naokichiオムニバス

68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

3月場所千秋楽 その2

さて、優勝にからむ残り二番。
白鵬琴欧洲は、白鵬が昨日の敗戦で気落ちしていればあぶないのではないかと危惧して見ていた。
     朝青龍  白鵬
  A   ○    ○  決定戦
  B   ●    ●  決定戦
  C   ○    ●  朝青龍優勝
  D   ●    ○  白鵬優勝
の4パターンの内、可能性の高い順に、
  A→C→B→D
だと思っていた。
Cは結構ありうると思った。
要は、白鵬がどの程度普通にとれるかであって、普通にとれさえすれば、今の状態から白鵬の勝ちは動かないのだが、白鵬がガチガチになっていた場合は、負けることもあるだろうということだ。またその場合、横綱千代大海戦を落とすことは考えられなかった。
さて、実際立ち上がっての相撲は、やはり白鵬は普通でなかった。
相四つだけに、立ち合い左前まわしに手がかかったものの、とれなかった。すかさず突っ張った。ここまでは今場所のパターンだが、上体は立ったし、引く場面もあった。相手をよく見えているというよりは、どこか余裕がなかった。
動きのいい相手であれば、あぶなかったと思う。
離れっぱなしで勝負を決めたのは、白鵬としてはいい勝ち方ではない。
いっぱいいっぱいだったのだろうが、ともかく決定戦の権利は得た。

そういう状況での結び、朝青龍千代大海
当然、普通にとれば横綱の勝ちは動かない。いくら千代大海がこれに負けたら負け越しという相撲であっても、この横綱が意に介する筈はない。
しかし、相撲は意外の一語。
朝青龍が立ち合い右に変化。まったく当たっていない。上体が伸び上がった格好で、いきなり変わった。
千代大海が相手をよく見てついていけていたら、横綱の惨敗だっただろうが、当然そうはならなかった。
やはり、序盤の連敗から立て直してきたとはいえ、必ずしも完璧な状態に戻ったわけではない。白鵬の、内容はともかくとしても勝ちを見届けて、横綱自身の内心に、おだやかでないものが相当あったのだろう。
「ともかく勝ちにいった」というだけの相撲だった。
朝青龍の相撲としては、昨年の稀勢の里戦でのけたぐりに匹敵する、落胆させられる一番だった。それがこの肝心の取組で出るとは。

ともかくも決定戦。
今場所限りで引退の木村庄之助が、もう一番裁くことになった。

この両者の最近の対戦を、昨日今日とNHKが見せてくれたが、どれも大相撲、好勝負。今の相撲界において、いい相撲、熱戦を見せてくれるのはこの二人だ。
個人的には、昨日書いたように、当面の相撲界のためには、白鵬がどうしても勝つべきだと思いつつ、勝敗は別にして、これまで見せてくれたようないい相撲をもう一番重ねてほしいと思った。
それは、この終盤にきて、白鵬の相撲がやや乱れてきたこと、朝青龍も、前記の通り、完調に戻っておらず、どこか雑な相撲に終始していることからだ。
しかし、結果はこれまた意外。
白鵬が勝った。それは事実だが、これまでの両者の対戦の中で、最も内容がない、凡戦とすら言えない相撲でもあった。
白鵬、立ち合いに左への変化。結びの横綱と同じく、当たるでなく、張るでもなく、いきなり変わった。
優勝インタビューではとっさにやったと言っていたが、いつ決めたのか。
あっさり手をついた横綱が、土俵上で苦笑いを浮かべた。
アスリートの心理としてはわかる。結びの一番、ともかく勝たねば何にもならない、勝てばいいのだ、という意識でなりふりかまわぬ変化を、7勝7敗の大関にした。
自分がやったことを、今度は優勝決定戦でやられた。自分がやったのだから、それもありだ。仕方がないな、ということだろう。
しかし、この結び、そして決定戦で、「勝つためには何でもあり」という相撲を、互いに1回ずつやったことは、やはり私のような古くからの相撲ファンとしては、重いと言わざるを得ない。
力士が単なるアスリートであるなら、理解できる。それも作戦の内、勝負だと。
相撲の世界の中でも、たとえば、安馬嘉風里山のような、小さい相手が横綱とやる時に、なりふりかまわず何でもやってやれ、というのは許されると思う。
優勝決定戦での立ち合いの変化として思い出すのは、出島=曙、栃東千代大海がある。
どれも多かれ少なかれ失望させられたものだ。しいて、曙に挑んだ関脇出島の変化は、まあそれもありかと思わぬでもなかったが、優勝と、勝ち取った大関昇進の値打ちが下がるような気もした。
しかし、先に書いたように、今の相撲界で、一番いい相撲をとってくれる二人なのだ。力量も一番接近し、かつ一番高レベルにある二人が、これこそ相撲の醍醐味という相撲をとってくれることを、やはり期待したかった。
白鵬の優勝決定戦は3回目。同じ朝青龍相手の昨年3月の相撲に遠く及ばぬ内容だったことは言うまでもないし、まして昨年5月の、雅山を愚直に正面から攻めきったあの相撲に感じ入った身としては、いくら優勝したかったとしても、こんな相撲を見せられることに共感は持てない。
特に、私はこの決定戦のすべての中で、朝青龍が見せた笑顔に、これまで長年見てきた相撲の「何か」を否定されたような思いがした。
繰り返すが、走ってきた白鵬の、詰めにきての気持ちの揺れ、そして序盤からついに心身完璧には戻らなかった朝青龍。その両者が演じた優勝争いだけに、本来この二人に期待すべきレベルの高い相撲に、昨日も今日もならなかったという結果だ。
非常に残念だ。

