。
今場所、前半戦は日馬富士把瑠都が7戦全勝と好調で、これはと思ったが、その後の成績では明暗を分けた。
ちょっと崩れれば、2ケタも難しい、また、下位にとりこぼしがあれば、勝ち越しすら危うくなる。そういう厳しい状況下で、軽量の日馬富士が無敗で千秋楽を迎えることができるのは、確かに値打ちがあるとは思う。
ただ、前記の通り、6大関の中で、日馬富士が明らかに横綱に近づいた、という実感は持てない。
一方で、14日目終了時点、10勝4敗が2人、8勝6敗が3人。
大関とはこういうことなのだと思う。

さて、日馬富士が全勝を守った後での結び、白鵬稀勢の里の対戦。
誰しも予想しなかった白鵬の変化で、1983年9月場所の千代の富士隆の里以来の、千秋楽全勝対決。15日制で5回目となる。
これまではすべて横綱同士の対戦で、横綱大関戦は初だ。
29年間、曙=貴乃花にも、朝青龍白鵬にもなかった全勝対決。
横綱大関戦だと、かつての北の湖旭國戦のように、番付順では千秋楽の対戦にならないので、基本的にありえないことだったが、今場所は審判部が敢えて割りを番付順から崩し、明日に持っていったことで実現した形。
協会としても、またNHKとしても、これ以上ない形となりはしたが、しかし、白鵬の変化については、どう言うべきか。
二度の立ち会い不成立は、稀勢の里が悪い。これは間違いない。
稀勢の里は、12日目の把瑠都戦で手つき不充分を繰り返して、翌日注意を受けた(個人的には、この時の稀勢の里だけが、相撲を止められるほどひどかったとは思わない。あの程度の手つきで相撲をとらせている例はいくらでもあるのだから)。
そして、13日目の琴奨菊戦では、琴奨菊の方が悪い形でまたすんなりとはいかなかった。
2日間のそういう経緯を受け、今日の取組にあたっても、稀勢の里に立ち会いの迷いがあったのは明らかだ。二度のつっかけは、稀勢の里が悪い。
しかし、三度目、白鵬のあの変化はないだろう、とやはり言わざるを得ない。
いくら相手が悪くて繰り返しつっかけられたにせよ、次はしっかりした立ち会いで受け止めるのが横綱に求められる姿ではないか。
迷ったあげくに稀勢の里が頭を下げて突っ込んできたとしても、まったく当たることもなく、体をかわしての変化はやはり容認し難い。
当然、その場で決めた変化のはずだ。最初から変わろうと思っていたとは考えられない。
機を見るに敏、流れでさばく白鵬の相撲の真骨頂が出たと言えばそれまでだが、私には、日馬富士が全勝で待っている中、絶対に負けられない状況で、二度立ち会いが合わなくなり、これは無理してまともに立ち会ってはリスクがある、との判断が優先したと見える。とにかく勝つことだけを考えた、と。
こういう形で29年ぶりの展開になったことを、ファンの一人としては素直に喜ぶ気持ちになれない。
本来なら、28歳の時に観たきりで、もしかしたらもう観られないかもしれないと思っていた状況になったことに、もっと興奮をおぼえてもいいはずなのに。これじゃあ、という気持ちの方が先に立つ。
何より、こういう勝ち方で明日の決戦に臨むことは、白鵬にとってマイナスでしかないと思えて仕方がない。
今の白鵬にとって、最も骨のある相手である稀勢の里を、昨日の把瑠都戦のように、まともに相撲をとったあげくに下して全勝を守ってこそ、明日の全勝対決にいい形で臨めたはずだ。
それが、日馬富士は存分に相撲をとって勝ったのに対し、あのような、ほとんど相手にさわっていない相撲で勝ったというのは、明日の対戦そのものにとっては、やはり不利な条件を残したような気がする。
その意味で、明日の一発勝負は、日馬富士が有利と見るのだが。