naokichiオムニバス

66歳会社員。ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

東京フィルハーモニー交響楽団 第959回オーチャード定期演奏会

19日(日)、オーチャードホールで行われた東京フィルハーモニー交響楽団の演奏会に行ってきた。

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渋谷駅からホールに向かう。
毎日テレビのニュースで観るスクランブル交差点。
これで緊急事態宣言下なのかと思うような人出だ。
その人出の一人として渡った。

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東京フィルハーモニー交響楽団 第959回オーチャード定期演奏会

日 時 2021年9月19日(日) 14:15開場 15:00開演
会 場 Bunkamuraオーチャードホール
指 揮 チョン・ミョンフン
管弦楽 東京フィルハーモニー交響楽団
曲 目 ブラームス 交響曲第3番ヘ長調
    ブラームス 交響曲第4番ホ短調
    [アンコール] ブラームス ハンガリー舞曲第1番ト短調

 

ブラームスのシンフォニーの2曲プロである。

 

全曲チクルスであり、7月に1番と2番が演奏されているが、何故この時は行かなかったんだろう。
振り返ってみると、この時期、父の十三回忌と、神戸で葉加瀬太郎のコンサートを聴く予定(コロナで8月に延期)があったので見送ったのだったか。

 

私の席は3階L8列3番。

 

このコンビの演奏を聴くのは2回目。前回は、昨年2月、サントリーホールで行われた「カルメン」の演奏会形式上演だった。

 

ヴィオラは外配置。弦の譜面台はプルトに1台。
下手が見切れているのでわからないが、14型か。
楽員はマスクを着けて入場したが、着席すると全員が外した。
ヴィオラのトップは須田祥子さん、トップサイドは須藤三千代先生。

 

私の席からだと、前の人の頭がちょうどヴィオラの1プルトと指揮者にかぶる。
休憩時、左に座っていた2人連れが別の席に移動したので、8列1番に座らせてもらった。これだと大丈夫。

 

3番。

 

チョン・ミョンフンは、ステージに登場して客席に一礼、振り返るとすぐに降り始めた。カルロス・クライバーのようだった。

 

1楽章と2楽章の間に長い間が置かれたが、その他の楽章間はほとんどアタッカだった。

 

オーケストラをたっぷり鳴らしたスケールの大きいブラームスだった。

 

ところで、ブラームスの3番という曲。

 

4曲の中でなじむのが一番遅かったのが、この曲である。
高校時代に最初にレコードを買ったのが、ご多分に漏れず1番。
大学オケで2年生になる直前の演奏旅行のメインが2番だったこともあり、2番を一番聴きまくった。
フルトヴェングラーやバルビローリで全曲を揃えていて、3番も聴いていなかったわけではないが、本格的に私の視野に入ってきたのは1976年、大学3年の秋に新譜としてリリースされたケンペ=ミュンヘン・フィルのレコードを買ったあたりからだ。

 

それでも、4曲中では一番地味な曲という印象で、その後もなじみ薄いままに過ぎてきたのだが、4曲ひと通りの演奏経験も積み、年齢を重ねる中、思いが変わってきた。
今現在では、4曲の中で一番好きなのはこの3番だ。

 

第2楽章の滋味を何と形容したらいいだろう。
(エルガーの弦楽セレナーデの第2楽章を思い出す。共通点を感じる)

 

その第2楽章を始め、この3番は、全曲にわたって誠にブラームスの練達のペン、という他はない。
特にトロンボーンの使い方にそれを感じる。トロンボーンと言うと、例えばドヴォルザークの「新世界」などのように威勢良くブカブカと鳴らしまくる場面を想起するが、このブラームスの3番での控えめな使い方は実に個性的で味わい深いと思う。

 

第4楽章のコーダ、Pからのメロディが同じ楽章の練習記号Aから発したものであることは以前から理解していたが、今回の演奏を聴いて、第2楽章の56小節目以降、あるいは練習記号Gのエコーでもあると感じた。

 

ブラームスのシンフォニーはどの曲もそうだが、クラリネットヴィオラがほんとに魅力的だね。
なのに、曲が終わってから、指揮者が立たせたのはホルンとオーボエのトップだけだった。あの第2楽章のすばらしかったクラを立たせないのは何故?

 

休憩後の4番。

 

チョン・ミョンフンは、今度は第1楽章を始める前に長い間をとった。
全員の意識が一点に集中したところで始めたという感じだった。

 

うねる音楽。オケ全体で呼吸をしているようだった。

 

私の場合、ブラームスの4曲の中では、この4番には聴くのも弾くのも一番苦手意識があるのだが、こういう演奏を聴いていると、ああまた4番を弾きたい、いや、何番でもいいからブラームスのシンフォニーを弾きたい、という気持ちに突き動かされる。

 

第2楽章。木管がいいのはブラームスのシンフォニーすべてに言えることだが、この4番の第2楽章の前半は特にすばらしい。

 

88小節目からの弦セクションの響きの深さにも圧倒された。すごみのある響きではない。深い深い音だった。

 

第3楽章のトライアングルは、ブラームスのシンフォニーで、ティンパニ以外に使われる唯一の打楽器である。
普通、トライアングルが使われるのは、賑やかに打楽器群が活躍する場面が多いが、3番でのトロンボーン同様、ブラームスの使い方は独特だ。どうしてもトライアングルだけが、どうしてもここでだけほしかったのだろう。
ヴィオラの須藤先生が、演奏会に向けてのインタビューで、宗教画の上の方で音楽を奏でている天使のイメージと言われていたが、なるほどと思った。

 

チョン・ミョンフンの指揮は、個々のパートを細かく拾うように指示をすることがない。オケ全体を自分が目指す方向に動かしていこうとしているように見える。

 

決めどころでのティンパニに快感を与えられた。4番には少々うるさかったかもしれないが、1番、2番ではさぞかし効果的だっただろうと思った。

 

曲尾のヘミオラが、3番冒頭のヘミオラのエコーのように聞こえた。

 

3番、4番、どちらも充実しきった演奏だった。

 

カーテンコール。
チョン・ミョンフンがステージ前方、客席の方へ向かって行ったので、前列に知り合いでもいるのかと思ったら、そこから向き直ってオケに拍手を送った。

 

何度目かのカーテンコールで、指揮者が出てきて指揮台に向かうところで楽員が楽器を構えたので、何かやるなと思った瞬間、ハンガリー舞曲の1番が始まった。

ブラームス・プロのアンコールとしては、ありがちな選曲。ああ、これか、と思った次の瞬間、冒頭部分の弦の深い響きに驚かされた。
以後のテンポの緩急、強弱の波、この曲のこんなに自在な演奏は聴いたことがない。誠にお見事という他はなかった。

 

その後、指揮者が弦の各パート1プルトの奏者と握手。今どきは肘タッチが普通だが、握手だった。

 

楽員が一旦ステージからはけた後、規制退場を指示するアナウンスを無視するように拍手が続き、チョン・ミョンフンだけでなく楽員も再度出てきて客席に向かって一礼。

 

すばらしい演奏会だった。7月の1番、2番に行けなかったのが悔やまれる。