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68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

フランソワ=グザヴィエ・ロト指揮レ・シエクル

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12日(日)、フランソワ=グザヴィエ・ロトが指揮する、レ・シエクルの演奏会に行ってきた。

●フランソワ=グザヴィエ・ロト[指揮]レ・シエクル《春の祭典

日 時 2018年6月12日(日) 18:20開場 19:00開演
会 場 東京オペラシティコンサートホール
指 揮 フランソワ=グザヴィエ・ロト
管弦楽 レ・シエクル
曲 目 ドビュッシー 牧神の午後への前奏曲
     ドビュッシー バレエ音楽「遊戯」
     ラヴェル ラ・ヴァルス
     ストラヴィンスキー バレエ音楽春の祭典
     [アンコール]ビゼー 「アルルの女」第1組曲からアダージェット

6日前に荘村清志さん他の演奏を聴いたホール、今回の席は、2階C3列の17番。1列前の17番に、片山杜秀氏が座った。左右の人たちとは連れでないものの知り合いのようで会話をかわされていたので、この列が評論家席?

ロトとレ・シエクルは、いわゆるHIPの代表的な存在で、私も、「春の祭典」や、サン=サーンスの3番のCDは買って聴いた。

この演奏会に行きたいと思ったのは、曲目が魅力だったこともあるが、それ以上に、この団体の音を実演で聴いてみたいと思ったからだ。一体どんな響きがするのだろう、という興味だった。

会場に入ると、アメリカンスタイルで、既に多くの楽員が座って音を出している。コンサートマスターもいる。

弦は対向配置だが、ヴィオラが下手側、チェロが上手側となっている。コントラバスは上手側。

チューニングの際、オーボエ奏者は起立して、木管金管側を向いたり、弦の方を向いたりして、Aの音を出した。「遊戯」と「春の祭典」の時は、A音でチューニングをした後、Bの音を出し、これに金管が合わせた。こういうチューニングは初めて見た。ピッチは低くないように思われた。

「牧神の午後への前奏曲」から。

一体どんな響きが、と思いつつ聴いた耳には、思ったより普通のオケの音だな、という印象だった。

個人的な聴体験で言うと、ホグウッドやブリュッヘン古楽器オケを振った、モーツァルトなどの録音を聴いた時に、ピッチが低いことや、潤いのない響きが、それまで聴いてきたカラヤンワルターモーツァルトとは、まったく別ものの感じられたのを思い出す。

実演経験でも、もうだいぶ前になるが、バッハ・コレギウム・ジャパンの「メサイア」を聴いた時にも、ピリオド楽器ならではの響きを印象的に受け止めた。

そうした体験と比較すると、レ・シエクルの音は普通に感じられたのだが、それも当然かもしれない。この指揮者、団体のコンセプトは、作品に合わせてそれぞれの時代に使われていた楽器を使うことにあるそうだから。ピリオド楽器ドビュッシーを演奏する、という理解は誤りなのだ。

プログラム冊子から。

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所属オケで本番を終えたばかりだが、この「牧神」を聴きながら、つい2日前に弾いたチャイコフスキーラフマニノフと比べて、ずいぶん違う音楽だなあ、と思ったりした。

次の「遊戯」は、この演奏会のプログラムの中では、一番なじみが薄い。ブーレーズソニー盤の「海」にカップリングされているので、時々聴く程度だ。

武満徹の音楽とドビュッシーの親近性が指摘されるが、この曲の終わりのあたりでは、「あ、武満徹」と感じる部分があった。

ドビュッシー2曲を聴いて感じたのは、とても克明な演奏だ、ということだ。

それと関連して、2曲聴いて、この団体の響きについての印象は、「細い糸で編まれたような響き」。決して太い毛糸ではない。

別の表現をすると、「木の質感」。やすりをかけて磨いてあるが、ニスを塗ったりはしていない。素のままの木材の手ざわり。

決して厚ぼったい響きにはならない。

普段聴くオーケストラに比べると、やはり色彩感やつやのようなものは少ないように思う。

次のラヴェルは、誇張や外連のない、すっきりした音楽作りで、とてもよかった。

この曲で気がついたのは、木管が目立ったこと。弦は、各パートがまとまって、余り音像が大きくないのだが、木管は1本1本が飛び出て聞こえてくる。興味深かった。

休憩後は、メインの「春の祭典」。

この曲でも、木管が目立つのは変わらない。金管ですら突出した感じがなく曲が進行する中(後半は迫力を感じたが)、木管が勝っている響きは面白い。

先にも書いた通り、普段聴くオケの音に比べると、くすんだ感じはあるが、それが、「春の祭典」が持つ野趣を引き立てているように思った。

響きの話に終止しているが、それを別にして、この「春祭」は、とてもすぐれた演奏だと感じた。オケの一体感がきわだつ。打楽器が特によかった。

カーテンコールの後、指揮者が日本語でMC。打楽器の女性が日本人だと言って紹介。

その後、「ささやかなサービスです」と言って、アンコール曲。

ヴィオラのC音を聴いて、え? と思った(それまでの曲目から)が、ビゼーのアダージェット。

途中の弱音が、染み入るように美しかった。

最後は、楽員同士が握手し、ハグし合う珍しい光景の中、終演した。

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行ってよかった、と思う演奏会だった。

※過去の関連記事
    バッハ・コレギウム・ジャパン「聖夜のメサイア
       https://blogs.yahoo.co.jp/naokichivla/21222811.html