1月31日(水)、世田谷文学館で開催されている、「江口寿史展 ノット・コンプリーテッド」を観に行った。
江口氏の大規模展覧会は、昨2023年1月に千葉県美術館で開催の「彼女」、4月に東京ミッドタウン日比谷で開催の「東京彼女」に行った。
その前、2018年7月には、銀座のスパンアートギャラリーで開催された「step」に行って、在廊していた江口氏にサインをもらったこともある。
今回の「ノット・コンプリーテッド」は、昨年9月30日(土)から今年2月4日(日)の長期間にわたって開催された。
リタイアの身なので、いつでも行けると思いつつ時が過ぎ、気がつけば会期末が近づいてきているので、いい加減行かねば、と出かけた。
芦花公園駅で下りるのは、確か2001年の秋に仕事で来て以来。
世田谷文学館はもちろん初めてだ。
入場券を買う。一般が1,000円のところ、「65歳以上、高校・大学生」のくくりで600円。
何と安い。
2階が展示室になっている。
展示室入口。
江口氏の「ごあいさつ」には、タイトル「ノット・コンプリーテッド」の意味や、この展覧会の意図が書かれている。
江口氏のキャリアは、漫画家としてスタートし、その後、イラストレーターとしての活動が中心になっている。過去私が観に行った「step」「彼女」「東京彼女」は、いずれも「イラストレーション展」と銘打たれていた。
これに対して今回の展覧会は、「漫画家江口寿史」の時代を対象としている。
以前から江口氏は、イラスト中心の活動を行いつつも、自分は元来漫画家である、いずれまた漫画を描きたい、と言ってきたと記憶する。
「ノット・コンプリーテッド」には、そういう意味もあるのではないかと、私は勝手に想像している。
ということで、展示室は漫画作品の原画であふれていた。また、「ごあいさつ」にあるように、断片的な原画展示でなく、(連載作品は別にして、短編作品は)作品全体が「読める」展示だった。
会期末が近いこともあって、平日だが観覧者はそこそこおり、順路に従って動きつつも、個々の作品のセリフも読みながらになるので、しばしば渋滞した。
過去の展覧会同様、撮影自由(ごく一部は撮影禁止だった)。
「ストップ!!ひばりくん!」
「すすめ!!パイレーツ」
昨年1月の千葉県美術館の「彼女」展では、千葉開催ということで、「パイレーツ」の扉絵の特別展示があったので、一部はその時観ている。
↑ 「パイレーツ」のラストページ。
「パイレーツ」の連載は1977年スタート、「ひばりくん」は1981年。
この2作品の当時のコミックは、木更津の実家にまだ置いてある。
その他の作品の数々。
展示のイラストも、漫画家時代のもの。
原画と、その色指定を並べた展示。色見本には「DIC」のマークがある。大日本印刷だろうか。
↓ この作品は、ダンディな父親編もあるが、写真を撮りそびれた。
ジョイナー。時代だね。
伝説の未完作品、「パパリンコ物語」。再開完結することがあれば、改めて最初から読みたい。
江口氏は、ちばてつや氏を敬愛していたようだ。
しかし、こうして大量の漫画の原画を観ると、やはり漫画家としての江口寿史の表現領域とイラストレーターとしてのそれは、相当に違うという気がする。
別もの、ではない。
どちらも江口寿史というクリエーター、同一人が生み出したものなのだから、別ものではない。
ただ、例えば、ある作曲家が、大編成のシンフォニーもピアノ独奏曲も書くようなものと言えないだろうか。どちらもその作曲家の音楽であることに違いはないが、シンフォニー、ピアノ曲、それぞれのジャンルにおいて、比類のない高みにある作品を作った、というような。
江口氏で言えば、「ギャグ漫画」と「イラストレーション」、彼が到達したそれぞれの世界だと感じる。
またもう1つ、画風の変遷はあると思う。「パイレーツ」や「ひばりくん」のような、ギャグ漫画の領域でのシンプルな絵からスタートして、時代を経るにつれて、後のイラストレーター江口寿史に近づいてくる。リアルさ、美しさを増してくる。「パパリンコ物語」も既にそうだし、前掲の理想の母親像の漫画などはとりわけそれを感じる。
これは、これだけまとめて原画を観る機会を得てこその興味深いことだった。
神保町のホテルに缶詰めになっていた時の部屋の再現もあった。
展示室には1時間ほど滞在して出た。
1階ロビーに下りる。雰囲気の良いところだ。
↑ 写真正面、中央あたりがグッズ売場。クリアファイルを買った。
芦花公園駅へ戻る。
↑ ロータリーのここに掲示板
「幸せな時間」だった、と言うに尽きる。会期中、展示内容は変更されていたようだ。
もっと前に一度来ておけばよかった。
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