naokichiオムニバス

68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

11月場所千秋楽の土俵から

11月場所一番のサプライズは、千代大海の休場。
わずかではあっても優勝の可能性が残っていた大関の休場で、白鵬5回目の優勝が自動的に決まってしまった。
こういうケースは初めてらしい。
確かに、昨日の白鵬との一番、相当右腕をきめられてはいたが、相撲がとれないほどのケガになるとは。
その一番の当事者である白鵬にしても、自分がケガをさせたことで優勝が決まるというのは、ちょっと寝覚めの悪い思いかもしれない。
しかし、千代大海、どうしても土俵に上がれなかったのだろうか。
つい、平成13年5月場所の貴乃花を思い出してしまったが、貴乃花については、あそこでの強行出場が力士生命を縮めたとも言えるから、まあ、何とも言えないところではある。
しかし、優勝争いについて気が抜けたことは確かだ。

境澤が、13勝2敗同士という、レベルの高い決定戦を制して十両優勝
来場所の入幕は、番付の位置からしてちょっと厳しそうだが、来年前半には、豪栄道栃煌山に並び立つところまで上がれるだろう。

露鵬栃煌山
露鵬の変化も悪いが、食う栃煌山もいかにもまずい、という一番。
栃煌山、ケガの影響で万全の相撲がとれないとすれば、何とか1日も早く治してほしい。
露鵬は10勝したが、今日のようなほめられない相撲が何番かあったので、評価できない。

普天王若ノ鵬
若ノ鵬がはたきの相撲。
これが決まって勝ててしまうのも、本人のためにはよくないことだ。
新入幕で2ケタは、星としては立派なものだが、露鵬同様、内容的にほめられない相撲を含んでいる。
周囲のちゃんとした指導を望みたい。
今場所の若ノ鵬、惜しくもヌケヌケを逃した。12日目の黒海戦が黒星であれば達成だったのだが。

玉春日海鵬
玉春日が3勝7敗から終盤5連勝で勝ち越し。今日もこの人らしいいい相撲だった。

栃乃洋把瑠都
がっぷり左四つの熱戦。しかし、把瑠都は、こういう形になると案外攻め手がないということがよくわかった。
最後、土俵際に寄り立てた時、両まわしを放して胸を突きにいったのはよくない。これを残されてまったく危なかったが、把瑠都が肩越しに左上手をとっての強引な投げで勝負が決まった。
勝敗は、ほんのわずかの分かれ目で決まったことであって、把瑠都の相撲はほめられるものではない。
把瑠都としては、この相撲で11勝できたことや、敢闘賞を受賞できたことを喜んではならないと思う。
この相撲は負けていたと思わなければならない。
いい気になってもらっては、将来のためによくないのだ。
この人も、周囲がきちんと指導すべきだ。

出島=豊ノ島
いい相撲だった。
いつも後半になると、あっけない負け方をする出島が、千秋楽までねばりのある相撲が出たというのは大したものだ。

稀勢の里時天空
稀勢の里が左四つからのがぶりで9勝目。
いつも書くが、NHKの放送が連日こぞって言うほど、稀勢の里の相撲がいいとは、全然思えない。何でそんなにほめるんだろうか。
今日の相撲でも、左四つからのがぶり寄りは、琴奨菊の方がどう見ても上だ。
左四つに組んでからの寄り身に安定感や威力がない原因は、右上手の引きつけが甘いことだ。
それが仕方ないとしても、左下手を引きつける四つ身をもっと身につけるべきだ。四つ相撲は、基本的に上手まわしで力を出すものではあるが、それは、下手がきちんと機能していてのことだ。稀勢の里の左四つは、そのどちらにもこれというものがない。
加えて、いつも上手がとれるとは限らない(とろうとしているとも限らない)ことで、なおさら安定感に欠ける。
あと、琴奨菊との差は、腰の突きつけ方だろう。

