今年の宇奈月オペラ(10月東京公演、11月宇奈月温泉公演)の演目である「ドン・ジョヴァンニ」をこのところ繰り返し聴いている。
先月、二期会の「魔笛」の実演に接し、やはりモーツァルトのオペラの中で「魔笛」が特別な存在であるとの思いを強めたが、ストーリーの面での欠陥は否めぬところであり、オペラとしての円満さでは「フィガロの結婚」や「ドン・ジョヴァンニ」の方が上だと感じている。
そんな「ドン・ジョヴァンニ」を繰り返し聴き、やっぱりこのオペラはすごい、とそのたび思っているのだが、数日前、クレンペラー盤を聴いていて、ふと思った。
このオペラの大詰めで、ドン・ジョヴァンニと騎士長が激しくやり合う場面から地獄落ちにかけての音楽って、それまで絶対になかった類いのものではないか。
これだけドラマティックで肺腑をえぐるような音楽は、モーツァルトとしても初めてだったのではないかと思うし、オペラとしてもこんなタイプの深刻な音楽はかつてなかったのではないだろうか。
まさに前代未聞の音楽だったのではないか、と思ったのだ。
(クレンペラー盤でのここの演奏は、とてもえぐりのきいた立体的なものですばらしい)
それで思ったのは、このオペラが初演された当時、聴衆にはどう受け止められたんだろう、ということだ。
さぞかし衝撃的なもので、もしかすると前衛的と受け取られたり、理解不能の音楽と受け取られたりしたのではないか、などと思う。
手元にある音楽書によると、プラハ初演は好評だったという。
ほんとかなあ。
もう少し調べてみよう。