naokichiオムニバス

68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

井上陽水 氷の世界ツアー2014 東京国際フォーラム <3>

今回のツアー、行こうと思ったのは、「氷の世界」を全曲、曲順に演奏すると聞いたからだ。

1973年12月1日に発売された、井上陽水の3枚目のオリジナルアルバム、「氷の世界」。

自分のオリジナルアルバムを、そのまま実演で再現する、というこの企画。過去に陽水以外のアーティストも含めて、誰かがやったことがあるのだろうか。
私は聞いたことがない。

連想するのは、例えば、カラヤンベルリン・フィルが、かつて来日時に、ベートーヴェン交響曲全曲を演奏したような、チクルスプログラムである。
ただ、世界的な指揮者であるカラヤンが、超一流のオーケストラを振って、得意のベートーヴェンを演奏する、という行為と、井上陽水が自ら制作したオリジナルアルバムを、ステージ上で再現する行為。
「オリジナル」がそこに存在する、という意味では、後者の方が稀少性が高いと言えるだろうか。

しかも、演奏されるのが、他ならぬあの「氷の世界」である。今回のツアーに向けて、誰が考えたか知らないが、誠に卓抜な企画だと思う。
やはり、昨年が、発売40周年だったことでの発案なのだろう。

日本で初めてミリオンセラーを記録したアルバム、「氷の世界」。

発売された1973年12月、私は年明けには受験本番を迎える高校3年生だった。
井上陽水の存在は、この年の3月にリリースされた「夢の中へ」で知ったと記憶する。
続いて9月に出た「心もよう」も、当然知っていたが、高校在学中には、アルバム「氷の世界」は聴いていない。存在も知らなかったかもしれない。

手元の記録では、私が、「氷の世界」を秋葉原石丸電気で買ったのは、1975年、大学2年生の時だったようだ。

高校の同級生のSが阿佐ヶ谷に住んでいて、一人暮らしをしていた彼の部屋に遊びに行った時に、持っていた井上陽水のアルバムを聴かせてくれたことがあった。
この時、「もどり道」を聴いたのは記憶にある。「人生が二度あれば」で、陽水が一部歌詞を間違えて歌っていることを、Sが教えてくれた。
また、「あかずの踏切り」が、「氷の世界」でのオリジナルと、「もどり道」のライブではまったく違うメロディで歌われていることも、この時にSに教えられたのだと思う。
だから、阿佐ヶ谷のSの部屋で、「もどり道」の他に、「氷の世界」も聴いたのだろうとは思うが、その記憶ははっきりしない。

そして、これも定かな記憶ではないが、これを機会に、自分もこの2枚のアルバムを買ったのだったと思う。

あの時代、友人の誰もが「氷の世界」を持っていた。後年の寺尾聰の「Reflections」同様、一家に1枚、という感じのレコードだった。
妻も、自宅に帰ればあると言っていた。

「氷の世界」は、確かに傑作だ。私も、40年近く聴き続けてきたが、何度聴いても飽きることがない。

その「氷の世界」が、実演で再現される。これは是非聴きたい、と思ったのだった。

(1973年には、オフ・コースの「僕の贈りもの」、また荒井由実の「ひこうき雲」と、それぞれデビューアルバムがリリースされている)