雅山豪栄道
雅山のはたきに豪栄道がもろく落ちてしまった。今日の相撲は期待はずれ。
8勝止まりだが、まあ、入幕2場所連続での勝ち越しは立派だ。
来場所は、さらに上位でどういう相撲を見せてくれるか。
雅山も7勝8敗は惜しかった。

琴奨菊豊響
豊響が今日もいい押しを見せたが、途中で珍しくちょっと引いてしまったのが悪く、左四つに組まれてしまった。
豊響は惜しくも負け越し。
しかし、同い年で、相撲のタイプが違うこの二人、今後の対戦が毎場所楽しみだ。

安馬若の里
千代大海の休場で、三役そろい踏みに繰り上がった一番。こういうのも珍しい。ちょっと過去に記憶がない。
安馬は、最後にきて調子を戻した。
左を入れて右は前まわし。速攻で若の里に何もさせなかった。
これで2場所連続の2ケタ。ファンの一人として、NHKが言うほど、すぐに大関と騒ぐ気にはなれないが、もう2、3場所この好調が続けば、期待したいところだ。

安美錦朝赤龍
安美錦がうまさを見せて勝ち越し。
まあ、これは、今場所の両者の状態からすると仕方のないところだ。

魁皇千代大海の休場で、思わぬ9勝目。何があるかわからないものだ。

白鵬琴光喜
結びの一番は、既に優勝が転がり込んだ白鵬にとって、13勝2敗での優勝か、12勝3敗かでは大きく違うので、何としても勝つべき相撲だったが、結果は最悪。
白鵬の今場所今ひとつの内容が、最後も出たという感じだ。
右四つになったものの、上手をとれず、しかももろ差しを許してはいけない。横綱としては、悪い体勢からも何とかしのいでほしかったが、結局後手にまわったまま、ぶざまに投げられてしまった。
白鵬としては、連続優勝の喜びなどふっとぶ敗戦だっただろう。
おそらく、優勝インタビューで自ら言っていたように、思わぬ優勝の決まり方で、気合いが乗らぬ部分があったのは事実だろう。
しかし、負けてみて、その重さを痛感したのではないか。
初日に弱いと言われる白鵬、今場所は、中日、千秋楽にも負けての12勝3敗。3敗のすべてが日曜日という珍しい星取となった。
琴光喜側からすると、立ち合い左上手が速かったのが一番よかった。これで2ケタ。来場所が正念場だ。
それにしても、白鵬琴光喜とも、昨日の相撲は何だったのか、という感じがする。特に琴光喜だ。魁皇にあんな負け方をした人が、こういう相撲がとれるとは・・・。

三賞

殊勲賞 安馬
敢闘賞 把瑠都
技能賞 琴奨菊

新入幕の若麒麟が2ケタ勝ったのに何もなかったのは残念。仮に把瑠都が今日負けて10勝止まりだったとする。新入幕で10勝した場合の若麒麟とどちらが、と考えると、把瑠都に敢闘賞を与えるなら、少なくとも若麒麟勝って2ケタなら敢闘賞、という条件つきにしてもよかったのではないか。
あと、既に2ケタ勝っている出島にも敢闘賞の声はあってしかるべきだっただろう。
殊勲賞に関しては、4大関を総なめにした時天空も受賞させてよかったと思うが。

番付予想。

三役-平幕の入れ替え

    東     西
横綱  白鵬   朝青龍  
大関  千代大海 琴光喜
大関  魁皇   琴欧洲
関脇  安美錦  安馬
小結  琴奨菊  稀勢の里

朝赤龍一人分の枠しか空かない。出島に久しぶりの三役復帰の可能性もあるが、東2枚目9勝の稀勢の里と西2枚目10勝の出島。難しいところだ。将来性を買えば稀勢の里ということになる。

幕内-十両の入れ替え

陥落 白露山春日錦時津海引退の空席
入幕 岩木山、霜鳳、市原
境澤はちょっと届かないだろう。14勝の優勝だったら可能性はあったが。
他に陥落の可能性としては、下6枚の嘉風の4勝11敗がいるが、上がる力士が見あたらない。西8枚目で10勝の光龍の抜擢が考えられないではないが。

