naokichiオムニバス

68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

1月場所千秋楽~立派な決着

山本山は、木村山のゆさぶりに崩され、押し出された。やはり山本山という人は、相手の動きにどうやってついていくかが課題だ。今日の相撲でも、常に相手に正対させてもらえなかった。
新入幕勝ち越しは立派だが、今のままでは、幕内中位に上がっても通用しないだろう。

豊響は、よく前に押して出たが、右四つから東へ寄ったところで、土佐豊のうっちゃりに左足を踏み越してしまった。
いい相撲だったが、惜しい星を落とした。来場所は十両陥落となるが、すぐに戻ってきてほしいものだ。

栃煌山は、勝ち越しのかかる垣添の厳しい攻めをしのげなかった。垣添は、栃煌山に差させず、逆にもろ差し。
これで栃煌山は10勝どまり。初日から8連勝したことを思うと、後半ははなはだ物足りなかった。琴欧洲把瑠都についても書いたが、15日間、気力を保って、常に同じ相撲をとり続けることは、やはり難しいのだろう。

豊真将は、今日は立ち合いからすぐに左前まわしに手がかかり、右四つ、頭をつけて前に出たが、時天空の、右足を内掛けにからんでおいての下手投げを食った。敢闘賞に花を添えることができなかった。

玉乃島は、今日もよく前に出て、千代白鵬を寄り切った。これで豊真将と並ぶ11勝だが、三賞がないのは、ちょっと気の毒な気もする。

鶴竜は、低く入って右へまわりながらの上手出し投げで、岩木山を破った。鶴竜らしい相撲で9勝目。今場所は、中盤の4連敗が響いたが、来場所はさらに期待したい。

7勝7敗、三役維持がかかる稀勢の里が、またまずい相撲。立ち合い突き放せず、高見盛にすばやく左前まわしをとられた。左四つにはなったが、高見盛は左四つでも相撲はとれる。
高見盛が前へ前へと出ると、稀勢の里は土俵際に詰まって、もう勝負あったかと思われたが、何とか残して、右上手を引きつけ、寄り返した。千秋楽、やっと勝ち越し。
豪栄道の星勘定から、8勝7敗ながら、来場所は新関脇の可能性がある。しかし、NHKの正面解説の北の富士さんが指摘していた通り、こんな相撲をとっているようではだめだ。
今のままでは、長谷川や逆鉾など、あと一歩で大関を逃した関脇、というレベルに達することも難しい。

日馬富士は、うまく組んだと思ったが、把瑠都も右上手はとれないながら、左下手がっちり。
日馬富士がまきかえて右四つになったところを、把瑠都は右で相手の右こまたを持ち上げるようにして、抜き上げた。
把瑠都の大きな相撲が功を奏した一番だが、日馬富士も、勝ち越してややほっとしたのか、いささか不用意な相撲だった。

琴欧洲魁皇は、琴欧洲が立ち合いいい右前まわしをとって、魁皇に上手を与えずに前に出た。上体も前傾しており、いい時の琴欧洲の流れ。
今日はスキのない相撲で、大統領夫妻が観戦する目の前で、2ケタに到達。
しかし、基本的にいい相撲で10勝したとは言え、大関としては、白星があと2つも3つも足りない。この違いは本当に大きい。

千代大海が、豪栄道を激しく突いておいてのはたきで、千秋楽勝ち越し。
それにしても、豪栄道はやや残念な内容だ。勝てば新関脇は堅いという一番、好調の若手としては、もう少し何とか考えた相撲がとれなかったものか。

いよいよ、結び、白鵬朝青龍の大一番。土俵に上がった朝青龍の表情が、昨日までと違って、何か穏やかで淡々としているように見えた。
この一番、優勝云々を別にしても、絶対に白鵬が勝たねばならないと思った。場所前の稽古では、出場さえ危ぶまれ、進退がかかった、強行出場のこの場所、15日間、誰も通じないまま全勝優勝を許す、ということだけは、あってはならないことだと、私は思っていた。
決定戦の末の優勝は、どちらでもいい。とにかく、同じ横綱として、白鵬には、絶対に朝青龍の全勝を阻止してもらいたいと思った。

時間一杯から、朝青龍は、タイミングとしては早く立ったものの、自分の考えていたタイミングではなかったようで、低く当たるでなく、上体が高かった。そして、右も左も、何をしようとするでもない漫然とした立ち合い。
白鵬はすかさず二本差し、向正面にあっさりと寄った。
期待に反する凡戦。調子を上げてきた朝青龍には考えられないような、とんでもない立ち合いだった。
どうしたことか。昨日までの朝青龍とは別人。後半戦の中では、一番悪い相撲をとってしまった。

しかし、朝青龍の失敗は失敗だが、これでなければならない結果だ。調子が落ち加減の白鵬、調子を上げて、昨日はむしろ白鵬よりいい感じだった朝青龍。それでも、白鵬が、問題にしない形で、そうはいかんぞ、と朝青龍をねじふせなければならないのだ。そういう場面だ。

