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和田秀樹著「「判断力」の磨き方」

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和田秀樹氏の著作、「「判断力」の磨き方~常に冷静かつ客観的な選択をする技術」(PHPビジネス新書)を読んだ。

11月の末、前橋への出張で新幹線に乗る前、東京駅構内の書店をぶらついていて、タイトルにひかれて買ったものだ。

まあ、何の気なしに買った本なのだが、面白かった。ためになった。

この種のビジネス書に多い、ケーススタディ的な内容か、と予想していた。つまり、「こういうケースでは、どういう選択をするか」の理屈の解説かと思っていた。

しかし、そうではなかった。

著者の和田秀樹氏は、時々テレビでも見かける精神科医、心理学研究者だが、彼はこの本で、心理学の立場から、
  「何が人間の判断をゆがめるか」
を解説する。

「どう判断すべきか」でなく、「何故判断がゆがめられるか」の観点からの論述であることが、私には新鮮で大変面白く読めた。

頭がよく、一流大学を卒業し、経験豊富な経営者が、何故、社会的に糾弾されるような不祥事を起こしてしまうのか、と著者は問う。
そして、むしろ実際には、経験豊富な人ほど、大きな判断ミスを犯したりする、と指摘する。

以後、人の判断をゆがめる心理的な要因について、逐次解説されていく。

代表的なものが、
  二分割思考
  完全主義思考
の二つ。

他に、
  過度の一般化
  肯定的な側面の否定
  破局
  情緒的理由付け
            等々。

さらに著者は、
  自動思考(思い込み)
  スキーマ(型にはまった思考)
  属人主義(何を言ったかでなく、誰が言ったかの重視)
について述べた後、
  「集団で意思決定する場合、個人で意思決定するよりも判断を誤ることが多い」
との説を展開する。
  集団的浅慮
  社会的手抜き
  集団的凝集性、精神的閉鎖性
  感情に左右されることの危険

このへんを読んでいると、まさに今話題の、社会保険庁における年金のずさんな管理などは、ある集団の中で、誰も責任を持たない雰囲気の中で社会的手抜きが行われた典型例ではないか、と感じる。

これらを踏まえ、本書は、そうした判断ミスにつながる思考に陥らないための方法を指南する。
  失敗から学ぶ、「失敗学」の勧め
  自分の認知パターンを認知すること
などである。

最後の章では、ヤオハンサムスン雪印不二家など、世間によく知られた企業の失敗事例を列挙し、そこからの教訓を述べている。

私にとっては、最近読んだ本の中では、特に学ぶところがあった1冊である。

組織の中で働いている方には、お薦めしたい。