十両-幕下の入れ替え

陥落 十文字、旭南海、磋牙司、芳東、時津海引退の空席
昇進 栃ノ心、木村山、玉鷲、八木ケ谷、霧の若
陥落力士が多いので、玉鷲、八木ケ谷はラッキーな昇進となる。

さて、年明け、平成20年については、何と言っても朝青龍の復帰がポイントになる。
朝青龍不在の2場所は、もう一人の横綱である白鵬が優勝して、何とか格好はついた。
朝青龍については、事件が起きてからもうかなりの日数がたち、しかも日本に不在ということもあって、人の噂も七十五日的な状況になったところにもってきて、時津風問題が起きた。
協会もマスコミも、巡業すっぽかしやサッカー遊びに目くじらをたてていた時期もあったが、人が死んだ事件があっては、どうにもトーンダウンせざるを得ない。
朝青龍の、治療の状況がどうなのか、また、ここまでにどれだけトレーニングをして復帰に備えているのか、そのへんの情報が少ないのが残念だ。
復帰早々、来場所で優勝することがあるのかどうか、よくわからないが、もしそうしたことがあれば、何か現在の相撲界の底の浅さが見えてしまうような気がする。
そう簡単に好成績はあげられない、というふうであってほしいと思う。そこからまた苦心して、次の場所、あるいはその次の場所で優勝する、というところがあってこそ、本人のためにも角界のためにもいいのではないかと思う。

一方の白鵬だが、何とか朝青龍不在の2場所を連覇したのは、最低限の責任を果たしたと言える。
しかし、その内容には必ずしも満足できない。
白鵬は、今年4回の優勝、また74勝での年間最多勝も立派なものだ。
ただ、どうしても、絶対的な、爆発的な、手がつけられないような強さを感じさせるには至っていない。
今年1年で、角界における「相対優位」のポジションは確立したと思うのだが、「絶対優位」の存在ではまだない。
人にはそれぞれタイプというものがあり、三振をばったばったととる剛球投手もいれば、打たせてとる技能派もいる。
どちらであっても、完投でき、年間15勝以上できるのであれば、文句なしのエースだ。
白鵬も、別に剛球投手タイプでなければならない、というものではないのだが、ここ2場所の内容を見ていると、どこか常に危なっかしさを残しているのが物足りないのだ。
それでも連続優勝しているところが、相対優位の最たるところではあるのだが、白鵬にはもっと高いものを望みたい。

いずれにせよ、両横綱が揃う1月場所、レベルの高い優勝争いを望みたい。
大関については、千代大海の予想外の健闘はあったが、これが続くとは思えず、しいて期待するとすれば琴光喜しかいない状況では、やはり安馬琴奨菊を始めとする、生きのいい若手の活躍の方に楽しみを見いだしたい。

何度も書いてきたことだが、外国人力士の不定形の相撲が、今場所はずいぶん気になった。
本人たちにしてみれば、1力士として、勝つための工夫や思考をしながらやっていることであって、何が悪いのか、という気持ちもあろう。
また、日本人力士が外国人力士の基本の欠落を突けないのは、当の日本人力士自体が相撲の基礎をしっかり身につけていないからではないか、と感じた場所でもあった。
柔道のことはよく知らないが、相撲より先行して国際化する中で、競技の質が変化することもあったのではないかと思う。
それも時代の流れか、とも考える。
しかし、やはり、今の世代の親方が中核でいる間は、外国人か日本人かを問わず、しっかりした相撲を教え、伝え、残していってもらいたいものだと思う。
私は、外国人力士の台頭を嘆く立場ではないし、外国人力士を差別するつもりもない。
しかし、自分の世代として古くから見てきた相撲が、変質していくことについて、さみしいと思うのは事実だ。
まだまだそれを伝え残せる親方たちがいる間に、持ちこたえてもらいたいと思うのだ。
相撲界はそういう方向に向かってくれるだろうか。