naokichiオムニバス

68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

3月場所11日目~歴史的な一番?

十枚目では、把瑠都が11戦全勝。さすがに実力を発揮してきたようだ。
全勝での十両優勝というのは、長年相撲を見てきた私も経験がない。残り4日、頑張ってほしい。

若の里は、嘉風に貫禄勝ち。嘉風は何もできなかった。
嘉風は、幕内2場所目だが、やはりまだ地力に足りないところがあると思う。
今日は確かに元三役で格が違う相手ではあるが、それでも、期待の若手としては、何かやらねば。

武雄山は、いい当たりだったのに、豊ノ島に押し込まれ、お株を奪われたような展開で反撃できず。どうしたことか。

旭鷲山朝赤龍を破って勝ち越し。
見ごたえのある、いい相撲だった。こういう相撲を見られると嬉しい。

稀勢の里高見盛は、稀勢の里が立ち合いから左四つに組み勝ち、終始優位に相撲をとった。上手を離すことなく攻めきったのがよかった。勝ち越し。上々だ。

楽しみな時天空安馬は、予想外の展開。
当たり合ったところまではよかったが、後は、はたきあう形の流れとなった。
最後は懐の深さで時天空がはたき勝ったが、やや期待はずれの一番だった。

期待はずれと言えば、琴光喜は、今日も期待はずれ。
立ち合いいい当たりだったのに、自分充分に組めず、逆に旭天鵬充分の左四つに組まれてしまった。
相手充分になり過ぎだ。この形では、いかに琴光喜と言えども、しのげるだけの地力の差はない。
むしろ、旭天鵬の地力と堅実な相撲が目立つ結果となった。
こんなことをしていては、という相撲。

琴欧州は、不調の北勝力相手で、まずは余裕をもってとれただろうが、ともかくも勝ち越し。ご同慶の至りだ。
11日目の勝ち越しは上出来。よく頑張ったという他はない。
本来であれば、勝ち越したのだから、明日から休場して治療に専念してもらいたいとも思う。そういうあからさまな行動は、難しいのかもしれないが・・・。
ともかく、膝のケガは本当に命取りになる可能性があるだけに、この先の期待が大きい琴欧州には、徹底的に治してもらいたいものだ。

栃東魁皇にまさかの3敗。綱とり(個人的には今場所が綱とり場所とは思っていないが)は絶望。
しかしどうしたことか。
立ち合い、いきなり左四つ。今場所は、たまたま左四つになっても、そこから攻める自分の形を作れない魁皇だ。
今日についても、別にそれができた訳ではない。
しかし、栃東の攻め手の悪さに救われた格好。
栃東としては、左四つに組んでしまったからには、そこから何とか立て直して、右四つにまきかえるのが無理でも、左右からのおっつけで、四つ相撲を避けるべきだった。
当然そうするものと思っていたが、そんな動きがまったくないまま、ただ引いて自滅した形。
決して魁皇がよかった訳ではない。魁皇にしてみれば、必死に動いている内に、相手が出てくれたというところだろう。
本当に、どうしたことか、と言うしかない。
2回大関から陥落した栃東としては、カド番、引退を背負った魁皇に、全力を出せなかったのかもしれないが、それではいけない。千代大海も、琴欧州も、とりにくい、辛いところを真っ向からとったのだから。
綱とりにはもう1敗もできない立場の大関が、こういう相撲をとるとなると、見方によっては「無気力相撲」だ。
栃東には、猛省してもらいたい。栃東本人にとってだけでなく、相撲界全体から見ても、2敗、3敗分に相当する今日の負けだ。

千代大海出島を下して勝ち越し。こちらはカド番を脱した。とはいえ、この人が今後横綱をめざせるとは思えないし、優勝回数を重ねる期待もできない。
2場所後に、歴代ワーストを更新する「10回目のカド番」の可能性を残しただけ、ともいえる。
それにしても、出島は、何故立ち会いに変わったのか。今場所の状態なら、まともにいってもある程度は戦えたと思う。残念だ。
勝負がついてから、千代大海がダメを押した。
これについては、正面解説の北の富士さんが言われていたが、自分だって変化は時たまするのだから、少なくとも、相手の変化を責める意味でのダメ押しだったら、噴飯ものだ。