支度部屋に戻った両横綱は対照的。立ち合いの稽古、テッポウに激しく動く朝青龍に対して、静かに目を閉じる白鵬

優勝決定戦の土俵に上がった朝青龍の表情は、またもいつもの気合いと闘争心にあふれるものではなかった。何か、悲壮感が感じられるものだった。

どういう相撲になるのか。
朝青龍としては、本割、決定戦とも敗れてしまっては、もう自分の時代が終わり、完全に白鵬の時代になってしまう。そういう危機感が強いだろう。その危機感は、4連覇、不知火型10回目の優勝を目指す白鵬の意欲よりは強いかもしれない。
であれば、どうしても勝ちたい朝青龍の立ち合いの変化も考えられる。
このところ、昨年の3月場所、5月場所と、この両者の対戦は、ちょっとがっかりする相撲が続いている。4場所ぶりの一番は、とにかく勝敗を別にして、いい相撲であってほしい、と思った。
まともにいくとして、本割の失敗からすると、朝青龍としては、最初から組むことはせず、突いて出てから有利に組もうとするのではないか。白鵬も突きでは応戦できるから、序盤は突き合いになるかもしれないと予想した。

しかし、決定戦の相撲は、その予想とは違った。
今度は、朝青龍が、右も左もすばやく入れてあっさりともろ差し。白鵬は右上手はとったものの、朝青龍は休まず(ここが今場所、不利な体勢になっても負けなかった理由だ。それがこの決定戦でもいい形で出た)、左下手から投げてゆさぶり、さらに頭をつけてから、前に出て最後はつりまで見せて、白房下へもっていった。

決定戦は、朝青龍の一方的な相撲に終わった。
本割、決定戦とも、昨年1月場所の相星決戦、あるいは、今場所の白鵬把瑠都戦のような、互いに一歩もひかない熱戦という形ではなかった。それぞれに一方的な相撲。
取り口をもって、落胆を語るのは簡単だが、やはり、こういう状況で、追う側が、本割、決定戦の2番とも制するのは、相当に難しいことなのだ、と理解すべきだろう。

花道を下がる時から、朝青龍に、珍しい泣き顔が見えた。場所前から、また場所に入ってから、ずっと辛かったのだろう。我慢していたのだろう。それが、決壊したように思えた。

朝青龍の全勝を阻止した白鵬
3場所連続休場の後、進退がかかる場所で、みごとに優勝した朝青龍
横綱とも、値打ちがある、立派な千秋楽の2番だったと思う。

星をいつ落とすか、と思われながら、落としそうで落とさずにきた朝青龍
日馬富士に星を落としてしまった白鵬
その違い。僅か一つの星の違いなのだが、その大きさを、つくづく考えさせられた、今場所の優勝争いだった。

朝青龍は、これでとうとう貴乃花を抜く、優勝23回。
次の目標は、北の湖の24回に並び、抜くことだが、それははたして可能だろうか。
やはり、今場所の朝青龍は、いっぱいいっぱいの状態からの優勝だったように思う。これから、また何度も優勝を重ねることができるかどうか、それは疑問だ。
結果的に最後の優勝になった、北の湖24回目の優勝を、ふと思い出したりする。

しかし、もしできることなら、ここからせめて1年くらいは、両横綱が覇を争い、優勝を分け合うような時代であってほしいと思う。

平成21年、最初の場所。いい幕開けだったと思う。

三賞

殊勲賞 該当なし
敢闘賞 豊真将
技能賞 豪栄道

横綱二人が2敗しかせず、しかも関脇以下には一つも負けていない状況。大関はボロボロだったが、そういう大関相手に何番か勝っても、殊勲賞には値しない。該当なしは、やむを得ない。

豊真将豪栄道の受賞に異議はないが、優勝争いにからんだ栃煌山には何かあってよかったのではないか。もっとも、後半、相撲が崩れすぎたのも確かだが。

番付予想。

三役


西の関脇は難しいところだ。東小結で8勝の稀勢の里を上げるのか、西3枚目で10勝の豪栄道を上げるのか。豪栄道が11勝だったら、間違いないところだったが。
昨日の直接対戦では、稀勢の里が勝っているので、その点も加味すれば、稀勢の里、やっと関脇昇進か。

幕内と十両の入れ替え

幕内からの陥落は、光龍豊響、将司。
十両から上がるとすると、東筆頭で、新十両からの連続優勝の翔天狼、西筆頭で9勝の木村山、東2枚目で10勝の霜鳳は間違いない。
その下にも、東西の3枚目でともに9勝の、若麒麟土佐豊。東4枚目で10勝の豊桜も、幕内下位の星勘定によっては、上がれる成績だ。
問題は、東6枚目で2勝13敗の武州山。11点の負け越しで11枚落ちるとなれば、幕には残れない。若麒麟との入れ替えはありうるが、微妙なところだ。

十両と幕下の入れ替え

陥落は、北桜玉飛鳥の二人しかいない。
昇進は、東筆頭で優勝の福岡、東2枚目で5勝の霧の若の二人か。東5枚目で6勝の春日国も好成績だが、十両からの陥落が他にいない。

来場所に向けての、個人的な期待。

白鵬賜杯奪還。今回は4連覇を逃したが、3月場所から4連覇するくらいであってほしい。

琴欧洲日馬富士に、星の上積みを。
今場所の大関は、琴欧洲だけがやっと2ケタ。琴光喜が2勝しかあげられずに途中休場、あとの3人が、揃って8勝7敗と、相変わらずのふがいなさだ。
この中から抜けてほしいとなると、やはり琴欧洲日馬富士だ。今場所、復調のきざしを見せた琴欧洲、新大関の硬さから抜けられる日馬富士。あと3つ、4つの上積みを望みたい。

琴奨菊朝赤龍豊響の巻き返し。
休場した、安美錦豊ノ島も。しかし、豊ノ島は、3月場所も休場か。

鶴竜栃ノ心栃煌山豊真将の飛躍。4人とも、三役をうかがってほしい。

上がってくる力士では、珍しい十両連続優勝の翔天狼に注目したい。