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東京フィルハーモニー交響楽団 第146回東京オペラシティ定期シリーズ

20日(金)、東京オペラシティコンサートホールで行われた、東京フィルハーモニー交響楽団の演奏会を聴きに行った。

 

 

東京フィルハーモニー交響楽団 第146回東京オペラシティ定期シリーズ

日 時 2022年5月20日(金) 18:15開場 19:00開演

会 場 東京オペラシティコンサートホール

指 揮 チョン・ミョンフン

管弦楽 東京フィルハーモニー交響楽団

曲 目 フォーレ 組曲ペレアスとメリザンド

    ラヴェル 「ダフニスとクロエ」第2組曲

    ドビュッシー 交響詩「海」-管弦楽のための3つの交響的素描

    ラヴェル 管弦楽のための舞踏詩「ラ・ヴァルス」

 

実にすばらしいプログラムではありませんか。

フランスもののプログラムは色々見るが、私の好みからすると、この4曲のチョイス、そして配列は完璧に思える。

 

私の席は2階C5列10番。最後列だが、舞台がよく見渡せる。

 

弦は10・8・8・6・5に見えた。小編成だな、と思ったら、2曲目のラヴェルで各パート1プルトずつ(コントラバスは1人)増えた。

譜面台はプルトに1台。もうプロオケではどこも例外なくこの扱いになったようで、いちいちこうして書くこともないようだ。
マスクは任意。

 

フォーレの「ペレアスとメリザンド」は久しぶりに聴いた。気品と節度のある実にいい曲だと改めて思う。

 

次は「ダフニスとクロエ」の第2組曲

 

大学時代、ラヴェルの音楽を聴き始めた頃に特に気に入った曲だ。いくつか思い出がある。
何年生の時だったか、若杉弘指揮の上智大学のオーケストラがこれを演奏した時に聴きに行った。見事な演奏だったが、それ以上にプログラムが非常にしゃれていたことで、今でも記憶に残っている。ベートーヴェンの4番、ヴェーベルンの確か管弦楽のための5つの小品、「ダフニス」というものだった。若杉氏の発案とプログラム冊子に書かれていた。
それから、就職して3年目だったか、会社の友人がステレオを新しく買うということで、一緒に秋葉原で選んだことがあった。購入したステレオセットが友人宅に設置されたのにも立ち会ったが、そのステレオで最初に鳴らす音楽は「ダフニス」の「夜明け」がいいと勝手に提案し、持って行ったブーレーズクリーヴランド管のレコードをかけたのだった。

この組曲を実演で聴くのはいつ以来だろう。まさかあの上智のオーケストラ以来ということはないと思うが。

 

合唱がついていればいいのに、と思いつつも大変満足しながら聴いた。

 

沸き立つように曲が終わって、すぐに拍手が出たのはやむを得ないところだが、ホールに残る最後の和音の残響を味わいたかった。

 

チョン・ミョンフンの指揮は、動作が控えめだ。オケをあおったりするような派手な動きはまったくない。客席にお辞儀をして向き直るとすぐに演奏に入るのは、カルロス・クライバーを思い出させる。

 

最近の演奏会には珍しく短めの15分の休憩の後、ドビュッシーの「海」。

 

ドビュッシー派かラヴェル派かと言えば、迷いなく後者と答える私だが、この「海」は好きな曲だ。
充実したこの傑作を生で聴けてよかった。

 

それにしても、ドビュッシーと言い、ラヴェルと言い、月並みな表現になってしまうが、オーケストラというパレットの色彩を存分に使っているとつくづく感じる。ハイドンモーツァルトの時代のオーケストラ音楽とは相当に違う形で咲いている花だ。

 

最後は「ラ・ヴァルス」。ラヴェル管弦楽曲の中で、もしどうしても1曲を選べと言われれば、私の場合、やはりこの曲になる。

 

この日の4曲の中では、一番自在さのきわだつ演奏だったと思う。

 

これまたあまりにも月並みなことだが、改めて感じたので一言。日頃、音楽はウォークマンを使って聴いている。好きな時に好きな曲を聴ける利便性は代え難いものだが、その好きな曲をこうして実演で聴くことの重みには、また破格のものがある。「ラ・ヴァルス」を、ウォークマンのイヤホンで聴きながら帰ろうという気になれないのだ。それがたとえ名だたる名盤であっても。

 

短めのプログラムだったので(プログラム冊子に表示された演奏時間を合計すると約70分)、何かアンコールがあるだろう、と勝手に思っていた。例えば「ボレロ」とか? いややっぱり「ラ・ヴァルス」の後を締めるなら、「亡き王女のためのパヴァーヌ」か、などと想像していたのだが、結局なかった。

 

カーテンコールが繰り返される中、指揮者が1階の前の方の客席に向かって何か言っている。客席の女性が「BRAVO」と書かれたタオルを掲げていたのだが、それを持ってきてくれ、と言ったようで、女性からタオルを受け取ると、それをオケの楽員たちに向かって掲げた。

 

さらに、弦各パートの1プルトの奏者たちとは握手を交わしていた。最近は、肘タッチをよく見るが、そうそう、別に握手でいいじゃないか、と我が意を得た思いだった。

 

最後、コンマスに退場を促して楽員と一緒にステージからはけたが、鳴り止まない拍手に、上着を脱いだ格好で楽員と再び戻ってきて、全員で何度もお辞儀をしていた。

 

茂木大輔さんの著書「交響録 N響で出会った名指揮者たち」には、チョン・ミョンフンも出てくる。茂木さんにとっては「世界で一番好きな指揮者」の一人なのだそうだ。その指揮者と多数の演奏会で共演できる東京フィルが羨ましいとも書かれている。
このコンビの演奏を今後も聴いていく機会があればと願う。

 

規制退場はなし。

 

さて帰ろうと思って、眼鏡がないのに気づいた。舞台を見る時は眼鏡を外してシャツの胸ポケットに挿すのだが、それがない。
ホワイエに出て、衣類のポケットや鞄の中などをさがしてもない。
客席に戻ると、女性のスタッフが座席の点検をしている。座席の下のどこかに落ちていないかとさがしていると、声をかけてくれたので、事情を話し、一緒にさがしてもらった。カーテンコールの際に、前の列が空いたので、そこへ移動したのだが、その時にさらに前の列の座席の下に落ちたらしい。無事に見つかって安堵。

 

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