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68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

ズヴェーデン=ニューヨーク・フィルハーモニック 五嶋龍

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演奏会で持ち帰ったチラシの中に、今回のニューヨーク・フィルの東京公演があり、それを見た妻が、是非行きたいと言う。

2日間の公演プログラムはいずれ劣らぬ魅力的なもので、私としては、ユジャ・ワンブラームスと「春の祭典」に惹かれたのだが、妻が五嶋龍のヴァイオリンを聴きたいと強く希望したため、そちらにした。

日 時 2018年3月14日(水) 18:30開場 19:00開演
会 場 サントリーホール
指 揮 ヤープ・ヴァン・ズヴェーデン
管弦楽 ニューヨーク・フィルハーモニック
ヴァイオリン 五嶋 龍
曲 目 メンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲ホ短調
     マーラー 交響曲第5番嬰ハ短調
     [アンコール] ワーグナー 歌劇「ローエングリン」第3幕への前奏曲

我々の席は、2階C9列14番・15番。ステージからは少し遠い感じがある席だった。

私がニューヨーク・フィルの実演を聴くのは、2回目(3公演目)である。

前回は、1974年9月、大学1年の時、指揮はバーンスタインだった。

この時は、2公演聴いている。

バーンスタインの弾き振りによるモーツァルトのK503、ハ長調のコンチェルトとマーラーの5番。東京文化会館だったと記憶する。

そして、「火の鳥組曲バーンスタイン自作の「ディバック・バリエーション」、「エロイカ」というプログラム。これはNHKホールだったと思う。

この中では、何と言ってもマーラーの5番がお目当てだった。その4年前、大阪万博が開催された1970年に来日した同じコンビが、伝説的なマーラーの9番の演奏を行ったことは知っていたので、「バーンスタインマーラー」が実演で聴けるチャンスは逃すわけにいかない、と思ったのだった。

とは言え、クラシック音楽を聴き始めて日が浅い私は、マーラーの5番を聴いたことがない。その時点でレコードを持っていたのは、2番と「大地の歌」だけだった。

ということで、ワルターニューヨーク・フィルのモノーラル盤を買い求め、夏休みの間、スコアを見ながら何度も聴いて予習し、演奏会の臨んだのだった。

バーンスタインの指揮の、克明だがきわめて自然な手の動きが強く印象に残ったのをおぼえている(今と違って、映像ソフトなどはなかったので、「動くバーンスタイン」を観たのは、この時が初めてだったと思う。情報として知っていた「指揮台でジャンプする姿」も観ることができた)。

44年ぶりのニューヨーク・フィル実演で、図らずもマーラーの5番を再度聴くことになった。

プログラム冊子によれば、ヴァイオリン奏者(ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団コンサートマスター)だったズヴェーデンが指揮者になったのは、バーンスタインの勧めがきっかけだったのだそうだ。私個人としては、その両指揮者の指揮で、同じニューヨーク・フィルマーラーの5番を聴く機会を得られたのは、なかなか感慨深いものがある。

さて、まず、妻お目当ての五嶋龍メンデルスゾーン

アメリカンスタイルで、開演前から楽員が音を出している。

弦は、14・11・9・8・5だったと思う。

ステージから少々遠い席であること、コンチェルトなのでオケが音量を加減していることから、音像は全体にコンパクトな中、ソロはくっきりと聞こえてきた。

鮮やかな演奏、の一言に尽きる。

テンポ、表情は誠に自在で、常にたくましいヴァイオリンだった。

これだけのソロはめったに聴けるものではないと思った。

1楽章のカデンツァの凄み、2楽章の清冽さ。

3楽章は、時折、ケレンというのではないが、思い切ったスパイスを加える技を見せてくれて、胸のすくソロだった。曲が終わってしまうのがもったいなく、いつまでも続いてほしいと願いたくなるような演奏だった。

カーテンコールを重ねて、最後は、楽器を持たずに現れ、ソリストアンコールはなかった。

このヴァイオリニストのソロで、もっと重厚感のある、ブラームスのコンチェルトなどを聴いてみたいと思った。
(場内販売で、そのブラームスのDVDを見つけたので、買い求めた)

妻も感服したとのことで、客席の聴衆が誰も微動だにしなかったと言っていた。私もその一人。

(休憩時、2階のドリンクカウンター近くの立ちテーブルで、そんな話をしていたのだが、隣のテーブルに小泉純一郎氏がいた)

20分間の休憩の後、マーラー

ステージ上、所狭しと楽員がびっしりと並ぶ。

ヴァイオリンなどは、あまり多くて数えきれなかったが、18・15・11・12・8だったか。

ヴィオラは中配置。

優秀なオケで、マーラーの5番を存分に楽しんだ、という感じの時間だった。

トランペットもホルンもすばらしい音を出していた。

オーボエクラリネットは水平吹き。遠目に一瞬トランペットがあんなところにいるのか? と思ってしまった。

5楽章からなるこの曲は、第1部(1・2楽章)、第2部(3楽章)、第3部(4・5楽章)の三部構成でもある。

アタッカで演奏された4楽章、5楽章が、メロディの共通性など、第3部として一体のものであることが、よくわかる演奏だった。

5楽章がブラームス風であることは以前から思っていたが、この日の実演では、バロック的でもあると感じた。

それにしても、全曲の終盤、あの光彩陸離たるコーダに至っても、いささかの疲れも見せない、オケのスタミナ、パワーには驚いた。

アンコールはないかも、と思っていたら、カーテンコールの間に、ヴィオラのトップ奏者が指揮台の譜面を何やらめくっている。

ローエングリン」3幕前奏曲が演奏された。

あのマーラーの後にこれをやるか? とびっくり。

金管群はまったく余裕たっぷり。すごかった。

「何なら、マーラーをもう1回演奏できるよ」と言いたげに見えた。

(終演後、2階の最前列にいた小泉氏が階段を上がって来て、「いやー、すばらしかったねえ」とおっしゃりながら出口に向かって行かれた)

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    マーラー交響曲とのつきあい
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    大学1年の夏~マーラー5番、シベリウス2番
       https://blogs.yahoo.co.jp/naokichivla/62523301.html