優勝は優勝。来場所は白鵬は綱とり場所となる。連続優勝して昇進してほしいと思う。
しかし、こんな相撲はもう今場所限りにしてほしい。
変わられて落ちることはあっても、変わることはしないでほしい。白鵬にはそういう相撲を望みたい。

優勝インタビューは、オリンピックなどで「かけはし」などの名言を残している刈屋アナ。
「嫁とりの後は綱とりですね」・・・昨日から考えてたな。

ということで、ここ3場所、大関がふがいないために、朝青龍の独走に追いすがるのが常に平幕力士だった優勝争いが、大関もきちんとからんで、決定戦までいったのだから、万々歳のはずなのだが、当の両力士が、最後の最後、千秋楽にきて水をさしまくってくれた、という珍しい場所だった。

朝青龍白鵬とも猛省して、来場所以降、さすがと思える相撲をとってもらわないと。

番付予想。

三役

        東     西
  横綱  朝青龍
  大関  白鵬    琴欧洲
  大関  魁皇    栃東
  大関        千代大海
  関脇  琴光喜   豊真将
  小結  安馬    琴奨菊

琴奨菊を平幕に落として、西筆頭8勝7敗の豊ノ島を小結にすることも考えられるが、琴奨菊の後半戦の内容のよさと、豊ノ島が西であることから、琴奨菊を小結にとめるだろうと思う。
安馬が今日勝って9勝なら関脇だっただろうが、8勝どまりだったことで、東5枚目11勝の豊真将を新関脇にした。

それにしても、5大関
琴欧洲魁皇栃東が8勝どまり。千代大海が負け越し。白鵬孤軍奮闘の形だが、5人もいるのだから、せめてもう一人は優勝にからまないと、大関の資格はない。
ベテラン3大関は、もういつやめてもおかしくない状態だから、やはり琴欧洲だ。頼むから、来場所以降何とかしてくれ、と言いたい。

幕内と十両の入れ替え

落ちる力士としては、休場の把瑠都、幕尻負け越しの十文字は確定。
上がる力士としては、皇司里山が間違いないところ。
もう一人くらい入れ替えをやるかどうか。
落ちる候補としては、春日錦(下に6枚。4勝11敗)、嘉風(下に4枚。5勝10敗)、土佐ノ海(下に2枚。6勝9敗)。この3人は、十両に上がる力士がいれば落とされてもやむを得ない星だ。
しかし、十両から上がる力士が見当たらない。しいて上げるなら、東3枚目で9勝6敗の龍皇だろう。落とすとすれば、嘉風か。

十両と幕下の入れ替え

落ちる力士があまりいない。高見藤、北勝岩、それから引退の皇牙
上がる力士としては、猛虎浪若ノ鵬、境澤か。
西筆頭で4勝3敗の千代白鵬、東4枚目で5勝2敗の市原も、上がれない成績ではないのだが、残念ながら落ちる力士がいない。