さてさて、今場所一番の取組、朝青龍白鵬は、白鵬が勝って全勝を守った。
この一番、完全に、白鵬実力で勝った相撲だと思う。決してはずみや番狂わせではない、そんな内容だった。
もとより、今場所、横綱が、以前のような、相手に相撲をとらさない相撲で全勝を続けてきた訳ではない。一方の白鵬は、逆に、先場所までとは大きく違う、安定したスキのない相撲をとってきている。
今場所の調子からすれば、白鵬としては五分以上に戦えると見ていた。
ただ、土俵下での表情を見たら、いつものように闘志を表面に出している横綱に対して、白鵬の方は終始視線を落としてうつむき加減。終盤に向けて、緊張、重圧があったり、横綱に対する気後れなどがあっては、いくら調子で上回っていてもどうか、と懸念した。
しかし、実際の相撲は、驚くべき内容だった、
立ち合いからの攻防で、横綱充分の左四つに組むことになったが、決して不利な感じがしなかった。
自分はとりあえず下手をがっちりひき、横綱に上手を与えない体勢。
これは、懐の深さと、身体の柔らかさだろう。
相手の力を吸収し、抱き込んでしまう、大鵬のような相撲が、今日は見られた。
この形、一見、横綱が充分の左四つに組み止めたようであっても、実はそうでなかったのではないか。
横綱としては形勢不利、しかし、体勢をまきかえす糸口がつかめない、という状況ではなかったか。
横綱が好調であれば、ここから何とか動いて、とりあえずは左四つに組んでいるのだから、自分の形を作っていけただろうが、それができなかったと見る。加えて、白鵬の、先場所から今場所にかけての成長。
最後は、白鵬が余裕を見せたとも思えるような右からの投げでつぶした。
放送で、先場所の栃東戦のようだと言っていたが、全然違う。先場所のあの相撲は、横綱がヒジを傷めてまともに相撲がとれない状態でのこと。今日の相撲は、一応横綱としては、好調ではないにせよ、存分にとれる状態での投げの食い方だ。
ともかく、白鵬はこれで3場所33勝。残り4日、まだ星の上積みは当然あるし、まったく強いとしか言えない相撲内容からしても、今日の時点で、大関は確定だ。

しかし、朝青龍としては、今日は由々しい意味のある敗戦だと思う。
今場所の一過性の不調が、白鵬の好調さにやられたというだけならいいが、来場所以降、横綱が調子を取り戻していけるかどうか。
仮に戻せたとしても、白鵬の力の伸びも今後まだまだある。
今日の相撲、要は、横綱が立ち合いから一所懸命動いて、左四つに持ち込んだものの、自分充分の形に全然させてもらえず、体勢を立て直すこともできぬまま、最後は余裕をもって投げられた、という一番と言える。
最後の投げは、白鵬に今場所初めて出た、「あしらう相撲」だった。
先場所以前、白鵬には、相手をあしらい、かわして、余裕をかまして勝とうという姿勢が見られた。
今場所、それが影を潜め、いいことだと思っていた。それが、この横綱戦にだけ出たということ、これは、むしろ「すごい」と言える。
もしかすると、横綱が今場所より調子を取り戻したとしても、今後は白鵬に通用しないだけの、力関係の逆転が、今日の相撲であったのかもしれない、と思う。
白鵬は体格、柔らかさにおいて横綱に勝る。
今日の相撲を見ていると、朝青龍が上回れるのはやはりスピードだが、この横綱の他の長所である、筋力や瞬発力については、白鵬の体格、柔らかさがそれを吸収してしまうとすると、横綱としては、きわめてとりづらい相手ということになる。
朝青龍が、どこからどう行っても、白鵬には通じない」、という状況が、イメージできるのだ。
これは大きいことだ。普通はそんなことはイメージできない。

栃東に多くは期待できないと思われる状況で、仮に、琴欧州のヒザが大事に至らず、琴欧州白鵬横綱に伍していければ、今後、毎場所の優勝争いは面白くなるだろう。
いや、むしろ、その琴欧州もが、白鵬には通じなくなる、白鵬独走時代というのも、イメージできなくはない。

ともかく、今場所に話を戻すと、残る対戦相手を考えれば、優勝争いは白鵬が断然有利になったと言える。
場合によっては、全勝優勝も可能かもしれない。

今日の結びは、後々、相撲史の節目として振り返られる一番かもしれない。