５月場所13日目

隆の鶴が引退会見。
場所前には闘牙が引退。もみあげのそっくりさんが、同じ場所に引退するというのも面白い因縁だ。

豊真将は武雄山に一方的に押された。一昨日傷めたという膝がやはり悪いのだろう。
それまでのあの低い体勢がとれない。

栃乃花と玉乃島は、相四つなので当然左四つになるが、勝負を分けたのは、栃乃花が左下手をとらないまま出たことだ。
昨日もこういう相撲が何番かあったが、やはり両まわしをとって出るのか、ある程度不充分であっても早く出るのか、難しいところだ。

幕の内前半戦、今日は見るべき相撲があまりなかった。

把瑠都には今場所好調の朝赤龍。楽しみな一番。
把瑠都が時間一杯の仕切りで非常に気合いの入った顔をしていた。
やはり優勝争いの意識もあるのだろう。
相撲内容は今日も把瑠都に驚かされるものだった。
立ち合いすぐに抱き込むように右四つ。琴欧州相手にあれだけ自分充分の形を作れた朝赤龍に、今日は形を作らせない。
最後は吊り出し。
相撲にムダがなくなってきた。単に身体の大きさ、馬力だけに頼った相撲ではなくなっている。毎日の本場所の土俵で、１日１日相撲をおぼえてきているという感じだ。
まだ本物と断ずることはできないが、本物になりつつあるとは感じる。

琴奨菊は垣添をよく見ながらの肩すかし。玄人好みの相撲だった。

稀勢の里と安馬は、もっと好調同士で当たってほしかった。今場所についてはちょっと残念な状況での対戦。
稀勢の里がまわしにこだわらない相撲で押し倒し。
安馬は軽量だし、今場所不調なので、これでも勝てる。今日はこれでいいと思うが、この相撲で誰にでも勝てるというものではない。
やはりどうしても、この人の場合、左を差して右からはおっつけはさみつけで出る形なので、今一つ安定しないし、地力のある相手には通じないところがあると思う。
まわしをしっかりとって引きつけて寄る相撲の方が当然安定する筈だが、本人がそういう相撲をめざしているようにも見えない。
どういう相撲をめざしているのかが見えない。ただ、がむしゃらに前に出ていくだけでは上位に定着できないと思う。
その点、再三ふれるが琴奨菊の方がめざす相撲が明確だ。

１敗の雅山は旭鷲山戦。何をやってくるかわからないやりにくい相手だったが、案の定立ち合いから変化してのかきまわし。
しかし、さすがに好調なだけに雅山も相手がよく見えている。旭鷲山の攪乱をこわがることなく出た。
今場所の雅山は本当にいい。大関に上がった頃の相撲よりもいいかもしれない。こういう相撲が続けば再大関も夢ではない。

琴光喜は立ち合い右を浅くのぞかせながら、露鵬の引き落としに落ちた。もろい。

もう一人の１敗の白鵬は、琴欧州戦。琴欧州が今日はずいぶん気合いの入った顔をしていた。気圧されたか、白鵬は立ち合い嫌った。立ってほしかったが残念だ。
精神的にどうかと思ったが、立ってからの相撲は完璧。
相四つだけに右四つには持ち込める訳で、前まわしを早くとって後は終始優位な体勢から、完勝。
琴欧州はすっかり相撲が崩れて７敗と後がなくなった。蹲踞も満足にできなかった先場所に比べれば足の状態はいいのだろうが、ケガ云々でなく、何か自分の相撲を見失っているように見える。
昨年は優勝争いに一度ならずからんだ若い大関のこの状況は残念というしかない。
残り２日、何とか頑張って来場所のカド番は回避してもらいたいところだが。

結び、千代大海に魁皇は、両者ケガをして万全でとれない状況での対戦では、内容は期待できなかったが、現時点での状態の差を反映して千代大海の勝ち。千代大海がよかったという訳ではなく、魁皇がそれだけ悪いということだ。
千代大海は３敗を守ったとはいうものの、逆転優勝などはとても考えられない。終わってみれば10勝止まりということもありうる。

それにしても、休場の栃東を含めて、白鵬以外の４大関がすべてケガで満足な相撲をとれない状態であることは、遺憾な話だ。
特に、白鵬の終盤最後の３日間の対戦相手が、琴欧州、千代大海、魁皇と続くのは、番付上仕方がないとはいえ、優勝争いの興味に水を差すものだ。
今日の朝日新聞朝刊に書かれていた、いっそ千秋楽の白鵬は把瑠都と当てては、という意見に賛成だ。