naokichiオムニバス

68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

高橋尚子という人

今日はオケ練が午前で終わったので、帰宅して名古屋国際女子マラソンを観ることができた。

帰宅したのは13時頃だったと思う。

ゆうべ不調だったテレビは、幸いにもちゃんと映り、先頭集団が画面にあらわれた。

あれ?
Qちゃん、どこだ?
いない? まさか・・・。

ほんとにまさかと思ったが、その時点で、高橋尚子選手は脱落していたのだった。

第2中継車が高橋選手をとらえる。
完走できるのか? と思うような走りだった。

そして。
27位の惨敗。放送時間内にゴールすることもできなかった。

レース後の会見での話によると、昨年8月に膝の手術をしていたという。

・・・どんな思いだったんだろう、Qちゃん。

レースに臨む前。
手術のことを公表するのか、しないのか。
手術後半年余りで、このレースに出るのか、出ないのか。

言いたいこと。
言えないこと。

いっぱいあったんだろうなあ・・・。

回避します、と言う場面はいくらでもあったはずだ。
しかし、高橋尚子本人がそれをよしとしなかったのだろう。
あくまで北京に向けてチャレンジする、と。

しかしおそらく、今日、スタートラインに立った時点で、多分無理だ、と思っていたのではないだろうか。

・・・どんな思いで走り始め、どんな思いで走り、どんな思いでゴールに到達したんだろう。

8年前。シドニーのあのレース。日曜日の朝だった。
途中からのあのスパート。

トラックに戻ってきて、日本女子陸上初の金メダルに向かって走る彼女に、「がんばれー!がんばれー!」と、私は声に出していた。

そして翌年、世界で初めて2時間20分を切ったベルリンマラソン

あの強かった高橋尚子が、もう数え切れないほどの選手に次々抜かれて、それでも走っている。
私は、その姿にこそ、何か、非常に稀有なものを見た気がした。

「あきらめなければ夢はかなう」と彼女は言った。
夢はかなわない。もはやそれが明らかな状況だった。
しかし、それでもゴールをめざして走ったのは、何だったのだろうか。

手術からこれだけ短期でレースに出るのは通常無謀だというコメントも、夜のスポーツニュースで聞かれた。
やっぱりそもそも無理だったのか。

全国民に愛されてきたQちゃん。
これまで、彼女の走りから多くの感動や元気をもらった日本国民が、今日のレースに関しては、彼女に力を与えてゴールさせた。
たぶん、そういうことではなかっただろうか。

今日の完走は、高橋尚子本人の、今日の力ではない。
彼女がこれまでに積み重ねたものが、日本全国からの応援の声として、彼女に返ってきたのだ。

いつものように快活だった、レース後の会見。
でも、本心は違うんだろうな、きっと。
今、夜になって、悔しいとか、敗北感とか、そんな単純な言葉ではあらわせないもので、きっと高橋尚子の心の中はいっぱいなんだろう。

・・・高橋尚子は、この次に何を見せてくれるんだろうか。
何かを見せてくれるはずだ、と私は思っている。
それは、何かのレースの優勝ではないかもしれないが、高橋尚子高橋尚子である限り、きっと次に何かを見せてくれる。そう思う。

Qちゃん!